日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: P08
会議情報

第57回大会:ポスター発表
小学校中学年における家庭科教育の検討
包丁使用体験に着目して
山岸 朋子*浜島 京子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.目的 
  小学校家庭科の最終目標として、「家族の一員として生活をよりよくしようとする実践的な態度を育てる」ことが重視されている。しかし、子どもたちの家庭生活の現状において、家族の一員としての関わり方や、自立・自律的な生活などの点に種々の問題が見いだされており、家庭生活に関する教育すなわち家庭科が現行の小学5年生開始では遅すぎるという感がある。そこで、できるだけ早い段階からの家庭生活学習が必要と考えるが、小学4年生以下の家庭科教育の可能性及び学習内容を検討することを目的として本研究を実施する。
 本報告では、小学3・4年生を対象に実施した調理実習における包丁の使用体験による児童の意識・実態を中心に述べる。
2.方法
(1)調査対象・期間
   ○調査対象者は、福島市内の小学校に通う3・4年生16名とその保護者
      (回ごとに出席者数は異なる)
  ○調査期間は、2013年12月~2014年3月
(2)調査方法 
   福島市のこどもの夢を育む施設の子どもキッチンにて、4回の調理実習(下記参照)を実施し、各回ごとに実施後の感想や家庭での実践状況等について児童及び保護者に質問紙調査を行った。
  ・第1回目(12/7)カボチャクッキー作り、・第2回目(1/25)フルーツポンチ作り、・第3回目(2/23)アップルパイとポテトサラダ作り、・第4回目(3/2)おにぎりとみそ汁作り *包丁使用は第2回目以降
   なお、児童を4班に分け、調理実習の指導は山岸朋子が行い、大学生他(3~5名)が児童の支援にあたった。
3.結果および考察
(1)フルーツポンチ作りにおけるりんごを丸ごと皮むきした感想  
   第2回目のフルーツポンチ作りにおいて、りんごを一人1個与え、皮むきをさせた。この体験は全員が初めてであった。なお、使用した包丁は、果物ナイフ(2種)及び子ども用の包丁(1種)であるが、指導者の方でランダムに配付した。
   ◆りんご1個の皮むきをした感想は、○難しかったに関連する感想-5人、○怖かったという言葉や恐怖心を述べた感想-4人、○上手にむけたという達成感が感じられる感想-4人、○楽しかったという満足感が感じられる感想-4人、○もっとうまくなりたいというやる気が感じられる感想-1人、◆フルーツポンチ作りを終えての感想では、上記において、包丁使いの難しさや恐怖心を示した児童が多かったが、実施後は全員が「とても楽しかった」と回答した。りんご1個の皮むき体験は達成感が大きかったと推測する。
(2)2度目のりんごの皮むき等包丁使用の感想  
   第3回目には、りんごの皮むきを再度行わせることとしたが、今回は一人8等分にしたりんごの皮むきと、それを小さく切る作業とした。包丁は6種類から児童自身に選ばせ、その理由も聞いた。
   その結果、◆包丁を選んだ理由として、○使いやすそう・切りやすそう・持ちやすそう-7人、○切れやすそう-3人、○背が低いからちょうどいい-1人、○前回の包丁は怖くて太い方だと指が切れそうだったから-1人、◆実施後の恐怖心の変化は、〔-1〕-2人、〔-2〕-3人、〔-3〕-1人、〔-4〕-4人、◆実施後の自信は、〔+1〕-2人、〔+2〕-3人、〔+3〕-2人、〔+4〕-3人と、2回の包丁使用体験で恐怖心が減少し、自信が高まっていた。
(3)4回の調理実習を終えての感想
  ◆家の手伝いをしようと思う気持ちの変化は、〔+1〕-2人、〔+2〕-3人、〔+3〕-3人、〔+4〕-3人と全員がプラス方向に高まっていた。また、◆親が病気の時には、自分ができることを進んで行いたいという具体的な記述が多くみられた。 

著者関連情報
© 2014 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top