日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
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第59回大会:口頭発表
  • 増田 菜実, 鈴木 真由子
    セッションID: A1-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    1.研究目的

    日本は少子化とともに高齢化の進行が続いており、2013年の高齢化率は25.1%(内閣府平成26年度版高齢社会白書)となっている。この超高齢社会では、制度や設備の整備とともに人々の意識の改革も重要と考えられ、多くの研究がなされてきた。先行研究では、高齢者との接触経験や学校での学習が、高齢者イメージに影響すると述べられている。しかし、若い世代と高齢者との日常的な交流は減少してきていると推測され、学校教育、中でも家庭科がより重要となると考えられる。

    そこで本研究では、大阪府立高校における家庭科の高齢者学習の実態を明らかにするとともに、高齢者理解を深めるために有効な授業の要素について検討する。

    2.研究方法

    (1)高齢者学習の実態を明らかにするために、大阪府立高校(全96校)の教科「家庭」平成27年度シラバスから把握できる学習内容を分類、整理する。

    (2)家庭科での高齢者分野の授業構成および配当時数が異なる3高校において、学習の効果を明らかにするために高校生を対象とした質問紙調査を行い、学校間ならびに授業前後で比較する。対象とした家庭科の授業は、a校:講義のみ、b校:講義・シニア体験、c校:講義・シニア体験・高齢者との交流である。参考として、d課程:「福祉」においても同様に調査を行う。調査時期は2015年6~11月、配布・回収数は授業前総計406部、授業後総計415部(各欠席者を除く回収率100%)である。主な調査項目は、高齢者に対する気持ち・行動、高齢者イメージ、年をとることへの考えなどで、授業後には「学習を終えてわかったこと・感じたこと」についても尋ねる。なお、授業の内容を把握するため、全ての授業(全27時間)を参観しビデオで記録するとともに担当教員に確認する。

    3.結果および考察

    (1)大阪府立高校で開講している教科「家庭」の科目は、6割弱が『家庭基礎』、4割強が『家庭総合』であった。シラバス記載の学習内容を高等学校学習指導要領を参考に5つに分類したところ、「高齢者の生活と課題」「高齢社会の現状と社会福祉」については科目を問わず多くの学校で学習されていた。「シニア体験」については約2割、「高齢者とかかわる」については約1割しか学習されていなかった。このことから、体験や交流を取り入れた学校は少なく、ほとんどは講義を中心に高齢者学習を展開していると推測される。また、約15%の学校はシラバスに高齢者分野の記述がなかった。

    (2)3校(4課程)で実施した授業前質問紙調査の結果、ほとんどの項目で学校(課程)間に有意な差が認められなかった。授業前後の結果を比較したところ、高齢者に対する気持ち・行動については、c校、d課程で積極的な回答が増加した。c校は高齢者と交流したこと、d課程は看護師志望の生徒が多いことから、将来の職業的関わりを意識したことが関係していると考えられる。高齢者イメージについては、c校は肯定的に変化し、a校、b校は否定的に変化した。a校は講義によって高齢期の否定的な面が印象付けられたこと、b校はシニア体験後の振り返りがなかったことが原因として推測できる。「自分はどのような高齢者になりたいか」については、a校、c校で積極的な回答が増加した。それは、間接的(a校)、直接的(c校)に実在する高齢者を知ることで、自分の高齢期のモデルがイメージしやすくなったからではないかと考えられる。学習を終えてわかったこと・感じたことについては、b校は他の学校(課程)に比べて、自分の高齢期についての記述が多かった。高齢社会の実態について学んだあと、自分に置き換えて考えさせたことが生徒に影響を与えたと推測される。

    以上のことから、授業構成や配当時数が、生徒の高齢者理解や高齢者イメージに大きな影響を与えることが示唆された。なかでも、授業における高齢者との交流や、活動の振り返りが重要であり、そのためには絶対的な時間数の確保が不可欠であると考えられる。
  • 李 秀眞
    セッションID: A1-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    研究目的 本研究の目的は、親と中学生子どもの間の時間に関する規則有無によって、中学生の時間管理行動および時間使用に関する自己評価に差があるのかを明らかにすることである。時間に対する規則として、メディア接触規則および帰宅時間に対する規則を設定し、男女別の分析を行う。

    研究問題 研究問題を3つ設定した。<研究問題1> 親と中学生子どもの間の時間に関する規則有無は、家族背景によって異なるのか。<研究問題2> 中学生の時間管理行動および時間使用自己評価は性別、学年別の差があるのか。<研究問題3> 親と中学生子どもの間の時間に関する規則有無によって中学生の時間管理行動および時間使用に対する自己評価は差があるのか。

    研究方法 分析に用いるデータは日本ベネッセ教育総合研究所が実施した「放課後の生活時間調査(2009)」である。本調査は、2008年11月に日本全国の小学校5年生から高校2年生まで総8,017名を対象として実施されており、児童および青少年の生活時間実態および時間に対する意識等に対する情報を含む。本研究では、生活時間の合計が1440分になる中学生3,372名を研究対象とする。

    分析に用いる変数 時間管理に関しては、時間管理の下位領域を自立性、規則性、計画性に区分し測定した。自立性に関する項目2項目、規則性に関する項目2項目、計画性に関する項目3項で構成した。各尺度の信頼度Cranbach’s α値は、自立性0.733、規則性0.691、計画性 0.725であり、信頼できる水準であった。それぞれの項目は、4点尺度(とてもあてはまる(1)~まったくあてはまらない(4))で測定され、本研究ではリコードして分析に用いた。時間使用に関す自己評価は「あなたの日ごろの時間の使い方は、100点満点で、だいたい何点くらいだと思いますか」という質問への回答を用いた。時間に対する規則は、家に帰る時間、テレビを見る時間、テレビゲームや携帯ゲーム機で遊び時間がそれぞれ決まっているのかで測定したが、例えば、家に帰る時間は「家族(お父さんとお母さん)と次のような時間のルール(約束ごと)を決めていますか」という質問に対し、決めていない(1)、決めているが守れていない(2)、決めていて守っている(3)で測定した。テレイを見る時間、テレビゲームや携帯ゲーム機で遊ぶ時間に関しても同様の方法で測定した。その他の変数として、父親の学歴、母親の学歴、母親の就業形態、本人の性別、学年を用いる。分析に際し、χ2検定 、t-test および一元配置分散分析を実施した。

    分析結果 親の学歴および母親の就業形態と時間に関する規則有無の関係を分析した結果、親の学歴が大卒以上であると、テレビをみる時間とテレビゲームや携帯ゲーム機で遊ぶ時間に対する規則が「決めていて守っている」という回答が多かった(研究問題1)。性別による時間管理行動および時間使用に対する自己評価に対する平均点の違いを分析した結果、自立性と計画性は男子学生より女子学生の方か高かったが、規則性と時間使用に対する自己評価は男子学生の方が高かった(研究問題2)。最後に、親と中学生子どもの間の時間管理行動および時間使用に対する自己評価に差があるのかを分析した。「決めていない」をグループ1、「決めているが守れていない」をグループ2、「決めていて守っている」をグループ3と命名する。家に帰る時間、テレビを見る時間、テレビゲームや携帯ゲーム機で遊ぶ時間に関する規則有無と時間管理行動の下位領域である自立性、規則性、計画性との関係をみると、グループ2においてもっとも点数が低く、これは男子学生と女子学生で共通した結果であった(研究問題3)。

