理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-08
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ポスター発表
ケースメソッド教育を用いた専門職連携・恊働(IPW)を目的とする卒後研修の実施報告
木村 圭佑篠田 道子宇佐美 千鶴櫻井 宏明金田 嘉清松本 隆史
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抄録
【はじめに、目的】近年,医療保健福祉領域において専門職連携・恊働(以下IPW)が求められているが,リハビリ専門職の養成課程において専門職連携教育(以下IPE)を実施できている例は現在国内において少数である.そのため,多くは各職場において指導者の臨床経験に基づく教育の実施や,他の専門職との連携を通して各自が実践的に学んでいる.そこで,IPWの技術を習得するための教育方法の1つであるケースメソッド教育を用いた卒後研修の実施から,リハビリ専門職におけるIPWの課題を検討する.【方法】ケースメソッド教育はハーバード大学ロースクールでの実践を発端とし,1930年代にハーバード大学ビジネススクールにて現在の形となり,日本では1962年から慶応義塾大学ビジネススクールで用いられるようになった教育手法である.現在ではビジネス領域だけではなく教職員養成や保健医療福祉領域にまで用いられている.高木ら(2006)によるとケースメソッドは「参加者個々人が訓練主題の埋め込まれたケース教材を用い,ディスカッションを通して,ディスカッションリーダーが学びのゴールへと誘導し,自分自身と参加者とディスカッションリーダーの恊働的行為で到達可能にする授業方法」であると定義している.平成24年2月に有志で募った異なる職場で働く1~5年目以内の理学療法士20名,作業療法士1名(全てケースメソッド教育未経験者)に対し,日本福祉大学ケースメソッド研究会に登録されている退院時カンファレンス場面のIPWを題材としたケース教材を用い卒後研修を実施した.参加者にはケース教材の事前学習を促し,ケースメソッド開始前に20分間ケースメソッドに関する講義を行った.筆者がディスカッションリーダーとなり75分の討議,10分の振り返り後,篠田ら(2010)が開発したカンファレンス自己評価表に記入してもらった.カンファレンス自己評価表は主に「参加後の満足感」「カンファレンスの準備」「ディスカッションに関するもの(参加者としての気づき,発言の仕方・場づくりへの貢献等)」の全12項目で構成され,各設問に対し5段階評価で回答してもらった.5段階評価のうち,「5:そう思う」「4:ややそう思う」を『肯定的評価』,「3:ふつう」を『中間的評価』,「2:あまりそう思わない」「1:そう思わない」を『否定的評価』の3段階に分けて集計した.また,研修に対する意見も自由アンケート形式で記入してもらった.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,日本福祉大学「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会が作成したチェックシートに基づき実施した.【結果】カンファレンス自己評価表は全員から回収した.経験年数は1~3年目が18名,4年目以上が3名であった.『肯定的評価』が多かった項目は,「積極的な参加」「事前準備」「情報の交換・共有」「新たな気づきや見解」「満足感」であった.『否定的評価』が多かった項目は「疑問への質問」「参加者の立場から討議の流れをリード」「他者の発言の引用・改良」「多様な対応策の提案」であった.参加者のうち3年目以内を対象とした場合では,『肯定的・中間的評価』が「積極的な参加」で同数,『中間的・否定的評価』が「主張(結論)+理由(根拠)のパターンでの発言」で同数以外は,全体と同様の結果であった.自由アンケートでは,研修会を通してIPWに対する重要性を確認できた等の肯定的な意見があった一方で,卒後5年目以内のリハビリ専門職におけるIPWへの認識の低さも伺えた.【考察】今回『否定的評価』が多かった項目から,次の3点がリハビリ専門職におけるIPWの課題と考えられた.第1にディスカッションを深めること,第2にディスカッションを行いやすい雰囲気をつくること,第3にディスカッションから意見を上手にまとめ結論・対応策を導きだすことである.そのためIPEとして特に根拠を提示した発言と,他者の意見を引き出して重ね,改良していく点を重要視する教育課題の設定が必要である.一方,対象者全員がケースメソッド教育は初体験であったことを考慮すると,質問や発言の仕方,雰囲気づくりへの貢献に対して手探り状態であることが伺え,自己の学びを完結することは可能だが,参加者同士で補完や連携し合う余裕がなかったとも予想される.今後もケースメソッド教育を通し,参加者同士が学びの共同体としてディスカッションを中心に良質な経験をすることで,リハビリ専門職におけるIPWの課題を解決できるようさらに検討を続けていく.【理学療法学研究としての意義】いわゆる急性疾患を中心とした医療モデルから慢性疾患を中心とした社会・生活モデルへの健康転換により,医療保健福祉領域におけるIPWが強調され,さらにマネジメント教育や患者の健康行動への教育とその目的は拡大しつつある.そのため,リハビリ専門職におけるIPW・IPEに関する取り組みは急務であり,本研究もその一助になりうると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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