日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: 3-1
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2014例会:口頭発表
授業記録の読解方略を基にした家庭科と他教科の学習過程の比較・検討
-「家庭科」と「理科」の課題解決への姿の違い-
*佐々木 貴子
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抄録
〔研究目的〕  昨年度、本学を卒業した学生の多くは、主免許状の他に複数教科の副免許状を取得していた。学生は主とする教科の内容科目や教科教育法を学んだ上で、教育実習期間に授業実践を重ねて主免許状を取得していくが、副免許状の教科については教育現場での授業実践は省かれる。「家庭科」の副免許状を取得するために教育法を学んでいる学生たちから、「理科」や「社会科」と「家庭科」の授業のしかたは違うという声を聞くが、何が違うか説明することはできない。そこで、授業記録の読解方略を基に、各教科の学習過程を比較・検討することを通して、教科の特徴を明らかにすることができるかを検討した。その一例として、「家庭科」と「理科」の授業における課題解決の姿の違いが明らかになったので報告する。
〔方 法〕   2012年後期の「家庭科教育学特論Ⅲ」受講生(院1年生)に、「家庭科」と「理科」の授業を観察するとともに、それぞれの授業をビデオに録画させ、授業記録を作成させた。その後、授業記録の読解方略として「授業構造図」の作成と分析結果を基に、学習過程の比較・検討を行わせた。本稿の「家庭科」の授業は、2012年10月25日にH大学附属S中学校2年生を対象にH教諭が行ったものであり、題材は「1食分の食事の概量から見える今後の食生活の課題」である。なお、この授業は平成24年度  第64回北海道地区技術・家庭科教育研究大会 札幌大会で実施されたものである。また、「理科」は、2012年11月27日にH大学附属S中学校2年生を対象にI教諭が行ったものであり、題材は「身近な静電気による現象」である。
 〔結果と考察〕  受講生は、「家庭科」と「理科」の授業記録から「授業構造図」を作成・分析した結果を基に、以下のような流れを導き出した。「家庭科」は、T2:前回の振り返り→T4:本時の作業内容の説明→T21:次の作業指示→T36~40:作業の理由説明→T51~C142:交流内容の発表→T73:生徒(の考えと実際のギャップ)に気付かせる→T74:本時の学習課題→T77~C160 :発表=課題解決の姿①→T88:課題解決の姿②→T89~166:発表・交流→T92:次回の授業内容の確認「バランス」という言葉の指摘であった。「理科」は、T3~T11:前回の振り返り→T13~C23:前回整理できていなかった点の確認・本時の学習課題→T71・73:課題解決の方向性とその実験方法→T82・83:具体的な実験方法→T96~C160:実験結果の確認→T111:実験結果が課題解決には不十分であると伝える→T124:実験の時間を追加→T140 ・150:実験方法の交流→T158:結果が得られたかを確認→T160~C242:課題解決の姿→T163 ~200:演示実験→T200:次回の授業内容の確認であった。このことから、理科は時間内に一つの規則性を生徒に見つけさせるために、学習課題が授業の最初に提示されている。また、実験の後に、必ず結果の確認を行い、目標に達していない場合は授業者が補足するか、またはもう一度実験をさせて、求める(一つ)の結論に到達するように展開されている。
   一方、家庭科は、課題解決の結果はあくまでも共有にとどまり、求められる結論は各自に任されている。また、課題解決の結果を共有した上で、さらに自己の課題の解決を深めさせている点は、理科と異なっている。 
    つまり、理科の授業は一つの法則を様々な方法で導き出していることが「課題解決」の姿であるのに対し、家庭科は自己の価値観を再発見し、見直し・深める(応用していく)ことが「課題解決」の姿であると考えられた。 以上のような受講生の考察から、授業記録から「授業構造図」を作成・分析することにより、授業の比較・検討が容易になったと考えられる。今回は、一例のみを紹介したが、他の学生にも同様の結果が得られた。 付記:本研究は、科学研究費助成事業(課題番号 23531148)を受けて実施した。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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