    考察 これらの結果は、規則があるが、守らなくてもよいという経験をしたら、規則が規則として作用しない可能性を示唆している。すなわち、時間管理等の生活規則に関しては、規則を決めるだけでなく、規則を決め、またそれを守るように誘導することが必要であることが示唆された。
  • 子育て世代へのグループインタビュー調査から
    川村 めぐみ, 松岡 依里子, 大本 久美子, 望月 一枝, 齋藤 美重子
    セッションID: A1-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【問題の所在と研究目的】
    グローバル化の中で、世界各国においてはコンピテンシ―ベースの教育改革が進み、わが国でも「21世紀型学力」が提案され、育成すべき資質・能力の三つの柱の中に「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るかが挙げられている。グローバル社会の中では個別化・流動化が加速し、「専門家も答えを持てない複雑な世界規模の問題が市民に影響を与える」と言われおり、我が国においても人口構造の変化や家族形態、ライフスタイルの多様化、労働環境の変化など社会の変容に伴い、家族・地域の弱体化、格差の拡大・貧困の連鎖など様々な問題が顕在化している。
    平成25年3月には「子ども・子育て支援法」が成立。6月には少子化危機突破のための緊急対策「子どもを産み育てやすい社会の実現」が挙げられ環境整備も進められているが、その実態をとらえ整備されているとは言い難い 。
    本研究は高校家庭科における「保育」「家族」の領域において、現在の子育て世代はどのような生活課題を抱えているか調査し、日本社会における子育てに必要な学びとは何か、その結果から家庭科に必要な学びをグローバルな視点から整理し、カリキュラム開発に向けての視点を得ることを目的とした。
    【研究方法】
    関東地方A市の「子育て支援施設」等を利用する母親に対し半構造化面接法によるグループインタビューを実施。さらに当日の様子をフィールドノーツに記録した。
    インタビューから得られた調査対象者の語りを次世代育成の発達課題と対応させ検討した。
    調査対象者は就学前の子どもを持つ母親とその支援者(のべ14名、母親の年齢は20代前半から40代後半)である。
    調査時期2016年2月~3月 各回の実施時間は1時間から1時間半程度
    【結果】
     インタビューから得られた知見として、調査対象者たちは家庭科での学びの記憶はほとんどなく、親になる前に子どもに接する体験が少なかった。子育てに関する情報収集は、積極的に行っているというよりも、行政機関で配布さる冊子や母親学級などの参加を通して伝達されたことが役に立っていた。しかし参加者からは「基準がわからない」との意見もあり、手探りでいつも不安に駆られながら子どもに向き合っている状況が伺えた。参加している子育て関連施設での親同士の関係が「同じ世代の子どもを持つ母親」という共通点で繋がり、情報の共有や基準の解釈の場として機能している中で、子育てに関する制度やサービスなど事前の知識の重要性も指摘され、学校教育で学んでおく事の有用性が指摘された。
    調査の語りを、次世代育成の発達課題と対応させ検討した結果、教科書では「子どもの理解」の知識・技術が多い事が明らかとなった。高校卒業後15年から20年後に親となっている現状から、晩婚化・晩産化、医療技術の進歩に伴う社会の変化について、高校時代の教科書に記述されていないという指摘もあった。
    知識・技能を実際の子どものケアに活用する学びや、市民として次世代の育成に関わる学びを設定する必要があり、世界各国の動向も視野に入れ、家族の多様化、子育てが困難な社会の状況を踏まえ、「子育て理解」の学びを生涯発達の視点で捉え、グローバル社会で多様な他者と共同しどのように子育てしやすい社会を作るかを思考させるカリキュラムを導入することが重要であると示唆された。  
    *なお本研究は、日本家庭科教育学会課題研究(1-3)による研究の一部である。
  • 買い物時間から家族を考える
    伊波 富久美
    セッションID: A1-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【研究目的】

    家族学習は扱いにくいと捉えている教師は少なくない。家族学習には各家庭の様々な事情が絡むこともその一因であろう。しかし、各家庭が多様であるからこそ、自分の家庭しか見えていない学習者に、それらの営みに触れ、家族関係に対する視野を広げる機会を家庭科授業において提供することが可能である。
    そのためには、どの家庭にも共通する営みを学習対象としつつ、かつそこでの多様性を取り上げることが必要である。他方、家族の関係性は目に見えないものであり、家族学習では、それを外部化(顕在化)させることも重要である。
    そこで本研究ではどの家庭でも行われている「買い物」という営みに費やす時間に着目した。そしてその時間を“誰のために”費やしているのか意識化させ、そこでの関わり方の相違に目を向けさせることで、学習者が家族との関係性を見つめ直し、家族にどのように関わっていけばよいか考えていくことのできる授業を構想するとともに、その検証を目的とした。  

    【研究方法】

    1. 題材「買い物時間から家族を考える」(1時間)の授業を以下の視点から構想した。
    <買い物時間への着目> 学習者が“誰のために”買い物をして、そこにどれほどの時間を費やしているのか、家族の買い物の実態と照らしながら把握することによって家族との関係性に目を向ける。
    < 家族の生活時間に照らした自分の時間のふり返り> 自分の生活時間を家族の生活時間に照らして捉え、その比較を通して家族とのかかわりを考えられるようにする。
    < 自分の家庭に根ざした改善> 各家庭で自分が実際に行っている、あるいは家族によって行われている家事を見つめ直すことで、家族とのかかわりを意識しつつ、家事全般への各自の現実に即した改善方法を考えられるようにする。
    2. 授業は2015年9月に、小学校4年生27名(男子12名女子15名)を対象として実施した。授業分析にあたっては、ビデオ録画をもとにした発話内容の分析と学習者がワークシートに記入した内容の分析を併せて行った。

    【結果及び考察】

    1.   学習者は、まず自分の買い物の内容及び時間をワークシートに書き出し把握した上で、家族の買い物時間がどのようになっているのか、特にそれが”誰のために”費やした時間であるかについて、他者とともに目を向けることができていた。
    2. その後、学習者は再度、自分の買い物が”誰のため”であったのか、先にワークシートに書き出した買い物を青丸(自分のため)と赤丸(家族のため)を付けてチェックした。それによって、学習者は「赤丸は何も無い!」などと発話しながら、“家族は自分のために時間を費やしている”のに対して、“自分は家族のためにほとんど時間を割いていない”実態を具体的に把握し、その関係性を実感していた。  
    3. 買い物を切り口にしながら、学習者は家事全般に視野を広げ、単に”家族の大変さ”に言及するだけでなく、半数以上の学習者は家族における自分の位置を相対化して捉えることができた。さらにそれをもとに、家族とのかかわりを意識しつつ、自分の今後の家事分担について、その内容や頻度の見直しを積極的に行うことができていた。
  • 鎌野 育代, 伊藤 葉子
    セッションID: A1-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    目的

    家庭科において、ロール・プレイングは人とのかかわり方を学ぶ方法として実践され、その教育的な効果についても報告されている。その中で、矢吹(2001)は大学生を対象にロール・プレイングを5回行うことにより、自己を中心として他者との関係のあり方を段階的に学んでいくことを指摘している。また、鎌野(2016)は、ロール・プレイングによる中学生の家族関係に関する学びは、他者になりきり実感する(情緒)自己と家族の客体化(認識)無理のないかかわりを見出す(行為)というプロセスであることを示している。但し、これらの研究は事例研究や観察研究、参加者の内省報告がほとんどで、ロール・プレイングの効果に関して量的に検討しているものはない。

    そこで、本研究ではまず、家庭科の家族学習におけるロール・プレイングの効果を明らかすることを第一の目的とする。また、この効果を明らかにするために人との関係性を「自己と他者との間の認識と相互作用における行為」と定義づけ(2015,鎌野)、この概念を基にその効果を量的な視点から明らかにすることを第二の目的とする。

    方法

    本研究は、2つの目的をもつことから、その方法に関してもそれぞれ分けて示す。まず、授業の効果に関しては、・あなたは家族の学習に興味がありますか(興味をもちましたか)、・あなたはロール・プレイングの授業は楽しみ(おもしろかった)ですか、という2つの質問項目を用いた。次に「人との関係性」の質問項目の作成にあたっては、認識と行為の効果から捉えることとした。具体的には、以下の7項目を使用し、その対象を親、家族、友人として全部で21項目からなる質問紙を用いた。

    ・あなたは、親の気持ちに興味・関心はありますか、・あなたは、親の気持ちを受け容れることはできますか、・あなたは、親の行為(言うこと・やること)に興味・関心はありますか、・あなたは、親の行為(言うこと・やること)を受け容れることはできますか、・あなたの行為(言ったこと・やったこと)で親がどんな気持ちになるかわかりますか、・あなたの行為(言ったこと・やったこと)で親のどんな行為を引き出すかわかりますか、・あなたは、親子関係をよりよくするために、行為(言ったり・やったり)していますか、である。

    調査対象は、千葉市の公立中学2年生106名であり、回答方法については4件法とした。調査時期は、2015年9~10月である。

    結果

    調査結果から、家族学習のロール・プレイングの効果として、以下の点が明らかとなった。まず、授業の効果については、どちらの項目においても有意差が現れ、授業後に家族の学習に興味を持った生徒が増え、ロール・プレイングを楽しいと思った生徒も増えた。「人との関係性」に関しては、認識に有意差が見られた。また、生徒の関係対象とした、親、家族、友だちについては、親、家族に有意差が見られ、友だちについては変化が見られなかった。

    鎌野育代.(2015).中学校家庭科における保育・家族学習の授業と生徒の学び-家庭科における「人との関係性」の育成の視点から-. 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科学校教育学専攻生活・技術系教育講座博士論文

