日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 24
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第49回大会 口頭発表
高大連携による保育の授業研究(1)
―教育大学と公立高校(定時制)の連携―
*井上 えり子山内 拓司
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抄録

【目的】
 現在、教員養成学部では授業実践力および指導力の育成が強く求められている。この方策のひとつとして、教育現場との密接な連携による授業研究が有効であると考える。本研究では、京都教育大学の家庭科教育法の講義において、学生たちが現代の教育課題に対応した保育の授業をつくり、京都府立高校(定時制)で実践し、その有効性を検証することを目的としている。
 定時制高校と連携した理由は次の3点である。第1に、時間帯が重ならず、講義で授業研究を行い、それを高校で実践することができるからである。第2に、高校側の協力が得られた点である。定時制高校では教育実習の機会がほとんどなく、大学との研究交流の機会も少ないことから、本研究に対する高校側の期待も大きい。第3に、現代の教育課題である不登校問題に対応した家庭科の授業研究を目指したからである。定時制高校生は不登校経験者の割合が高く、その支援の一環として、コミュニケーション能力の育成を主眼とした保育の授業研究を目指した。
【方法】
『中等家庭科教育_III_』(3年後期、2005年10月~2006年1月、受講生19人)において、保育の授業を作成し、京都府立S高校定時制の『発達と保育』(2単位、3年選択、13人)で3回(2時間×3回、6時間)実践する。研究授業は発展学習と位置づけ、既習の内容から題材を選び、1回ごとに完結したものとする。
 受講生は、授業の目的およびS高校の概要・生徒の様子を理解し、次に3グループに分かれ、各1回分の指導案を作成する。指導案を発表・検討し模擬授業を行い、再検討後、研究授業を実践する。研究授業はビデオで撮影、授業検討会を行い、最後にレポートを課す。こうした授業研究の成果を学生および生徒の変容から検証する。
【結果】
 保育学習においてコミュニケーション能力を養成するためには、まず乳幼児の発達に関する理解が基本となる。乳幼児の心身の発達に対応した適切なコミュニケーションのあり方を考えるためであり、これは他者理解すなわち相手の立場に立って考える力の育成に繋がる。受講生たちは、講義で乳幼児の発達の基本的事項を学習し、それを踏まえて発達を保障する支援のあり方について、生徒とともに考える授業づくりを目標とした。
 次に、教育方法については、生徒と教師および生徒間のコミュニケーションを重視する方法を採った。歌や紙芝居、アクション、ロールプレイング、擬似体験、グループでの話し合い、発表などの活動を積極的に取り入れた。対象とする生徒は親しい友人間以外の人とのコミュニケーションを避ける傾向にあり、こうした活動を授業に取り入れることはS高校では実験的な試みである。また、図表やビデオなどの視聴覚教材、書き込み式のプリントを準備し、丁寧で分かりやすい授業を目指した。
 授業の詳細については第2報で報告するが、研究授業の成果として、1)受講生の授業研究に対する意欲の向上と、2)生徒の保育学習への意欲の向上が挙げられる。当初、受講生の発言や感想文からは研究授業に対する不安と消極的な思考がみられたが、指導案作成・教材づくり・模擬授業を経てグループメンバーの結束が強まり、目標に向かって協力する体制がつくられた。そして、授業実践により達成感が得られ、意欲の向上に繋がったと考えられる。受講生たちの努力を受けとめて「自分たちと同年代の人たちが頑張っている姿をみて頑張らなければならないと思った」という感想を寄せるなど、生徒たちが授業に真剣に取り組む様子が確認された。研究授業を終えたのち、子育て中の生徒から「授業の中で自分の家族を迎えて子育てを語る時間を持ちたい」という提案がなされ実施されるなど、研究授業により生徒の意欲は大幅に高まったといえる。
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© 2006 日本家庭科教育学会
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