日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 9
会議情報

第49回大会 口頭発表
日本人学校の児童・生徒の家庭生活と家庭科観
-在留地域別にみた特色-
*池崎 喜美惠
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

<目的>
 外務省調査によると、平成16年には海外在留邦人数は61万人を超え、親に帯同する子どもは5万4千人に漸増している。
 これまでに十数校の日本人学校を参観し、海外の日常生活や家庭科学習の実態調査を実施した。その結果、在留国により児童・生徒の家庭生活や家庭科学習の現状に特色がみられるのではないかという仮説を設定した。
    本研究では、日本人学校が最も多いアジア圏の台北とヨーロッパ圏の英仏に設置されている日本人学校を取り上げて比較検討することを目的とした。
<方法>
 2000年7月に台北日本人学校を、2004年10~11月にロンドン日本人学校とパリ日本人学校の施設・設備を見学したり、家庭科や技術・家庭科の授業を参観した。また、家庭科担当教師から家庭科指導の現状や問題点についてヒアリングした。
 さらに、児童・生徒を対象に海外生活の実態や家庭科学習に関する意識調査を実施した。前者381名、後者169名の児童・生徒の回答を分析した。
 調査の概要は、対象者の属性、海外生活の態様、家庭科及び技術・家庭科学習の現状、家庭科観などについてである。
<結果および考察>
1. 親に帯同して海外生活を送ることに、台北日本人学校の児童は海外での生活習慣や言葉に不安(約51~60%)を抱いているものの、新しい生活への意欲を抱いている者が多かった。しかし、英仏の日本人学校の生徒は、海外での生活習慣や言葉、勉強に対する不安(約25~64%)を強く感じていた。
2. 在外中の家庭での手伝いを「いつもする」から「全くしない」の3件法で回答させた。台北日本人学校の児童の方が遂行率(1.4~2.2)が高かった。しかし、「買物」を除いた全ての仕事において、英仏の日本人学校の生徒の遂行率(1.5~2.6)の方が高かった。このことは、家庭内の仕事をする人を雇ったり、子どもだけの外出を禁止するなどの慣習の違いが子どもの生活に影響しているといえる。特に食生活に関する仕事や買物に関して、在留地域との相関が認められた。
3. 海外における日常生活を「大変満足」から「大変不満」の5件法で回答させた。台北日本人学校の児童は「衣生活」「食生活」「買物」「近所つきあい」の平均値(3.4~3.7)が高かった。一方、英仏の日本人学校の生徒は「衣生活」「住生活」「家族のつながり」「近所つきあい」の平均値(3.0~3.9)が高かった。
4. 台北日本人学校の生徒は被服や調理の実習を楽しいと回答し、指導者の属性や指導の重点の置き方及び在留国により家庭科に対する認識が異なっていた。このことは、在留国及び教師の指導観や力量との関連が影響しているといえる。
5. 設置国独自の家庭科カリキュラムを作成し、現地の小・中学校との交流を行うなど指導を工夫していた。台北日本人学校のように、特産物やその国独自の生活に鮮明な特徴がある場合、現地理解教育の一環として現地の衣食住生活を教材とした指導が行われ、家庭科が大きな役割を果たしていた。
著者関連情報
© 2006 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top