抄録
【目的】
本研究では,食事内容そのものよりも,家族と一緒の食事などの食事環境に重点を置き,子どもの頃の食事環境と大学生の食意識・食生活や心身の健康との関連を調査することにより、子どもの頃の食事環境の重要性を明らかにすることを目的とする。
【方法】
関東地区の大学生262名(男子77名,女子185名)を対象に,子どもの頃の食事環境,現在の食生活,現在の体の健康状,現在の心の状態【プラス面:社会的外向性,活動性,持久性】【マイナス面:攻撃性,非協調性,抑うつ性】の4側面について,想起法によるアンケート調査を実施した。調査実施時期は,2005年7月で,有効回答 99.2%であった。回答は,「1 全く当てはまらない」から「4 とても当てはまる」の4段階の選択肢から選択した回答を点数化し,統計解析ソフトSPSS11.5Jを用いて分析した。統計的な有意差の検定には,χ²検定を用いた。
【結果】
1)子どもの頃の食事環境については,厚生労働省の児童環境調査と比べ,よい結果だった。「会話をしながら食べた」「年中行事を祝った」「食後満足した」「我が家の味がある」「待ちどおしかった」「思い出の食卓がある」の各項目で,「(とても+少し)当てはまる」が7割以上,「一人での食事」は,「(あまり+全く)当てはまらない」が8割以上であった。「手伝いをした」は,5割程度であった。
2)現在の食生活については,子どもの頃と比べて悪化しており,「誰かと一緒の食事」は7割以上あるが,「朝食をとっている」「食べ過ぎない」「偏食しない」が5割程度,「よく噛む」「間食しない」「決まった時間に」が4割程度,「バランスを気にする」「外食をしない」「生産地を気にする」は3割程度となっている。
3)体の健康については,「食欲がある」は8割以上,「風邪を引きにくい」「乗り物酔いをしない」は7割程度,「夜よく眠れる」「排便が規則正しい」は6割程度であるが,「だるい」が8割、「疲れやすい」が7割、「目覚めが良くない」「イライラする」が6割程度である。
4)心の状態プラス面(社会的外向性,意欲・活動性,持久性)では,社会的外向性が「ある」73.7%,持久性が「ある」68.7%,意欲・活動性が「ある」51.5%であり,社会的外向性,持久性はあるが,意欲・活動性は,「ある」と「ない」がほぼ同数となった。言われたことはやるが,白分からやろうとする意欲や活動性は大きくないという最近の若者の状況があらわれている。
5)心の状態マイナス面(攻撃性,,非協調性,抑うつ性)では,攻撃性が「ある」70.6%,抑うつ性が「ある」69.1%,非協調
性が「ある」54.2%であった。
6)男女差がみられたのは,「子どもの頃の食事環境」(p=0.001),『現在の食生活」(p<0.001),「抑うつ性」(p<0.05)であった。子どもの頃の食事,現在の食事ともに,女子のほうが「良い」が多かった。
7)「子どもの頃の食事環境」との関連がみられたのは,「現在の食生活」(p<0.001),「社会的外向性」(p<0.05)であり,「体の健康」とは,有意差はみられなかったが傾向が見られた(p=0.054)。
8)「現在の食生活」との関連がみられたのは,「子どもの頃の食事環境」(p<0.001),「社会的外向性」(p<0.05)であり,「体の健康」とは,有意差はみられなかったが傾向が見られた(p=0.078)。
9)大学生のアンケート調査の結果から,子どもにとって「本当に豊かな食事」は,栄養価やバランス,食事のマナーといった目で見えるものだけではなく,家族と一緒の食事などの食事環境が重要であることの示唆を得た。