    鎌野育代.(2016).学族学習のロール・プレイングにおける中学生の家族関係に関する学びのプロセス.日本家庭科教育学会誌,58(4),210-221.59

    矢吹芙美子.(2001).心理劇状況における自己の体験的把握と自己変容:共に育つ保育者の養成の方法として.大妻女子大学家政系研究紀要,37,163-179.
  • 家庭科教員免許状更新講習「家族と共生社会」への教員アンケー ト調査から
    小野瀬 裕子
    セッションID: A1-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    目的
    現代日本は少子高齢化から人口減少社会となっており、想定される地方消滅や産業のグローバル化といった社会変化から、生命の維持存続のための家族と地域の生活システムのありかたを、実生活に即して教育する必要性が高まっている。家庭科では、小学校・中学校・高等学校の全ての学習指導要領で家族と地域に関する内容があり、特に平成25 年から実施の高等学校学習指導要領では、目標に「家庭や地域の生活課題を主体的に解決する」ことが明記され、新たに青年期の自立と共生社会・福祉の内容が盛り込まれた。家庭科で学んだ生活の知識と技術を生かし、「家族と共生社会」の教育内容を充実させることは、持続可能な社会構築に向けて重要である。生活課題に即した「家族と共生社会」の効果的な教育内容と方法を、教員アンケート調査から検討することが本研究の目的である。
    方法
    東京家政大学で行われた平成27 年度家庭科免許状更新講習の選択領域「家庭科の授業づくりと教材化の視点」全12 講義のうちの「家族と共生社会」(報告者担当)の講義内容とそれに対する受講教員の事前・事後アンケート調査の内容分析をした。調査対象の教員は52 名である。事前アンケートは12 講義のうち特に関心のある講義に対する自由回答で、「家族と共生社会」に関心を持った教員は8名。事後アンケートは全員回答で、52 名(病院1 名、特別支援学校5 名、幼稚園1 名、小学校5 名、中学19 名、高校21 名)。
    結果
    免許状更新講習の事前に以下の講義概要を提示した。「現代日本は少子高齢化から人口減少社会となっており、社会統計などから家族や生活の変化の現状を客観的に捉え、今後の予想とこれからの生活課題を見出す。また、現代は多様な生き方が認められつつあるが、誰もが孤立せずに安定した生活を営むには、どのような家庭や地域、共生社会をつくっていけばよいか、諸外国の例をとりあげながら、家族と共生社会を考える。」
    事前アンケートで「家族と共生社会」に関心を持った教員8 名のうち、家族領域の指導に困難を感じている教員は5 名(中学1 名、高校4 名)。家族の機能や役割の変容・家族形態の多様化、家族と地域の繋がりの教材化について関心があった。
    事前アンケートの要望を踏まえ、以下の内容の講義を行った。
    講義内容「家族と共生社会」
    1.日本の少子高齢社会と家族の現状
    ・総人口減少・少子高齢社会・リプロダクティブヘルスライツ
    ・産業構造の変化と小家族化・雇用形態の変化と貧困問題
    2.共生社会
    ・共生社会政策・社会保障制度改革・協働・ボランティア学習
    3.地方創生
    ・地方消滅の可能性と原因・地方創生への生活課題
    ・家庭科から家族と地域の生活課題への実践的解決
    4.諸外国の家族と地域のつながりの例
    ・フランスの家族政策と異世代同居
    ・諸外国の例を紹介しあうことから異文化理解と日本への応用
    事後アンケートでは、「家庭の事情が関わる部分の扱いにどう踏み込むべきかわからなかったが、さまざま家族や地域の生活課題を客観的に伝え、その対策や予防について調べ考えさせることは、どのような家庭の生徒にもためになり、恐れてはいけないと気付いた」との内容と同様の意見が多かった。知らないことが貧困などの生活困難を促進することを考えれば、生きた役立つ情報を伝えることが教師の役目である。自助・互助・共助・公助と国際関係の空間的広がりと過去から現在への有機的な繋がりにより生活が成り立っていることを、衣食住と人間関係から実感とともに理解し今後を考えることは実践的科目である家庭科の強みであり、社会科と連携しながら進めることで相乗効果があると考えられた。
  • 大藤 真央, 池﨑 喜美惠
    セッションID: A2-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【目的】
       
    多種多様な既製服が安価ですぐに手に入るようになった今日、自ら被服を製作したり補修を行う機会は極めて少なく、その技術の必要性を強く感じる場面も減少した。また、家庭科の授業において製作実習の時間は年々削減されており、児童がその技術を身につける機会はますます減衰している。児童は、製作学習や手縫いの実習により、縫製の知識や技術を習得するだけでなく、作品を作る過程で起こる問題を解決する能力を養うことや、苦労しながら作品を完成させた達成感や満足感を味わうことができる。また、作品を製作することは、出来上がるまでには時間や技術、素材、それに込められた思いがあり、ものを大切にする心やその価値を認める目を養うことにも繋がる。また、製作に必要な道具や素材を揃えることや、期日までに完成までさせる手順などを考えることによって計画性が身につき、完成を目指して作業を進める能力を習得できるのではないかと考える。本研究は、小学校家庭科での製作実習における児童の意識を明らかにし、製作実習の必要性や有用性を説くための一資料とすることを目的とした。
    【方法】
       
    児童の製作実習に対す意識を明らかにするため、都内の小学校第5・6学年の児童638名(男子336名、女子296名、N.A.6名、第5学年330名、第6学年307名、N.A.1名)を対象に、2016年1月~3月に質問紙調査を実施した。質問項目は堀内(1989年)、坂井(2003年)が実施した調査項目を援用した。調査内容は、学習意識、製作に対するやりがい、成就感、技能の難易、実習に対する否定的な意見、家庭での実践についてなどである。
    【結果および考察】
    1.「家庭科の授業で、縫って何かをつくることをやりたい」では、女子の約85%、男子の約72%が「とても・少し思う」と回答し、男女間に有意差が認められ、女子の方が製作実習に対して積極的であることがわかった。さらに、学年間でも有意差が認められ、第5学年の児童の製作に対する意識が高く示された。また、「もっと難しいものを縫って作ることに挑戦したい」では、女子約76%、男子約57%、第5学年の児童約72%、第6学年の児童約59%が「とても・少し思う」と回答し、性別や学年により有意差が認められた。特に女子や第5学年の児童の方が難易度の高いものでも挑戦してみたいという意識を高く表明していた。
    2.「縫って何かを作ることは、やりがいがあることだ」では、男子約42%、女子約61%、第5学年の児童約52%、第6学年の児童49%が「とても思う」と回答し、男女間に有意差が認められ女子の方が製作に対してやりがいを感じていた。しかし学年間には有意差が認められなかった。また、「苦労して縫った作品が出来上がったときはとてもうれしい」では、男女とも9割が「とても・少し思う」と回答し、特に女子の72.3%が「とても思う」と回答し、作品が完成した時の成就感を強く感じていた。
    3.製作技能について、しるしつけや裁断、糸通し、玉結び、ミシン縫いなどの技能は簡単であると、4~5割の児童が回答した。また、製作学習に対し、縫って何か作ることを倦厭したり自作のものに批判的な評価をしている児童は少なく、自己の製作技能に対して否定的な意識を示す児童は1割ぐらいであった。また、家庭で家族が縫い物を行っている児童のほとんどが、家庭科や製作実習に対して積極的な意識を持っていることが明らかになった。
    4.手縫いの技能の習得などが不十分であるため、初歩の段階でつまずいてしまい、苛立ちを感じている児童がいた。実習は児童にとってやりがいや成就感を得ることができ、学ぶことの多い貴重な学習である。しかし、児童が技能を確実に習得する前に授業が進んでしまうため、製作実習は難易度が高いものだと思い込んでしまうのではないかと思われる。今後の課題として、限られた時間内で、児童に基礎技能の習得を徹底させるための指導のあり方を考案し、製作実習に対する意欲を高揚させていきたい。
  • -水蒸気移動特性の視点から-
    今村 律子, 潮田 ひとみ, 與倉 弘子, 赤松 純子
    セッションID: A2-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    1.目的 
    衣服材料は、紙やフィルム、金属ではなく布である。しかし、布については生活に役立つ物の製作に関連させて取り上げられているため、作品の製作そのものが主目的になり、衣服材料が布であることに意識が届きにくい。学習指導要領解説では、「紙などの他の材料と布との扱いの違いや特性を知り」、「布製品を評価する力を高める」ことが求められている。そこで本研究では、衣服材料が布であることを基本に、データの裏付けのある水蒸気移動特性実験を含め、着方学習を応用発展させる内容を示す。

