抄録
【目的と方法】
第1報では高大連携による授業研究の全体像を述べた。第2報では、3つのグループが行った保育学習の実践について、報告する。
【結果】
第1グループの題材は「進化と乳幼児の発達」である。授業の前半は、人類の進化過程と胎児や乳幼児の発達過程に類似性があることをテーマとした紙芝居を作成上演した。後半は猿から人間に進化するにあたり重要な役割を果たした直立二足歩行について押さえ、歩行準備としての2種類のハイハイに注目し、その重要性について実演で確認、最後に乳幼児の運動能力の発達を保障する支援の方法を考えさせた。最初の授業であり導入に歌を取り入れ紙芝居やアクションによって生徒の興味関心を喚起するよう配慮した。
第2グループは離乳食を題材に教材開発を行った。まず、講義形式で乳幼児の摂食機能の発達に応じた離乳食の形状を押え、次に、生徒が2人1組(乳児役と保育者役)になり、互いに離乳食を食べさせあう活動を行った。離乳食は大根・馬鈴薯・牛乳・味噌を使った「牛乳味噌汁」であり、離乳初期・中期・後期の三種類を受講生が事前に用意した。生徒は各時期の乳幼児の舌や口角の動きに注意しながら、ロールプレイングを行うとともに、「声かけ」の重要性に気づき、食事場面における乳幼児と保育者のコミュニケーションの重要性を理解した。
第3グループは乳幼児の視覚機能の発達をテーマとした。まず、講義形式で乳幼児の視野の範囲が大人とは異なることを押さえ、次に幼児の視野を擬似体験できる「チャイルド・ビジョン」の作成と装着によって気づかせた。後半では、生徒を幾つかの小集団に編成し、幼児と大人が会話している写真を示した。生徒は写真から情報を読みとり、それを少集団ごとにKJ法によってまとめ発表する活動(「フォトランゲージ」)を行った。活動により、生徒は視線をあわせて会話することの重要性に気づき、乳幼児の視点からみたコミュニケーションの方法を考察した。
第1グループの授業では、初回であり学生と生徒の双方に緊張がみられた。生徒たちは、学生の発問に積極的に答えることはなかったが、全員が指示に従って体を動かすなど、授業に参加しようとする姿勢は確認された。第2グループでは、2回目であることと「食」をテーマにしていたことから、緊張感も和らぎ、生徒たちが楽しんで授業に参加する様子が確認された。普段関わりを持たない生徒同士がスムーズに活動を行うなど、生徒間のコミュニケーションにも進展がみられた。第3グループでは、学生と生徒の距離はさらに近づき、「フォトランゲージ」の活動では学生と生徒の積極的な意見交換が確認された。
このように、3つの研究授業はそれぞれ個別の題材であったが、全体として、導入(運動機能の発達)・展開(摂食機能の発達)・まとめ(視覚機能の発達)になっており、導入では個人の活動、展開では2人1組の活動、まとめでは小集団活動と回を経るにしたがって、生徒がより多くの人々とコミュニケーションをもつよう計画された。こうした計画は当初から予定されていたものではなく、第1グループの研究授業の検討により、次の課題(ロールプレイング)が設定され、第2グループが成功したことから、第3グループの小集団活動が計画された。
このように、受講生たちは、毎回、生徒の到達度を確認しながら、授業の課題設定を行うという生徒主体の授業計画と授業設計を学び、着実に実践力を高めたと思われる。