抄録
エネルギー問題の重大さは,学校教育の学習内容にも、変化をもたらしている。エネルギー概念やエネルギー資源については、理科や社会科で従前より扱われるようになってきた。家庭科においても、その一端を担う「身近な消費生活や環境」が小中学校で一貫した柱として立てられ、エネルギー消費の観点からも学習の必要が出てきている。このように教科横断的な課題であるエネルギー環境教育に着目し、著者らは身近な生活の中で低学年の子どもたちにも、これらの問題の所在について気づきを促す教材を開発し、小学校の家庭科や総合的な学習の時間において授業実践を重ねてきた。1)~6)
最近注目されているこれらエネルギー環境教育は、新しい学習内容としてとらえられがちであるが、大きく扱われてはこなかったものの家庭科においても重要な生活資源教育として位置づいていた。そこで、今一度、家庭科におけるエネルギー環境教育の位置づけを明確にするために、生活環境の変化と合わせてとらえ直す必要があると考えた。
戦後の小中学校の家庭科における学習内容において、エネルギー環境教育がどのように扱われてきたのか、学習指導要領および教科書を分析対象として、社会や生活環境の変化とともにその変容を明らかにすることを試みた。
その結果、終戦後に見られた家庭の設備や器具の利用、労力の効率化や合理化は、高度経済成長とともに明るく楽しい家庭生活の実現や維持に変わっていった。女子向きの中学校家庭科においては、家庭機械・工作に加え家庭電気機器の学習が登場したものの、昭和52年改訂の技術・家庭相互乗り入れにより、家庭分野では住居で水・熱源の有効利用が見られるにすぎなくなった。しかし、実社会の消費生活の拡大や生活環境の悪化から、平成元年改訂では、ごみや生活排水、省資源や省エネルギーを考えた生活の工夫が扱われることとなった。現在は、環境に配慮した消費生活の必要性と循環型社会の実現に向けた消費者の役割が強調されている。
このように、生活をめぐる資源や環境の変化にあわせて、家庭科におけるエネルギー環境教育の取り上げ方は変化してきた。今後は、多様な生き方やライフスタイルが志向されていく中で、消費者一人ひとりの社会に対する責任はますます大きくなり、多様なエネルギー資源の選択を含め重要な学習内容なっていくと思われる。
1)榊原典子他、eカード開発プロジェクト「eカード」(2009)
2)平野江美、他「エネルギー環境教育の視点から見たライフスタイルを見直
すカード教材の開発と小学校での検証授業」エネルギー環境教育研究Vol.3
No.2(2009)
3)平野江美、他「エネルギー環境教育の視点から見た教科学習をねらいとし
たストーリー性のある教材の開発」日本エネルギー環境教育学会第5回全国
大会論文集(2010)
4)榊原典子他、eカード開発プロジェクト「eネコといっしょにくらべよう!昔と
今」(2011)
5)岡本洋子、他「ライフスタイルの変化に着目した環境教育絵本の開発」日本
環境教育学会第22回大会研究要旨集(2011)
6)平野江美、他「ライフスタイルの変化に着目した環境教育絵本の実践」日本
エネルギー環境教育学会第6回全国大会論文集(2011)