    2.方法
    健康な大学生男女9人を研究協力者とし、手を袋状の物で覆った際の袋内温湿度を測定した。袋の条件は、条件A:麻平織試験布(N=12)、条件B:ポリエチレンフィルム(N=12)、条件C:Bのフィルムを1cm程度の幅に裁断し、平編みしたもの(N=8)とした。実験は2015年8~9月に、環境温26℃にエアコンを設定した被服実習室で実施した。安静にした研究協力者の手背に温湿度センサー(HMP45ASPF、VAISALA)を貼付し、測定開始5分後に左右の手に異なる条件の袋を装着した。軽く紐で手首を閉じ、10分間温湿度を測定した。測定間隔は30秒とし、データロガー(AM-8060E、安立計器)に記録した。

    3.結果及び考察
    (1)各袋装着直前の平均袋内温度は、条件A、B、Cとも 30.1℃であり、装着10分後にはそれぞれ、32.0℃、32.1℃、32.3℃と有意に2~2.3℃上昇したが、3条件間に差はなかった。装着前の平均袋内相対湿度も同様にそれぞれ48.5%、48.8%、48.7%と3条件で差は認められなかったが、装着10分後は、A:49.8%、B:85.7%、C:58.6%となった。条件Aでは、装着前後にほとんど変化はなかったが、条件Bでは湿度が大きく上昇した。条件Cでは、若干の湿度上昇があり、袋の装着1分後から3条件間で有意な差(P<0.01)が認められた。
    (2)装着直前と10分後の平均絶対湿度を比較したところ、条件Aでは、15.6g/m3が16.8g/m3に、条件Bでは、15.3g/m3が29.1g/m3に、条件Cでは、15.2g/m3が20.1g/m3にそれぞれ有意に上昇した。条件間の差は、袋素材の水蒸気移動特性が異なったことから生じたと言える。条件A(麻平織)では、吸湿性と透湿性の両方が働いた結果である。条件Cは、素材に吸湿性はないが、細く裂いて平編みにしたため、空隙(編み目)からの透湿性が認められた。ポリエチレンに吸湿性がないため、条件Aと比較して外界に移動する水分量が少なかったことから、袋装着10分時の湿度が条件Aより高くなった。条件B(フィルム)は、吸湿性も透湿性もないため、手からの水分がそのまま袋内にとどまり、袋内湿度が装着前と比較して最も高くなった。

    4.まとめ
    布を拡大して構造観察することによって空隙(織・編目)は視覚的に確認できる。その確認から、小学校で扱う「快適な着方」に関わる布の性質(保温性・通気性・吸水性)を学習させることは可能である。また、一部の小学校教科書に記載されている「湿気の通しやすさ」も同様に説明できる。本実験は、視覚に加えて手の湿り具合やポリ袋が湿気でくもる様子を体感させることによって空隙の役割を確認でき、衣服材料が布である意味を理解することができるものである。「湿気の通しやすさ」を繊維の性質である吸湿性から教えるのではなく、「布を知る」学習と関連させて取り上げることが必要である。

    本研究の一部は、科学研究費補助金基盤B(課題番号:26282011 研究代表:與倉弘子)の支援により実施されました。
  • 「きものの繰り回し」から学ぶ循環型衣生活の工夫
    大矢 幸江, 薩本 弥生
    セッションID: A2-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    目的 家庭科の衣生活分野の学習では、「衣服と社会生活のかかわり」を理解させることが目標として挙げられている。これまで、衣文化への関心を持たせる学習において、きもの文化を取り上げ、ゆかたの着装を含む授業実践を行ってきた。そのことにより生徒のきもの文化への興味関心が喚起されることが明らかとなっている。本研究では、ゆかた着装後の授業で、どのような内容を取り上げると学習に効果的かを検討した。そこで、「もったいない精神」を共通とする、きもの文化の学習(きもの単元)の「きものの繰り回し」と環境共生の観点から循環型の衣生活の単元(環境単元)を接続する教育プログラムを考案し、授業実践を行った。異なる2つの単元の授業を関連付けることにより、双方の内容に興味関心や理解を深めることに効果があるかを検証し、学びの可能性を検討することを目的とする。 方法 平成27年12月~28年1月に、公立中学校3年生290名を対象に、きもの文化の学習とゆかたの着装を含む授業実践を行った。続く環境単元の授業の最初に、きもの単元の振り返りとして、江戸時代の日本人の衣生活における「きものの繰り回し」が、もったいない精神をベースに循環型の衣生活を構築していたことを学ばせた。続いて生徒の主体的な活動として「制服の一生すごろく」を用い、ゲーム感覚で楽しみながら制服の製造から廃棄までの流れを追う。消費者側からは見えにくい部分にある二酸化炭素の排出量や、環境負荷について意識させる。現代の衣生活の問題点と自分にできることを考えさせた。これらの単元を接続する授業の効果を検証するために、きもの単元のゆかた着装授業の前後と、環境単元の授業後にアンケート調査を実施した。     結果 授業実践校の生徒について、次の特徴が明らかとなった。ゆかたを着た経験は75%、着物を着た経験は57%であった。しかし、ゆかたの着方は58.5%が知っていると思っていない、自分で着つけできると思っていないは72.8%であった。65.0%がゆかたを着てみたいと思っていたが、自分で着つけしたいでは50.6%に減った。授業前後の意識をt検定にて比較すると、着装意欲・着装理解・きもの文化への誇り・着物のTPOすべてにおいて平均値が上昇し、その変化は0.1%水準で有意差があった。次に、環境循環型衣生活との相関をみるために、すべてのアンケートの因子分析を行った。ゆかた授業前3因子、授業後4因子、環境共生5因子が得られ、重回帰分析からは授業後の、「ゆかた着物関心・意欲・高揚感_後」因子(ゆかた関心意欲因子)と環境意識因子との相関が深かった。そこで、「ゆかた関心意欲因子」を高、中、低の3群に分け環境共生の5因子を従属変数として分散分析を行った。その結果、ゆかた関心意欲因子の得点が高いほど、「環境エネルギー認識と意欲」「エコ配慮の衣生活意識」が高まることが明らかとなった。しかし、「リユース行動」との相関は見られなかった。きもの文化への興味関心が深まった生徒は、環境共生への認識・意欲への高まりは見られるものの、実際のエコに対する行動には繋がっていない実態が示された。今後、高められた意識を実生活に落としこむための授業の工夫が必要である。また、衣服の「作るエリア」「着るエリア」「捨てた後エリア」で自分にできることを自由記述で回答させた。こちらの分析結果は口頭発表にて報告する。  
  • 学校設定科目「グローバルライフ」衣生活分野の学びの分析より
    横瀬 友紀子, 河村 美穂
    セッションID: A2-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    研究目的:2014年度からスーパーグローバルハイスクール(以下、SGH)の指定が開始され、グローバルな視点を育む取り組みが実践として広がりつつある。私たちの生活が諸外国と関係し合って成り立っている現代社会において、生活の諸課題を通して具体的にまた広がりを感じながら考える家庭科の実践は、生徒が世界とのつながりを自分のこととして考えやすいという点からも有効だと考える。
      本研究は、SGHに指定された高等学校で開発されている学校設定科目「グローバルライフ」(家庭科関連科目)で実践した衣生活分野の学習において、生徒が「自分自身の生活に引き寄せ」「世界とのつながりを考える」ための教育方法を工夫し、実践して検証することを目的とする。
      「自分自身の生活に引き寄せる」「世界とのつながりを考える」という二つの視点は、グローバルな人材育成の根幹として家庭科で育みたいグローバルな視点である。2014年度に実施した授業をもとに昨年度報告した研究では、自分に引き寄せることは容易であるが、社会や世界に向かって視野を広げることが難しいことが明らかになった。そこで、本研究では生徒が自分自身の生活に引き寄せて世界とのつながりを考えるために、具体的な事象を多面的な視点から学ぶ方法を工夫し生徒の学びを授業記録をもとに分析し明らかにすることとした。
    研究方法:本研究が対象としたのは、2015年度2学期に実施した衣分野6回(計12時間)の授業である。(1)なぜ服を着るのか、クラスメイトの着装はどうか、といった問いをもとに生徒の日常に身近な衣服をより身近なものであることに気付かせる。(自分自身の生活に引き寄せる)(2)生徒自ら安価な労働力を用いて生産される衣類の現状について情報を収集し、ディベートを通して、自分の考えをもつ。(世界とのつながりを考える)という工夫をした。具体的には、生徒が持参した私服を着用し相互インタビューなどを通じて着装や衣材料について学び(4時間)、「ファストファッションは私たちの生活に必要か、不要か」についてディベートを行い(7時間)、ディベートでの議論をもとにした教員による講義「ファストファッションの光と影・エシカルファッションとは」による振り返り(1時間)という構成とした。
       本授業の前後に衣生活を中心とした「自分自身の生活に引き寄せ」「世界とのつながりを考える」質問を設定した質問紙調査を実施し、その結果と毎回の授業の生徒による授業記録、レポート課題の記述も分析対象とした。
    結果と考察:授業の前後に実施した質問紙調査では、多くの生徒が衣生活に関して「自分自身の生活に引き寄せ」考えることができるようになった。同時に「世界とのつながりを考える」設問への関心度が上昇した生徒も全体の約15%おり、これらの生徒は、世界規模での衣類の現状や生産の実態を理解したうえで、衣服の消費に関わる私たち自身の問題について考察した記述をしていた。これらは、衣類に関わる問題を構造的にとらえ、その一端に自分が関わっていることを認識した記述であり、世界規模での問題解決が難しいことを理解した上で、自分にできることは何かを考えようとしている記述であった。
      生活に根付くグローバルな課題は、恩恵にあずかっている(日本に暮らす)私たちが問題の構造に気付き自分の生活とどう向き合うか考え続けなければならないものである。今回一定程度の生徒が、これらの問題を自らの問題と受け止めつつ簡単に解決しない問題であるがゆえに引き受け続けようとしている記述が見られたことは、本授業でディベートを通して多様な意見を聴き合うことができたこと、ファストファッションが高校生の生活になくてはならない身近な教材であったこと、自ら目的をもって情報収集できたことがその要因としてあげられる。生徒がグローバルな課題に向き合うためには、惹きつける身近な題材の選定、問題の構造を多面的に理解させること、生徒自身がその問題にどのように関わるかについて考察する機会を設けることが必要であると考える。
  • 青木 香保里, 岡村 好美
    セッションID: A2-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    目的

