日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: 3-4
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2016例会:口頭発表
高等学校家庭科における消費者市民教育
*大本 久美子
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抄録



【問題の所在と研究目的】

 「消費者教育の推進に関する法律」において、持続可能な社会の発展に積極的に関与できる構成員を育成すること、つまり健全な消費者市民社会の構成員としての自覚や能力の育成を意識した消費者教育を学校、家庭、地域社会、職域など様々な場面で推進することが明記された。

その背景には、消費者トラブルの複雑化や多様化、深刻なエネルギー・資源・地球環境問題などがあり、社会の在り方に関わる消費者市民としての資質や能力の育成が求められている。

このような環境変化や社会的要請に伴い、消費者市民を育成する消費者教育の充実は喫緊の課題である。昨年の例会では、大学生がこのような消費者教育の学習機会をどのように得ているのか、学校と地域社会の場面に限定して、学習方法や内容を整理し、どのような力が身についたのかを検討した。

そこで本報告では、高校生の消費者教育の実態を把握し、それらを踏まえた上で、高等学校家庭科における、消費者市民社会の構成員としての自覚や能力を育む消費者教育の学習内容や方法、育成したい力を検討したい。

 

【研究方法】

高等学校家庭科教員に平成27年度・28年度の勤務校の担当科目の「消費と環境」「消費者教育」に関する学習の実施状況を尋ねた。次に消費者庁の体系イメージマップの項目と学習内容を比較検討した。教科書の記述内容や現場での学習内容をふまえ、消費者市民社会の構成員としての自覚や能力を育む消費者教育の学習内容や方法、育成したい力を提案した。

1)調査方法:調査は平成28年7月26日、京都府高等学校家庭科研究会夏季研修会講演会『家庭科でためになる消費者教育の最新事情』の参加者に質問紙調査を実施した。講演会後調査に協力をいただいた68名(女性66名男性2名)の回答を基に分析した。

2)調査内容:①教員自身の消費者教育の学習機会〔選択式〕、②家庭科以外での勤務校の消費者教育の事例、③「消費と環境」「消費者教育」の内容を教えることについての重要度、優先順位、④「消費と環境」「消費者教育」を教える際に配慮していること、⑤実施時間数、⑥学習内容の具体例、⑦評価方法などを自由記述で回答。

 

【結果と今後の課題】

1)  家庭科以外の消費者教育の学習事例を見ると、スマホなどの「情報とメディア」に関する領域に関連する内容とクレジットカードや人権学習、法教育等「生活の管理と契約」に関連する内容が主であった。社会科、総合学習、情報、キャリア教育、生徒部などで実施されていた。

2) 家庭科で実践されている「消費と環境」「消費者教育」の学習内容の具体例は、4領域すべてに分類できた。「情報とメディア」では、ネットトラブル、個人情報。「生活の管理と契約」に関連する内容は、購入方法・支払方法、クレジットカード、金融教育、収入と支出、奨学金、消費者問題、消費者トラブル、消費者の権利、契約・消費者契約法。「商品等の安全」は、食の安全、表示・デザイン、自分たちで作った野菜など。「消費者市民社会の構築」は、環境教育や国際理解教育などの学習が多数分類できた。

3) 消費者の責任、役割という文言が見当たらず、今後、消費者市民社会の構成員としての自覚や能力を育成するためにはこの内容に関連した学習内容、具体的な事例などを提案する必要がある。

 

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