抄録
【I なぜジェンダーを授業でとりあげたのか】
1996年「男女共同参画プラン」が策定され男女平等を推進する教育・学習の充実がプランの基本的柱とされた。学習指導要領の家庭科では、男女共同参画社会へ対応することが求められている。それでは家庭科では男女共同参画社会の実現にむけてどのような授業ができるのだろうか。本研究は、家庭科におけるジェンダーに関する授業の目的と意味をあきらかにする。
【_II_ 授業分析の視点】
「子どもは誰が育てるか」「理想の男の子女の子・好きな男の子女の子」「家事労働」「男らしさ・女らしさ」の4つの授業に取り組んだ。本研究は、「男らしさ・女らしさ」の授業に関するものである。授業研究の過程、教師の気づきや思い、子どもの発言や出来事を語り、解釈することで家庭科におけるジェンダーの視点の必要性を述べる。
【_III_ 「男らしさ・女らしさ」の授業過程】
男だから、女のくせにと言われたことを女の子に関してはピンクの紙、男の子に関してはブルーの紙に書いて黒板にはっていくことから授業をはじめた。男は泣くなは「性格」、家の手伝いをしなさいは「家事労働」、もっと背を伸ばせは「体」等カードをグループ分けした。グループ分けの作業の中で、「女の子の方がいろいろ言われている。」「男は泣くなって言われるけど本当にそうかなあ。」と子どもたちは気づいていく。「きょうみんなの書いたこの力一ドにあるようなことをジェンダ一(社会的文化的性差)っていうんだよ」と黒板いっぱいにはられたカードをみながら伝えた。「男の子がブルーのカードって決めたけど、逆でもいいかな。」ジェンダーという言葉は、子どもたちは初めて聞く言葉である。生活の中のジェンダーの存在に気づくことがこの授業のひとつの目的である。
授業が終わって小さな薄い字で「男は寡黙であれ」と書いた紙をそっと教師に見せに来た生徒がいた。書いたけれど発表することはできなかったのである。でも、教師には見てもらいたかったのだ。授業での友だちのカードや発言が、教師と他の生徒のやりとりが、彼の生活の中にあるジェンダーが、カードをもって教師に見せにくるという行為になって現れたのである。教室の中で他の子どもたちや教師とジェンダーを学ぶことで、自分の中のジェンダーを揺さぶることが、この授業のもう一つの目的である。
【_IV_ 考察】
授業研究を進める中で教師自身が気づいたことがある。それは、家庭科のほかの授業もジェンダーの視点をもつことが必要であるということである。
教師が家庭科の授業のジェンダーに気づいたのと同じことが、子どもたちにも起きるのではないだろか。ジェンダーという言葉と意味を学ぶことで、生徒は自分の生活の場面でジェンダーの視点をもつことになるのではないだろうか。