    子どもたちの生活経験不足に由来する生活技能の低下もあり、家庭科教育における被服製作実習が抱え
    る課題は山積している。また、めまぐるしく変化する現代生活のなかで被服や衣生活も日々変貌し、子どもた
    ちの生活と家庭科で取扱う教育内容との乖離を指摘できる。被服製作実習を中核とした学習を通して有用
    感や実用感、達成感などを伴った知識や技能を獲得し、子どもたちの成長・発達に寄与する実践が望まれ
    る。
    本報告では、材料の特性(本研究では「熱可塑性(:ヒートセット性)」)に着目した実験・実習教材の開発を
    行い、開発した実験・実習教材を用いた実験授業を教員養成大学において実施し、実験・実習教材の改善
    に向けた検討を行った結果について報告する。
     

    方法
    被服材料の特性に着目した実験・実習教材の開発にあたり、「熱可塑性を利用した教材布の実験と評価」
    を行い、結果を基に考察した。また、「被服材料の特性に着目した実験・実習教材(今回は「熱可塑性」)に関
    する教材研究、ならびに「被服材料の特性に着目した実験・実習教材に関する先行実践の検討」を行った。
    上記をふまえ、「被服材料の特性に着目した実験・実習教材を用いた教員養成大学における実験授業を実
    施し、実験・実習教材の改善に向けた検討」を行った。
     
     
    結果
    1.「熱可塑性を利用した教材布の実験と評価」について:
     報告当日に資料を基に述べるが、ここでは割愛する。
     
    2.「被服材料の特性に着目した実験・実習教材に関する教材研究」、ならびに「被服材料の特性に着目
     した実験・実習教材に関する先
    行実践の検討」について:
    1)熱可塑性は、日常生活におけるアイロン・プレスの作業において確認できる現象であり、被服製作実習の
     授業においても同様であることから、子どもたちにとって、具体的で実践的な教育内容を内包するといえ、
     教材研究の展開と深化が期待できる。

    2)被服材料の特性に着目した実験・実習教材として、天然繊維の特性に着目した教材が散見されるもの 
     の、合成繊維の特性に着目した教材に関する先行研究は見当たらない。また、熱可塑性に着目した実
     験・実習教材の開発も見当たらない現状にある。なお、解くことや解体する過程をふまえた実習教材につ
     いては、リフォームや修繕等に関する実習教材が開発されているものの、被服材料の再構成・再利用等 
     に重点が置かれているといえ、被服材料の特性に着目する視点と結びつけた実習教材の開発は見当たら
     ない。
     
     3.「被服材料の特性に着目した実験・実習教材を用いた教員養成大学における実験授業を実施し、実
       験・実習教材の改善に向けた
    検討」について:
     
    実験授業は2時間の単元として構想し、授業実践を行った。
     実験授業終了後に実施した自由記述による学生の感想・コメント・意見等をもとに、成果と課題について考
     察し、改善に向け検討を行った。詳細については、報告当日に述べるが、実験授業を通して、実験・実習教
     材に取組んだ学生の評価から、実習教材の開発にあたり目的とした被服材料の成立ちの理解を基盤とし
     た実験・実習教材の有効性や可能性が確認できた一方、指導内容について改善の必要が確認できた。


    付記:
    本研究は, 優良教材株式会社と北海道教育大学藤本尊子教授の協力も得て行われたことを付記する。
     
  • 楢府 暢子, 阿部 睦子, 亀井 佑子, 志村 結美, 仙波 圭子, 仲田 郁子
    セッションID: A2-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【研究目的】
       グローバル化が進展する中、世界の人々と共に生活していくためには、日本や地域の伝統、文化についての理解を深め、他国の文化も理解し、共に尊重する態度を身に付けることが重要である。中央教育審議会答申(2008)においては、家庭科の関連事項として、「衣食住にわたって伝統的な生活文化に親しみ、その継承と発展を図る観点から、その学習活動の充実が求められる」と明記された。                  
       本研究は、家庭科教育における日本の伝統的な「生活文化」に関する教育内容・教育方法について現状を検討し、小・中・高等学校の授業を創造し、実践し、検証して授業提案を行っていくことを目的とする。本研究では、「人間がよりよい生活を営むために工夫し、努力してきたもの」を「生活文化」と考え、「文化」「歴史」「伝統」「地域」などをキーワードとし、主に衣食住に関する事項を取り上げている。
       本報では、第58回大会、平成27年度例会に引き続き、全国の国立大学法人附属小・中・高等学校の教員対象調査から生活文化に関連する授業分析の報告をする。

     【研究方法】 
       全国の国立大学法人附属小学校・中学校・高等学校の家庭科担当教員に2014年3月に「生活文化」に関する授業調査を行った。結果、小31校、中29校、高9校、計69校から回答を得た。その中の先進的な授業実践から一事例を取り上げ、報告と分析を行う。具体的には、国立大学法人A中等教育学校の学校設定科目である6年生(高校3年生)対象の選択科目「生活文化」の実践内容と2001年度受講生25名と2015年度受講生12名の授業後の感想の分析等である。

    【結果及び考察】
       国立大学法人A中等教育学校では、平成10年公示の学習指導要領で生活文化の伝承と創造が取り入れられたことを受けて、6年生(高校3年生)の選択授業に「生活文化」を設置することとした。科目設置のねらいは、伝統行事や社会的慣習の意味や内容を体験的に理解させるとともにその背景となる先人の知恵や考え方を知ることによって、生徒自身が生活文化の重要性に気付き、それらを現代の生活の中で自分たちなりの工夫をしながら継承していくことである。
      2単位の通年のこの授業では、実習と講義を隔週で行った。調理実習では、季節の食材や行事に関連したものを取り上げ、それに関連する講義も併せて行った。具体的には、草餅、梅干し、おはぎ、おせち料理、クリスマス料理などである。実習内容は、日本だけでなく、海外の行事や慣習も扱った。調理実習だけでなく、手紙の書き方、冠婚葬祭のマナーなど日常生活におけるしきたり、心遣いについても扱った。調理以外に水引き、祝儀袋、しつらえなど日常生活に見られる伝統技術の実習も行った。
    1年間の授業後の生徒の感想からは、「日本の生活文化について正しく理解していなかったことがわかった」や「常識がないことに気づいた」など自分自身に対しての気づきが多く認められた。また、各授業内容について、「ためになった」、「楽しかった」など肯定的な評価がほとんどであった。この授業全般に対して、「生活に役立つ、日本人として知っておくべきこと」など、必要性を認めていた。
       今後の課題は、今までの調査等を踏まえ、A中等教育学校を含めた具体的な授業事例の分析から、種々の条件の中で実施できる授業提案につなげていくことである。また、国立大学法人学校授業調査において、どの校種でも生活文化を学ぶことで培える力として「自分自身の生活課題に気づく」を挙げる教師が半数を超えており、生活課題の気づきに焦点を当てた授業内容の検討を合わせて行いたい。
  • 生活設計におけるリスク管理のひとつとして
    仲田 郁子, 久保 桂子
    セッションID: A3-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    1、目的
        これまで筆者らは、高校生に対して必要と考えられる生活設計教育の指導内容について、検討を重ねてきた。その中で、人の一生で起こりうるリスクを考えることが、生活設計上効果的であることや、固定的な性別役割分担意識にとらわれない生き方を考えるための男女共同参画意識を育む教育の枠組みなどについて、提案を行ってきた。また、女子高校生は、生活設計をするにあたり、進路についての意識や希望するライフコースの影響を受けていることを明らかしてきた。
        筆者らは藤田の提案する生活設計の3つの領域という考え方に従って研究を進めてきた(藤田,2001)。学習指導要領では、経済計画は消費生活と関連づけられているが、今回はリスク対策の1つとしての金銭資源に注目し、一連の生活設計の学習の中に位置づけることを試みた。(1)生活設計において、経済的な視点から人の一生を見つめること、(2)さまざまな金銭資源について理解を深めること、(3)自分の希望するライフスタイルのために必要な準備について考えることを目的として、授業を計画・実施した。
        本研究ではその効果を検証し、今後の課題を検討することを目的とする。  

