日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: A2-1
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第57回大会:口頭発表
「習得、活用、探究」を意図的・効果的に組み入れた小学校家庭科内容Dの授業実践
*長曽 亜希子
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抄録
【目的】小学校家庭科の現代的意義は、児童の家庭生活が様々な要因によって多様化する中で、生涯学習社会における生きる力の基盤を養うことにある。小学校で身に付けるべき共通な生活者としての能力や態度を育成する必要性は大きい。そこで本研究では、小学校での学びである基礎・基本をより効果的にするために、家庭科の学習方法に「習得、活用、探究」を適用、対象を小学校学習指導要領の内容D「身近な消費生活と環境」に絞り、他の3つの内容(A~C)と関連させた学習方法の確立を目的に行った。「消費」を、家庭生活を支える家族、衣食住を貫く視点としてとらえ、児童が将来に向け消費を通じて主体的に家庭生活を営める基礎的能力の育成をめざし、次の仮説を立て授業実践を行い効果を検証した。〈研究仮説〉「習得、活用、探究の学習方法を題材や指導計画の中に組み入れることによる構造化された学習パターンを用いた学習活動は、児童の生活に対する思いや願い、価値意識を引き出し、その過程で基礎的・基本的な知識や技能の実感を伴った効果的な習得を実現できる。」 【方法】授業実践に先立ち基礎的考察として、家族、家庭生活の変化の要因を「子どもと消費」という視点からたどり、これと学習指導要領、教科書の変遷を照らし合わせた。また、埼玉県公立小学校1~6年生までの187名に金銭にかかわる意識調査を行い、あわせて埼玉県K市内公立小学校で家庭科を教える教員23名に内容Dに関する意識調査を行った。これにより「個人差や価値観に応じて学習する工夫の必要性」や「社会や格差に左右されない核となる思考の必要性」を反映した授業づくりという課題がとらえられた。これを解決する1つの方法として児童の学習過程を「習得・活用・探究」の循環として位置付けることで、確かな学力を身につけることが可能になると考え、定義した。「習得」は児童一人一人の生活にある無意識の行動を意識化し、各自の価値を獲得するということ。獲得の手立てとして言語活動、学習ツールの利用が有効であると考えた。習得した知識・技能を自分の生活の場面に照らし合わせ、適切な場面・方法で利用して生活に生かしていくことが「活用」となり、さらに思考力を高めるための効果的な工夫を行えば、習得した客観的知識・技能を活用して自分自身の生き方を改善していくこと=「探究」へと発展する。定義した「習得・活用・探究」を意図的、効果的に組み入れた授業づくりの手立てを複数立て、授業実践を行った。 【結果と考察】埼玉県公立小学校5年生34名を対象に「じょうずに使おう ものやお金」の題材において、6時間の授業実践を行い2つの方法を用いて検証授業を分析した。①授業づくりについての手立てによって、言語活動を通して児童が無意識の行動を意識化し、各自の価値を獲得していたかを児童の具体的な姿や授業記録から分析した。②アンケート調査、児童によるワークシートの記述内容から児童の生活に対する思いや願い、価値意識が引き出されたか分析した。結果、無意識の行動を意識化する過程に、思考を明らかにするツールの活用と、主観を客観に変化させるための言語活動という学習活動が大きな役割を果たし、児童は新たな概念を獲得することができたことがわかった。また、その概念を日常生活に生かしているか、冬季休業を経た児童のアンケート調査から分析した結果、学習内容を実行した児童が多い項目がほとんどであり、自由記述からは生活が少しずつ改善されていることが窺えた。児童は5年生の段階であり、「自己の生き方の改善」の兆しの一歩は、今後さらに深化させることができる。この研究をもとに児童と共に考え、一つ一つの成果を認め合い、励まし、くり返しにより、日常生活の中で「問い」を立てさせたい。それによって、さらに広い視点で「ひと・もの・こと・時間・金銭」が関連しあってこその生活であるということを理解し、さらなる探究の視点が生まれ、家庭科によって「自己の生き方の改善」ができると考えられる。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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