抄録
目的
2011年3月11日に発生した東日本大震災から2年が経過した。東日本大震災に関しては、被災者の支援が求められる中、震災に関わる検証や教訓の抽出が重要である。文部科学省では、防災教育を効果的に推進するための視点として、防災に関して各教科で行えることの整理と教科や特別活動等との横断的・総合的な関連を図ることをあげている。我々の関連する家庭科教育においては、住居領域に「家族の安全を考えた室内環境の整え方」、「安全で環境に配慮した住生活」等の内容が設定されており、防災教育の視点からも指導の充実が望まれる。
以上のような背景から、本研究では、防災の視点を取り入れた中学校技術・家庭科(家庭分野)住居領域の授業開発を行うことを目的としている。
方法
研究方法は、1)国民の防災に関する意識の実態の把握、2)学校教育における防災教育の実態の把握、3)防災の視点を取り入れた授業開発、4)開発した教材の検討、である。1)は、主に政府が行った世論調査を中心に、経年比較など、防災に関する調査報告の分析を行った。2)は、鹿児島市の学校を調査対象としアンケート調査を行った。3)は、授業開発に向けた防災教材の収集と分析、教員へのヒアリング調査、中学校技術・家庭科(家庭分野)学習指導要領および教科書の分析を行い、具体的な教材の開発と授業計画の作成を行った。4)は、専門家へのヒアリング調査を行い、開発した教材の有効性の検討を行った。
結果と考察
1)国民の防災に関する意識の実態の把握(2012年6月~9月)から、「防災意識に行動が直結していない」、「風化する防災意識」、「防災意識の地域格差」の3つの課題が浮き彫りとなった。
2)学校教育における防災教育の実態の把握(2012年5月~6月)から、「教科教育の中で防災教育を行っていない」学校は22校(全124校)みられ、理由として、「時間がとれない」、「適切な教材がない」等があげられた。防災教育を行うにあたっての課題としても同様な理由があげられた。
3)防災の視点を取り入れた授業開発(2012年8月~12月)から、現在、様々な防災教材が開発されているが、それらの教材は、「費用がかかる」、「具体的にどの教科で取り入れたら良いか明確でない」といった課題があげられた。また、教員へのヒアリング調査から、教育現場で効果的な防災教材としては、「費用がかからない」、「体験できる」、「生徒が試行錯誤、工夫できる」という視点があげられた。教科書分析では、住居領域の目次構成、防災に関するキーワード、図、写真の抽出を行った。具体的な開発教材は、8畳の間取りとベッド、机、椅子、棚などの家具の立体模型を1/10の縮尺で作成し、自由に配置できるものにした。開発した教材は、「出入り口をふさがない」、「寝ているところに家具が倒れたり物が落ちてきたりしない」といった安全に住まうための方法の検討や、家庭内における事故について考えを深めることができるものである。また、開発した教材を導入した指導計画案と学習指導案を作成した。
4)開発した教材の検討(2013年1月)から、鹿児島県教育庁指導主事から「教材の機能性」、「使いやすさ」等の一定の評価が得られた。
今後の課題は、教育現場で有効性の検討を行い、より現状に合ったものにしていくことが考えられる。