    2、方法
        授業は、本校国際コミュニケーション科1年生1クラス(41名)で実施した。科目は家庭基礎、実施時期は2016年2月である。
        「生涯の生活設計」の単元の指導計画は、(1)人生におけるリスクと生活資源の活用、(2)生活資源としての社会保障制度、(3)ライフコース別の家計シミュレーションの順で進め、その後本授業として(4)生活設計と金銭資源を実施した。単元のまとめとして、(5)男女共同参画社会について考える授業を実施した。
        本授業の流れは以下の通りである。(1)人の一生で、多額の資金が必要となるライフイベントを考え、その金額を調べる。(2)資金の準備方法を考える。(3)預貯金、ローン、保険の特徴と、三者を組み合わせて準備する必要性を理解する。
        授業実践後、生徒の振り返りの記述、定期考査の正答率などから、授業の効果を検討した。

    3.結果  
        主なライフイベントにどのくらいのお金がかかるかという問には積極的に答える生徒が多く、高校生が興味を持って取り組める内容であると思われた。生徒の感想には「保険には多くの種類があることがわかった」、「自分にとって必要な保険を考えることが大事」、「貯金がいちばん」などが挙げられ、貯金と保険に対する関心が高まったことがうかがわれた。「保険が資金準備の方法だとは思っていなかった」という感想もあり、目標とした「さまざまな金銭資源について理解を深めること」については、効果があったと考えられる。
        一方、定期考査の正答率をみると、金銭資源として「ローン」について正確に答えられた生徒が少ないことがわかった。
        このように、ライフイベントから学習を始めることは、生徒が興味を持ちやすく、経済的な視点から人の一生を見つめさせることに効果があった。しかし、保険には多くの種類があり、高校生にとってはわかりにくいこと、特に社会保険との違いがわかりにくいこと、またローンについてよくないイメージが強いことも明らかになった。
        今後の課題は、社会保険と私的な保険の関係を理解させるためにさらに指導法を工夫すること、そして限られた授業時間の中で、金銭資源の計画を生活設計の学習として位置付け、自分の希望するライフスタイルと関連させながら、各内容を統合し総合的に展開する方法をさらに検討することである。
  • 神山 久美
    セッションID: A3-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    <研究の背景と目的>
      消費者教育推進法の第11条第3項では、国や地方公共団体は、学校の授業その他の教育活動において適切かつ体系的な消費者教育の機会を確保するため、必要な施策を推進しなければならないとある。消費者庁では、「地方消費者行政推進交付金」の制度を設けており、地方公共団体の消費者教育推進に関する事業で用いることができる。近年ではこれを用いて、消費者教育に関する教材を作成する地方公共団体が増えており、家庭科で活用することができる教材も増加している。
       本研究では、地方公共団体の消費者教育の推進による教材作成の背景や動向を調査・考察し、その事例として、山梨県が小学校教員向けに発行した消費者教育の指導書の作成について報告を行う。
     <方法>
      地方公共団体における消費者教育の教材作成の背景や動向について調査した。小学校における消費者教育推進のために、山梨県において小学校教員向けの消費者教育の指導書を作成した。
    <結果と考察>
      消費者庁の「地方消費者行政活性化交付金」は2008年度補正予算で予算化され、以降2013年度までに累計約326億円が都道府県に対し交付された注1)。「地方消費者行政活性化基金管理運営要領」では、交付金の事業内容として7つの内容を設けているが、「6.地域社会における消費者問題解決力の強化に関する事業」の中に、学校における消費者教育の推進が入っている。
      「地方消費者行政活性化交付金」の利用状況では、最も交付額が多いのが「消費者教育・啓発活性化事業」であった2)。平成2014年度以降も「地方消費者行政推進交付金」として、消費者教育の推進事業への交付が継続している。近年、消費者庁「消費者教育ポータルサイト」での地方公共団体の消費者教育に関する教材登録数は増加しているが、これらの交付金の影響があると考えられる。
       山梨県でもこの交付金を用いて、2015年2月に小学校教員向けの消費者教育の指導書「はじめての消費者教育~小学校における指導のために~」を発行した。県内の全小学校に教材を配布し、さらに、県民生活センターのwebサイトから、教材をダウンロードできるようにした。山梨県は「やまなし消費者教育推進計画」を2014年に策定しており、この計画の重点施策の一つが「小学校期・中学校期・高等学校期における消費者教育の推進」であった。本教材はその計画に基づき作成されたものである。
      消費者行政が学校向けに発行する教材は、契約や悪質商法に関するものが多かった。しかし近年では、消費者市民社会の構築などに関する内容も少しずつ増えてきた。消費者教育推進法で消費市民社会の考え方が明記され、また消費者行政担当職員や消費生活相談員に「消費者教育の体系イメージマップ」が認知されるようになってきたことがあると考えられる。このイメージマップは「消費者市民社会の構築」など4つの重点領域が示されており、消費者教育の領域が広いことを理解することができる。
       筆者は、このような消費者教育の動向を踏まえて、山梨県の消費者教育に関する小学校教師用指導書の作成を行った。最初に消費者教育推進法やそれを踏まえた「やまなし消費者教育推進計画」を説明した。家庭科をはじめとした消費者教育に関連する小学校の教科等の学習指導要領を提示し、小学校で行われている内容と消費者教育との関わりを明示した。特に、消費者市民社会に関する内容を導入した。例えば、「買い物の社会的な意味」やフェアトレードに関する授業案、公正で持続可能な社会について考えさせるような情報の紹介などである。家庭科をはじめとした授業で活用しやすいように、内容を工夫した。

