日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: 4-3
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2014例会:口頭発表
中学校家庭科の「地域の社会資源との協働」における課題
―教師への実態調査結果からー
*加賀 恵子
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抄録
【目的】<br>持続可能な社会の構築は世界の喫緊の課題であり、世界各国で多様な主体によるESD(Education for Sustainable Development)の取組が行われている。現行の中学校家庭科の学習指導要領にも、持続可能な社会の構築の視点が盛り込まれ、内容を取り扱う際に配慮すべき事項として「家庭や地域社会との連携」が示されている。<br>そこで本研究では、中学校家庭科の教育現場において、どのような能力や態度の育成が目指されているのか、地域の社会資源を活用した授業がどの程度実践されているのか、また、地域社会との連携を進める上で何に困難を感じているのかについて明らかにすることを目的とする。<br>【方法】<br>静岡県浜松市教育研究会中学校家庭科研究部の第2回研修会に参加した家庭科教員28名を対象に、2014年8月5日、質問紙調査(一斉配布・回収)を実施した。回収数は26、有効回収率93%であった。<br>【結果】<br>1 回答者の属性<br>回答者は、全員女性であった。年齢は、20歳代4名、30歳代1名、40歳代9名、50歳代12名であった。回答者のうち、常勤教諭が22名、非常勤講師が4名であった。<br>2 授業づくりで重視している「生徒に育成したい能力や態度」<br> 授業づくりにおいて「とても重視している」と回答した者の割合が多かったのは、「生活の自立に必要な知識と技能」が84%、「地域や・社会・家庭での活動に進んで参加する態度」「ひと・もの・ことなどのつながりを尊重する態度」が48%であった。逆にESDの視点に立った学習指導で重視する能力や態度とされる「批判的に考える力」「未来を予測して計画する力」はいずれも4%と、あまり重視されていないことがわかった。<br>3 授業実践経験とその内容<br>地域の社会資源を活用した授業実践の経験をもつ教員は、20名であった。<br>内容別にみると、A「家族・家庭と子どもの成長」で15名、B食生活と自立で15名、C「衣生活・住生活と自立」の「衣生活と自立」で8名、D「身近な消費生活と環境」で5名が実施したことがあると回答していた。授業実践の型は、「パッケージ型」が11事例、「ボランティア活用型」が27事例、「協働型」が10事例であった。<br>4 授業実践上の課題<br>「家庭科の授業時間数が足りない」に対して「そう思う」と回答した者は81%で「ややそう思う」も含めると100%の教員が課題と感じていた。続いて、「そう思う」「ややそう思う」としてあげられた課題は「地域社会の組織と学校を結ぶ人材が不足している」「学校の都合(授業時間)と人材や施設の都合が合わない」が92%、「人材や施設等の確保のための情報が不足している」「打ち合わせのための時間の確保が難しい」「予算の確保が難しい(謝金や交通費)」が88%と、いずれも高い割合で課題と感じていることがわかった。逆に「教育的効果の期待できる人材や施設が不足している」「授業構想の仕方がわからない」を課題にあげた者は、それぞれ4%、15%であった。<br>【考察】<br>中学校家庭科の現場の教師は、ESD的視点からの能力や態度の育成をあまり意識していないものの、地域の社会資源を活用して授業実践を行った経験をもつ者が多く、生徒たちに実社会や実生活とのつながりを実感しつつ学べる機会を与えようとしていることがわかった。しかし、授業の実施においては、教育的効果が期待できる人材や施設などの存在を感じつつも、授業時間数の不足、授業の目標に合致する地域の社会資源との接続の仕方、打ち合わせのための時間確保などの困難があり、教師の負担が大きいことが伺えた。これを克服するためには、ESD的視点からの能力育成をめざした授業実践のための教員研修の機会の提供や、学校と地域の社会資源を結ぶとともに情報を提供してくれる人材の確保、予算的な措置などの必要性が示唆された。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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