抄録
1.研究目的
高等学校家庭科では平成15年に登場した2単位の家庭基礎に移行している学校が多く見られること、中学校家庭科では住生活領域が家庭科の中でも占める時数が比較的少ないという現状から、短い時数の中で学習効果を高めるという点で、中高家庭科住生活領域の教材・指導の工夫の更なる必要性が求められている。工夫の手法について、主に住生活領域の授業実践や教材開発によるものがあるが、住生活領域の授業開発に関する既往研究を概観すると、住生活領域内で完結するものが多くを占めており、他領域との繋がりを意識したものは少ない。そこで、本研究では領域間を関連付けたクロスカリキュラムの概念に着目し、教科を横断した住生活学習の取り組みを推進する『住教育ガイドライン』(国土交通省協力)における住生活学習の構成を参考にし、領域横断的な住生活領域の授業提案に結び付けていくこととする。その前段階として、本来的な住居学の内容把握と類型化を行った上で、近年の家庭科住生活領域の学習内容と傾向を明らかとすることを目的とする。
2.研究方法
類型化にあたっては、家庭科住生活領域のベースとなる住居学の専門領域について『新版家政学事典』(朝倉書店2004)および『住まいの事典』(朝倉書店2004)における項目を参考にし、『住教育ガイドライン』における4つの住生活学習の構成(大分類4項目)を基軸に類型化にあたった。既往文献については家庭科教育に関する定期刊行物である「家庭科教育」(家政教育社、1990年~2005年7月発行分)及び「月刊家庭科研究」(家庭科教育研究者連盟、1990年~2013年発行分)を対象とし、住まい・住環境に関わる論文・実践報告・記事を抽出し、類型ごとに分け分析を行った。
3.結果・考察
【類型化】 大分類1)「人と住まい」へ含有される中分類の専門領域は「住居史」「住生活(住文化)」「住生活(住様式)」「住居計画」「住居の安全」「住居の構造」「住居福祉」、同様に2)「住まいと空間の構成」へは「住居計画」「住居の安全」「住居の構造」「インテリアテザイン」、3)「住まいと社会」へは「ランドスケープ(景観)」「コミュニティ」「住居管理」「住宅事情・住居政策」「住居福祉」、4)「住まいと環境」へは「住居福祉」「室内環境」「環境保全・エコロジー」「住居設備」である(中分類の一部重複あり)。更に小分類は42項目に分類することができた。
【内容と傾向】 大分類4項目それぞれの割合の経年変化を3年ごとに見ていくと、1990年代前半から後半にかけて「住まいと環境」領域を扱っている内容が1.5倍近く増加しているが、2000年代に入ると元の水準に戻っている。増加については当時の環境保全への意識が影響していると見られる。その後の2000年代で最も高い割合を示したのが「人と住まい」領域であり、およそ4割程度を占めるようになっている。この領域は主に日常生活空間の機能について取り上げられていることが多く、1990年代からも全体の3割以上を占め続けていた。長期にわたり注目され続けているテーマであることが示唆される。中分類では地域性や共同性を扱った「コミュニティ」に該当する内容が1990年代末から散見しはじめ、その後も続いていることが明らかとなった。