     <引用文献>
    注1)・注2) 総務省「消費者取引に関する政策評価:調査結果に基づく勧告」平成26年4月18日
  • 中学校家庭分野消費者トラブルの事例を通して
    村田 晋太朗, 永田 智子, 相川 美和子
    セッションID: A3-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    目的  
    現行学習指導要領解説では、「進んで生活を工夫し創造する」技術・家庭科の目標を達成するために、「生活者としての自覚をもち、日常生活の中から課題を見出し、解決を目指す活動を通して学習を深めていく」ことが明示されている。つまりは、「問題解決的な学習」を通して、「進んで生活を工夫し創造する」能力の育成を図ると言い換えられる。家庭分野における問題解決的な学習論として、荒井(2009,2013)の「実践的推論プロセス」が著名である。この理論は、丁寧に道筋を設計し、「何が問題か」を重視するという特徴が示されている。この理論を援用した実践を通じて、認知方略向上の側面からの有用性は確認されている(福田,2010)。だが、学習時における認知過程には着目されておらず、具体的な指導方略については課題が残っている。村田ら(2015)は、「実践的推論プロセス」を援用した実践を通して、生徒の「問題発見」段階の認知過程に着目し、「問題」の認識について明らかにした。そして、最終的な問題解決後の姿をイメージする「目標設定」の欠如により、「問題」を捉えにくい可能性を示唆した。そこで、本研究では、「目標設定」を追加した「修正版実践的推論プロセス」に基づいた実践を通して、問題発見段階における生徒の認知過程を明らかにすることを目的とする。
    方法
    荒井(2009,2013)の「実践的推論プロセス」を援用した実践(実践A)と「目標設定」を追加した「修正版実践的推論プロセス」に基づいた実践(実践B)とを比較し、「問題発見」段階における生徒の認知過程の差異を分析する。  
    実践A:H大学附属中学校2年生88名を対象。実施時期は、2015年7月。消費領域について教科書に沿って学習したのち、開発したワークシート(現状分析、問題特定、解決方法の検討、の3プロセス)に取り組ませた。  
    実践B:O府S市立中学校2年生105名を対象。実施時期は、2016年3月。実践A同様、消費領域について教科書に沿って学習したのち、開発したワークシート(現状分析、目標設定、問題特定、解決方法の検討)に取り組ませた。なお、実践Bでは、「問題」を「現状と目標との差異(ギャップ)」と構造的に認識させた上で特定させている。  
    実践A・Bともに、得られた記述を質的に分析し、認知過程の検討を行う。
    結果  
    実践Aでは、特定した「問題」と「解決方法」の間で、論理的に不整合な記述が見られた。一方、実践Bでは、「問題」と「解決方法」の間において、論理的に記述することができていた。  
    つまり、「現況分析」から直接「問題」を特定させるのではなく、「問題」を構造的に認識させた上で特定させることにより、論理性が一貫して維持されることが示唆された。 今後は、消費者トラブル(D領域)だけでなく、A~C領域における「問題発見」段階における認知過程を把握し、修正版「実践的推論プロセス」の汎用性を検証していく。
    引用文献
    文部科学省(2008)学習指導要領解説技術・家庭編,ぎょうせい
    荒井紀子編(2009)新しい問題解決学習 Plan Do Seeから批判的リテラシーの学びへ,教育図書
    荒井紀子編(2013)生活主体を育む 探究する力をつける家庭科,ドメス出版
    福田恵子(2010) 家庭科教育における問題解決学習の課題と学習方略 : 学習の転移に着目した問題解決プロセスの構造分析,日本家庭科教育学会誌,53(2), 71-81
    村田晋太朗、永田智子、相川美和子(2015) 「問題を見つける」段階における生徒の認知特性 中学校家庭分野消費生活領域における実践を通して, 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集第58回大会・2015例会
  • ―中学校家庭科での授業実践を基に-
    奥谷 めぐみ, 鈴木 真由子, 大本 久美子
    セッションID: A3-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
      発表者は日本家庭科教育学会第58回において、情報社会における生活課題に焦点を当てた中学校家庭科の授業開発・実践の成果を報告した。デジタルコンテンツの売買に焦点を当て、実物との契約の仕組みの違いを扱うことで、消費者としての自覚、権利意識の育成を図ることができた。 しかし、生徒の生活経験や家庭環境によっては、デジタルコンテンツを身近な商品として捉えられず、一部の生徒にとって理解が困難な題材となってしまったことが課題として挙げられた。
      そこで、デジタルコンテンツ購入のプロセスを動画化することが有効であると考えた。本研究では、ヴァーチャルな商品との関わり方を考え、市場における事業者側の意図について理解を促す動画教材の開発・評価を目的とする。

    【方法】
      K中学校の中学生第2学年118名を対象に、全2時間分の授業実践を行った。1時間目を平成27年11月24日(火)に、2時間目を12月9日(水)、12月15日(火)の2日間に分けて実施した。
       分析対象は授業前アンケート(平成27年11月)と、授業時のワークシート、グループワークの結果、授業後アンケート(平成28年2月)である。 授業のワークシートからは、動画から読み取れることや課題を話し合った結果を、事前と事後からは普段の消費行動と、デジタルコンテンツへの意識についての変容(回収数109名/回収率92.4%)について分析することとした。結果分析は、Microsoft Excel2013及びIBM SPSS statistic22.0を用い、アンケート及びワークシートの記述内容を分析した。

    【結果】
    (1)授業前後の消費行動とデジタルコンテンツに対する意識の変化
      デジタルコンテンツに対する意識と日頃の消費行動に関する9項目の質問を設定し、「全くそう思わない~とてもそう思う」の5段階で回答を求めた。授業前後において同一の質問を行い、t検定によって平均値を比較した。うち6項目に有意差が見られた。特に、顕著(p<0.001)に差が見られたのは「商品やサービスを購入する時、作っている人のことを考える」や「商品やサービスについての不安や疑問があった時、企業や消費生活センターに相談することができる」といった項目であることから、事業者と消費者との関わりに視野を広げ、事業者側の意図を知る必要性を認識できたと考える。
      また、「デジタルコンテンツにお金をかけることは良くないことだ」も肯定的な方向で変容があった。時間的、経済的に適切な情報技術との付き合い方を伝えるという点では、デジタルコンテンツ=悪としない、設問や内容に工夫が必要であったと考える。

