日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 36
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第49回大会 口頭発表
家庭科におけるシティズンシップ教育
-教師の方略を中心に-
*望月 一枝
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抄録

【研究目的】
 本研究は家庭科におけるシティズンシップ教育の教師の方略を検討し、解釈し理論化していくことを目的にする。近年世界各国で福祉国家の構成員としてサービスを受ける権利だけでなく、市民社会の構成員としての責任と権利が対になった概念としてシティズンシップ教育が注目されている(小玉2006)が、授業実践に即して教師の方略を検討した研究は少ない。1999年改定の学習指導要領の「家庭」の目標「家庭や地域を創造する能力や態度」を人生で出会う問題を地域の制度や人々にアクセスする能力や態度と捉え、本研究では家庭科におけるシティズンシップ教育実践に即して、そこで生成されている事実から教師の方略と実践知を支える思想を検討していく。
【研究方法】
 シティズンシップ教育における教師の方略にかかわる文献調査を踏まえて、高校家庭科における家族学習をアクション・リサーチ法で調査する。具体的には筆者が行った17回(1530分)(1回90分の授業)をビデオ、フィールドノート、ボイスレコーダーで記録し、17回の授業のなかで「家庭や地域を創造する能力や態度」を育成しているシティズンシップ教育の特徴があると解釈される4回の授業(360分)を選び、すべての発話をトランスクリプト起こし、当該授業における教師の方略を解釈し分析する。
◆4回の授業のテーマは以下のような授業である。
・離婚における子どもの権利(生徒がテーマを選び発表するグループが調査し、その資料と教師の補助資料を基に討論した授業)
・家庭と地域をつなぐ・私が地域を変えたいわけ(地域の市民に授業に来てもらった授業)
・森発言を考える・子どもを生まない女性に福祉はいらないか(生徒が選び 全員がサブテーマを持って調査して臨み討論した授業)
・長崎12歳事件を考える(教師がテーマと資料を持ち込んで討論した授業)
◆教師の発話を13項目に分類し、授業における教師の発話を2人の評定者が解釈して項目ごとにカウントしていく。
【結果と考察】
 シティズンシップ教育は単に知識を学ぶのではなく、生徒が参加することによって学ぶという特徴があるため、教師が実践する場合いままでの授業とは異なる難しさと複雑な要素があった。
 4回の授業はそれぞれ異なるアプローチを持った授業であったが、共通していたのは、授業によく現れるという教師のIREは少なく、生徒の発話を繰り返していく再話や活動の指示やそこで交わされている談話をメタ知識によって意味づけていく発話が多く見られた。教師は生徒の参加意欲を高めながらグループワークやクラス討論全体を管理し促進していく方略をとっていることが示唆された。
 研究対象とした授業は筆者が行った授業であるため、今後は小学校、中学校、高校の家庭科の授業におけるシティズンシップ教育を対象に教師の方略を析出し、実践手法やスキルを支える実践知を掘り起こし解釈し分析し理論化していくことが課題である。

小玉重夫(2006)シティズンシップの観点から見たこれからの学校と教師の役割-異質な者同士が共存する社会で求められる政治的判断力。BERD No.3,pp.10-15.
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© 2006 日本家庭科教育学会
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