日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第48回日本家庭科教育学会大会
セッションID: p-5
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第48回大会 ポスター発表
保育園児の母親の養護性と中学・高校「家庭科」保育領域の学習経験との関連
*依田 多恵岡野 雅子
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抄録
問題と目的 近年、少子化の進行や家庭生活の変化などに伴い子育てについてもさまざまな変化が見られるようになった。子どもの健全な発達には周囲の環境がきわめて重要であるといえる。そこで、本研究では子どもにとって最も身近な人的環境である母親に焦点をあて、特に母親のもつ「養護性」に着目した。「養護性(nurturance)」とはFogel & Melson(1986)によれば「相手の正常で健全な発達の促進のために用いられる共感性と技術」と定義される。養護性は幼い子どもへの保護やいたわりおよび慈愛に満ちた行動を指すが、対象は幼い者に限らず一時的にでもその有用性を失っている存在(例:障害者や高齢者、傷ついた動物や萎れた花など)に対して、その発達を支え促す方向の機能を含み、育つことを目標とするところが特徴的である。
近年では親の子どもへの不適切なかかわりや児童虐待等が社会問題化しているが、今日、実際に親となり子どもを育てている母親の養護性はどのようであるのだろうか。それは、彼女たちが受けてきた中学・高校「家庭科」保育領域の学習とどのように関連しているのだろうか。このような視点のもとに、本研究では幼児をもつ母親の養護性と「家庭科」保育領域の学習経験の関連について探ることを試みた。
方法 方法は質問紙調査法である。調査対象者は、長野県の保育所(園)35ヶ所の年中組と年長組に在籍する幼児の母親である。質問内容は、属性、母親の養護性についての項目、中学・高校の「家庭科」保育領域の中で「印象に残った授業」等である。配票数1,597、回収数897(回収率56.2%)で、調査時期は2004年6月_から_7月であった。
結果と考察 (1)母親の養護性は、先行研究(小嶋1991、中西・粟津1996など)を参考に作成した57項目に対する回答について因子分析(主因子法、固有値1以上の値についてハ゛リマックス回転)を行い、5因子を抽出した。各因子負荷量0.40以上で2因子にまたがらない項目について検討し、第1因子「子どもに対する自信」、第2因子「親との関係」、第3因子「子どもへの興味」、第4因子「福祉への関心」、第5因子「夫の態度」と命名した。(2)中学・高校「家庭科」保育領域の中で「印象に残った授業」が「ある」の回答は16.3%であり、母親の年齢と関連が認められ若年層に多い(p<.01)が、子どもの性や人数、母親の就労状況との関連は認められない。その授業内容についての自由記述は「保育体験学習」が過半数を占め最多であった。(3)母親の養護性の各因子得点および総得点を算出し、平均点について中学・高校「家庭科」保育領域の「印象に残った授業」の有無について比較した結果、第1因子、第2因子、第3因子、第4因子および総得点において2群間に有意差が認められた(p<.05_から_p<.001)。したがって両者の関連は強く、中学・高校「家庭科」保育領域について「印象に残った授業」がある母親の方が養護性得点は高いことが明らかとなった。(4)本資料の母親にとって中学・高校での「家庭科」は15_から_20年前のことであり、回顧法による回答である。当時の高校『学習指導要領』では「母性の健康と生命の誕生」は必須であるが「印象に残った授業」には僅かしか挙がらず(回答者の1.4%)、「印象に残った授業」自体が16.3%にすぎない。なぜ保育領域の授業は印象に残らないのか。「印象に残った授業」は若年層の母親に多く「保育体験学習」が多かったことは近年「保育体験学習」が盛んになってきた反映であろうが、比較的高齢層の母親は経過年数が長いという要因があるとしても、「保育体験学習」をほとんど受けておらずより一層保育領域の学習が印象に残っていない現状である。子育て期の母親が知りたい情報はハウツーや子どもの発達の平均値であるという報告がある。しかし、それを「家庭科」保育領域の授業内容とすることは中学・高校生の発達段階に合致していないと思われる。「印象に残った授業」がある母親は養護性がより身に付いていることが明らかになったことから、「保育体験学習」のみならず学習者の適時性に合った授業内容をさらに検討する必要があるといえよう。
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© 2005 日本家庭科教育学会
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