抄録
<目的>
高等学校家庭科の特色であるホームプロジェクト(以下HPとする)は、各自の生活の中から課題を見いだし、課題解決を目指して主体的に計画を立てて実践する問題解決的な学習活動である。HPを実践することによって、家庭科の学習で習得した知識と技術をより一層定着し、総合化することができ、問題解決能力と実践的態度を育てることができる。HPの実践が生徒の自信、誇りとなり、進路にも影響を与え、家庭生活の充実向上にもつながることは明らかにされている。しかし、高等学校におけるHPの趣旨に沿う実際の指導は、教員にとって負担が重く、計画の時間や指導の時間を十分に確保できていない現状がある。新学習指導要領では、HPの趣旨を「自己の家庭生活と関連付けて生活上の課題を設定し、解決方法を考え、計画を立てて実践することを通して生活を科学的に探究する方法や問題解決の能力を身に付けさせる。」と明記されており、HPの実践が引き続き求められている。新学習指導要領のもとでは、「家庭基礎」2単位の履修が最も多くなると予想され、限られた2単位の時間の中で工夫して実践していく必要がある。そこで、HPを2単位で実践する上での課題を明らかにすることを目的として、現行の「家庭基礎」の実践事例の分析を行い、結果を報告する。
<方法>
平成21年度に、県立A高等学校1年生7クラス計274名(男子148名 女子126名)を対象に「家庭基礎」において冬休みの課題としてHPを実践した。HPに関する学校での授業時間数は合計5時間とし、冬休み前の2時間を事前指導、冬休み後の3時間を事後指導とした。事前指導は、HPの意義を説明した後、実践例のビデオ視聴を行い、その後に生徒各自に題目と題目設定の理由、実施計画を考えさせた。事後指導は、クラスごとに発表会を行い、教員が全体のまとめを行った。提出課題について、題目、実施期間、内容等を検討した。
<結果>
HPの提出課題の題目を分類すると、最も多かったのが住生活領域(47.4%)、続いて家族領域(23.0%)、食生活領域(12.4%)、衣生活領域(8.8%)であった。さらに領域ごとの内容を見ると、住生活領域は、「自分の部屋の整理・整頓や清掃」(68.5%)が最も多く、次が「家全体の整理・整頓や清掃」(19.2%)であった。整理・整頓や清掃で全体の約85%を占めていたが、これは実施時期が冬休みであり、年末の各家庭の大掃除の時期とも重なるためであると考えられる。家族領域は、「家事労働」に関すること(58.7%)、自分や家族の「生活時間」に関すること(34.9%)の順に多く、母親の家事労働の負担を軽くするという内容が目立った。食生活領域は、自分や家族の「食事改善」に関すること(70.6%)が最も多く、次が自分やきょうだいの「苦手な食べ物の調理工夫」(17.6%)である。2学期の家庭科の授業において、自分の食生活を振り返る目的で食事バランスガイドについて扱ったこともあり、授業内容を生かしたHPが見られた。衣生活領域は、「服の収納の工夫」(45.8%)、不要になった服を用いた「リフォーム」(20.8%)、防寒対策が目的のマフラーやベスト等の「被服製作」(20.8%)、「ユニフォームの洗濯」(12.5%)の順に多かった。「服の収納の工夫」は、年末の部屋の大掃除を兼ねて、持っている服を調べて収納方法を考えるという内容が多かった。HPを家族の誰のために実践したかを分類すると、最も多かったのが「自分」のため(52.7%)、次に「家族」みんなのため(25.6%)、「母」のため(16.5%)である。以上の結果から明らかになったHP実践上の課題について整理し、報告する。