抄録
【研究の目的】近年の社会の急激な変化に伴い、我々の消費・環境行動が大きく変化し、地球的規模の環境問題が多発してきた。持続可能な社会を構築することがより一層求められている。従って、家庭科においても主体的に行動できる消費者を育成する必要があり、消費のあり方や資源、環境に配慮したライフスタイルを確立するような指導を充実する必要がある。
そこで、まず小学校家庭科教員が、「身近な消費生活と環境」について、どのように指導しているのかの実態とともに、持続可能な開発のための教育を実践していくための課題を明らかにすることを目的とした。
【研究方法】島根県内の小学校の家庭科主任229人を対象にして、質問紙法によるアンケート調査を実施した。有効回収率は、52.4%で、家庭科主任120人を分析の対象とした。実施時期は、平成24年10月~11月であった。調査内容は、消費と環境に関する指導実態と課題であった。
【結果】
(1)家庭科全体の内容の中で、「消費と環境」については、「家族や近隣の人々とのかかわり」に次いで指導しにくいという回答が多かった。消費生活と環境の学習内容を「物や金銭の大切さ」、「物や金銭の計画的な使い方」、「物の選び方」、「適切な物の購入の仕方」、「自分の生活と環境とのかかわり」、「物の使い方の工夫」の6つに分けて、それぞれについて指導がしやすいか否かと指導しにくい理由を尋ねた。金銭や物に対する捉え方や地域、家庭での物の使い方については、それぞれの家庭によって多様な価値観をもっているため、家庭環境や個人差が大きいことが、消費生活と環境の領域の指導しにくさにつながっていると明らかとなった。さらに、どの項目においても、「参考になる教材等が少ない」という回答が約30%程度あった。
(2)指導歴により、消費生活と環境の内容の指導のしやすさに大きな差は認められなかった。このことから、指導年数を重ねても指導のしやすさ、指導のしにくさは変わらず、今後消費生活と環境の領域の教材が充実することで、授業が活発になることが期待される。
(3)消費生活と環境の領域の指導方法をみると、いずれの学習内容においても、教科書だけを使った指導方法が最も多いことが明らかとなった。また、「物の選び方」や「自分の生活と環境のかかわり」の学習内容では調べ学習、「適切な物の購入の仕方」の学習内容では買い物の実習、「物の使い方の工夫」の学習内容では実習が多く取り入れられていた。これらのことから、教科書だけでなく、様々な手法を用いた学習活動を行うことができるといえる。
【考察】消費生活と環境についての指導の困難さには、家庭環境や個人差が大きいこと、実験・実習など体験的な学習を取り入れにくいこと、参考になる教材が少ないことが主な理由として挙げられる。
一方で、消費生活と環境の領域を指導する際には、他の領域や学校行事、実生活との関連を図りながら、工夫している実態も伺えた。各学校で年間指導計画を作成する際に、家庭環境や個人差などの課題も配慮し計画を立て、どのような領域や行事、実生活と関連させていけばよいかを明らかにすることで、指導の充実につながるのではないかと考える。このような関連を図った教材開発を進めることで、よりよい授業実践が多くの学校で行われることが期待できる。
実際の学校現場は多忙を極めており、事前の準備に多くの時間をさくことは難しい。新たな時間を生み出すのではなく、今行われている教育活動を消費生活と環境の視点で整理することで、効率的に取り組みやすい授業展開ができるのではないかと考える。
小学校家庭科では、食生活などの領域に比べ、消費生活領域の教材開発はあまり報告されていない。今後、効果的な指導ができる教材や指導の方法の提案が求められる。