    (2)動画教材から読み取られた特色と授業の評価
       ワークシートには、中学生に高額請求を受けた事例を挙げ、事例のみを聞いた状態でのトラブルの原因と、動画を見てから新たに考えた原因の2つの記述を求めた。事例のみの原因は「友人との競争意識」、「現金を使っている感覚がなかったから」等、消費者側の経験や感情に則した記述がみられた。動画からは「規約や確認画面、ペアレンタルコントロールの確認」や「ランクアップやゲームオーバー等プレイを続けさせたくなる仕組み」に関する記述がみられた。利用者側の問題だけではなく、サービスそのものにお金を掛けたくなる仕組みがあることに気付いていた。
       また、授業での説明は分かりやすいものだった88.1%(N=109)、動画は見やすいものだった89.8%(N=108)、動画は自分の生活に身近なものだった85.1%(N=108)と、授業理解に関する肯定的な評価は概ね8割を超え、動画教材が理解を促す一助になったことが伺える。  
       今後は、動画のポイント、問いかけ、解説等を加え、どのような教師でも利用でき、生徒の理解を促す仕掛けを持った動画教材に改善する必要がある。
      本研究は、JSPS科研費26381267の助成を受けたものである。 
  • 葭内 ありさ
    セッションID: A3-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに 本研究は高校家庭科においてエシカル・ファッションを題材に消費者教育を行い、外部連携や教科横断的試みによりアップサイクルを体験・発信することを通じて消費者市民的な視点の育成を試みたものである。  アップサイクルとは、不要になった物や素材をリサイクル(再循環)する際に、デザインなどの力によって元の物よりも価値や有用性を高めるリサイクルのことである。アップサイクルはエシカル・ファッションの要素の一つであり、実際に「エシカル商品」とされるファッションや生活雑貨の領域では、アップサイクルを手法としたものが多く見られる。  本実践は、2011年度より継続するエシカル・ファッションを用いた消費者教育の一貫であり、2014年度までの実践は、「文部科学省消費者教育推進のための調査研究授業」に採択され家庭科教育学会において発表済みである(葭内、2014、岡山大学/葭内、2015、鳴門教育大学)。2015年度の本実践は、科学研究費奨励研究の助成により行った。     実践では、高校2年生「家庭総合」でのエシカルテーマを「コーヒーとアップサイクル」とした。最初に春から秋まで、伝統工芸の体験や、サスティナブルコーヒーマイスターによる特別授業などを含んだエシカル・ファッションを題材とした授業を進め、エシカル消費への生徒の理解を深めた。その後、コーヒーの麻袋を用いた人気のアップサイクルブランド「KISACCO」と連携してアップサイクルを体験し、さらにスーパーグローバルハイスクール(SGH)指定科目の「国際協力とジェンダー」「経済発展と環境」など複数の「総合」との教科横断的な授業や、消費者庁、エシカル企業と連携することで、学習を深め、対外的な発信に展開させた。  「KISSACO」との連携ではデザイナーの岡本由梨氏と連携し、オリジナルデザインのアップサイクルのクラッチバックを作成した。これは、高校生の家の退蔵衣料と、通常は使用後廃棄されるコーヒーの麻袋を素材に作成したバックである。生徒は幼稚園の時に着ていた服などをアップサイクルした。完成したバックはSGHカリキュラムの一貫として訪問した台湾研修にて、「服と環境」や「途上国の教育支援」をテーマとした発表の一部として、本校提携校の台北市立第一女子高級中学の女子高校生と、本校の生徒とをモデルにエシカル・ファッションショーにて紹介した。さらに、消費者庁「倫理的消費調査委員会」関連事業であるシンポジウム「エシカル・ラボ」では、本校高校生が若者からのエシカル・メッセージを授業の様子を交えながら発信した。  学習の振り返りとして、アップサイクルショップ「pass the baton」を経営する企業、株式会社スマイルズ代表取締役の遠山正道氏による特別授業を行った。   実践は、生徒の自主的な活動につながり、授業終了後も、エシカル・ファションを用いた研究やコンテストへの応募、エシカル・ファッションを題材としたゲームアプリ作成、チャリティー販売など、エシカル消費を発信しようとする行動が相次いだ。昨年の日経ストックリーグ総合優勝に続き、本年度は、中高webコンテストでの経済産業大臣賞・プラチナ賞受賞などの成果も見られた。年度末のSGH報告会でも、生徒による同級生や下級生へ向けた発信が行われ、消費者市民的な視点が育まれ、広がりをみせる様子が伺われた。
  • 土屋 善和, 堀内 かおる, 千葉 眞智子
    セッションID: A3-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    1.本研究の目的 
      今日、学校教育において、21世紀型能力の育成が指向されており、その力の中核に位置付く「思考力」の1つとして批判的思考力が挙げられている。批判的思考力は、省察性や創造性を持ち、意思決定や問題解決を伴った実際の行動を決定づけていく力であることから、土屋(2015)は批判的思考力を、生活を創造するために必要な力とみなし、家庭科における学力の1つとして位置付けた。家庭科の学力である批判的思考力を育成するためには、どのような家庭科の授業を展開する必要があるのか。批判的思考を促し、批判的思考力を育む授業を検討するにあたり「相互作用」に注目した。「相互作用」とは、他者と関わり合うことであり、Ennis(1985)は、批判的思考の能力を実践的に活用する場面として捉えた。また道田(2007)は、「他者との出会い」により自分が気づかないことに気づき、考える幅を広げることができると述べていた。以上より、他者と関わり合う 「相互作用」が批判的思考を促す手立てとなると考えられる。
    そこで本研究では、「相互作用」によって批判的思考が促されることを明らかにするために、生徒の談話に着目した。本研究の目的は、「相互作用」における生徒の談話を分析することで、「相互作用」の中での生徒の関わり合いや生徒の思考過程を把握し、批判的思考を促すための「相互作用」の在り方を明らかにすることである。
    2.研究方法
    本研究は、2015年2月に高校2年生を対象にしたチョコレートを教材とした消費生活領域の授業を2時間実施した。本授業では、生徒が社会的な課題に目を向け、「消費者」としてこれからの消費生活について考えられるようになることをめざした。そのために、本授業では、2つの「相互作用」の場面を、「相互作用Ⅰ」「相互作用Ⅱ」として設定した。
    【相互作用Ⅰ】チョコレートに関わる消費者・生産者・企業がそれぞれ何を想っているのかをグループで思考した。相互作用Ⅰは、多様な視点から問題を捉えることで、チョコレートの背景にある問題の本質に迫るための活動として設定した。
    【相互作用Ⅱ】チョコレートの背景にある社会的な問題に対して高校生の私達ができることを思考した。ここでは、社会的な問題に対して自分達には何ができるのかを吟味・検討する場面として設定した。
    以上の2つの「相互作用」の生徒の談話を録音し、録音した談話を文字に起こして「相互作用」における生徒 の発言を分析・考察した。
    3.結果及び考察
    相互作用Ⅰでは、生徒は、消費者・生産者・企業といったそれぞれの立場から、チョコレートの背景にある児童労働が引き起こす問題や引き起こされた要因について追究しており、様々な思考を巡らせていた。児童労働が引き起こされる背景にある三者の関係性にも目を向けている班もあった。一方で、別の班では、話し合いを進める中で、班全体で同じ思考・視点になり、別の視点が入り込む余地がなくなってしまったことから、生徒同士の「相互作用」の限界も見出された。
    相互作用Ⅱでは、問題の解決方法について意見を出すだけでなく、出された意見が自分達高校生でもできることなのかを吟味・検討することで、実生活を想定して、自分の生活を振り返った上で可能かどうかという観点から考えを練り上げていく様子がうかがえた。相互作用Ⅱにおける議論が、批判的思考を促し自分達ができる範囲での実生活における消費行動を考えることにつながっていった。
    以上のように、「相互作用」では、生徒が関わり合うことによって相互に作用し、互いに影響を与え合う場面として設定されなければならない。したがって、生徒が意見を出し合うだけではなく、提示されたテーマやそれに関わる内容について議論をしていく中で生徒の思考が深まる「相互作用」が必要である。今回のような「消費者・企業・生産者」といった多様な視点から、また「私達高校生」といった「当事者」として吟味・検討できる内容であったからこそ、生徒は様々な思考を巡らし批判低思考が促されたと考えられる。
  • ―大学生の授業評価より―
    花輪 由樹
    セッションID: A4-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【研究背景と目的】近年スマートフォンなどの普及から写真撮影後、それをSNS上で共有するアプリが増えている。代表的なものには「過去の出来事を投稿して、友達に伝える」FacebookやInstagramがあるが、本研究では旅やピクニック、DIYなど「生活においてこれからアクションを起こす際にアイデアを集める」Pinterestに注目し、これを調理実習等の授業にどう生かせるか、またその課題は何かを探った。
    【方法】2015年9月~2016年1月に、関西地区のH大学における「ライフマネジメント実習」(90分×2コマ)にて、Pinterestを使用した授業を展開した。受講者は20名(4回生4名、3回生3名、2回生12名、科目履修生1名)おり、そのうち12名が中・高等学校家庭科教諭の免許取得を希望していた。15回の授業のうち昼食実習や、会食実習、エコグッズ製作においてピンタレストを使用した。本稿では期末テストで記載させたPinterestを使用した授業の感想についてみていく。
    【結果】期末テストの最後に採点外として、「今回のピンタレストを使用した授業について、①良かったこと、②課題と思うこと」について自由記述をさせた。受験者18名のうち16名の回答があった。 
    まず「①良かったこと」に関しては14名の回答があり、その内容を分析していくと、主に「情報共有できること」(6名)、「色々な画像がみれること」(4名)、「授業への関心の深まり」(3名)、「アイデアが得られること」(2名)について記載されていた。まず「情報共有できること」については、リアルタイムの共有がクラスに一体感をもたらすだけでなく、受講者以外の人々のアイデアを知ることもできたり、また個々人が良いと思ったアイデアを周囲に発信できるので、自身の考えの幅を広げることができるという意見がみられた。次に「色々な画像がみれること」については、レシピのリンクに飛ぶことができるので良かったという意見があった。そして「授業への関心の深まり」については、スマートフォンの使用で授業への関心が強まったり、授業に参加しやすくなったり、欠席しても授業を理解できるといった意見がみられた。最後に「アイデアが得られること」については、ピンタレストで探すことでいいアイデアがでてきたという意見や、文字ではなく画像で示されていることでアイデアが出やすかったという意見がみられた。
    一方「②課題と思うこと」に関しては14名の回答があり、その内容を分析していくと、主に「使い方の分かりにくさ」(5名)、「個人情報などの問題」(2名)、「授業でのさらなる多用」(2名)、「その他」がみられた。まず「使い方の分かりにくさ」については、興味をもった画像にピンをする方法や共有ボードの招待を受ける方法など基本操作が難しかったという意見がみられた。次に「個人情報などの問題」については誰のピンでも見れてしまうのが情報共有の面では良いことだがプライバシーを守れていないという指摘がみられた。そして「授業でのさらなる多用」は、ピンタレストをさらに多用できたら授業ももっと楽しくなるといった意見がみられた。最後に「その他」では、英語の記事が付随していることが多いので読めないといった指摘や、アプリや画像が重いといったこと、授業時に無駄にスマートフォンを使ってしまうこと、電池がないときや電波に速度制限がかかる時期にはつらいという意見、また今回はいなかったがガラケーを使用している人がいたら授業への参加が難しいといった意見がみられた。
    今後は機器をもっていない者には大学側からのタブレットやパソコンの貸し出しを利用するように指示し、電波は大学のWi-Fiの利用を促し、使い方に関しては基本操作の他に、写真の非公開・公開などプライバシー問題も含めてそのマニュアルを紙面で配布する必要があるだろう。
  • -手紙の分析を通して-
    安部 明美 , 工藤 由貴子
    セッションID: A4-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【目的】
    2011年4月、プロカメラマンやヘアメイクの有志によって「3.11肖像写真プロジェクト」が立ち上がった。被災した人たちに元気になってもらい肖像写真を残すこと、それを広く人々と共有して共感の輪を広げていくことが、その活動の目的である。本報告は、そのプロジェクトとの連携による家庭科の授業実践である。近年、自然や人とのふれあいをはじめとする体験等、子ども期に大切な学習の機会や場が得にくくなっており、参加体験型の学びが重視されている。このような学びは、身近にいる人との関係だけではなく、もっと広がりのある関係性においても構築できるはずであり、経験の少ない中学生には、自分の身のまわりの事象のみに限定するのでなく、広がりをもった社会を「体験し」「ふれあい」「つながる」体験をさせたい。本報告は、以上のような問題意識のもと、3.11東日本大震災の被災地居住の人たちと神奈川県の中学生とが交わした手紙の分析を通じて、間接的な関係性においても、適切なしかけによって、子どもたちが主体的にかかわり「ふれあう」ことを創る効果を生んでいるということを確認し、授業実践の効果を検証することを目的とする。
    【方法】
    1.分析対象 ,2014年度に中学1年生が被災地居住者に書いた手紙110通と2011 年12 月以降から2014年3月に至るまでに、筆者の勤務校に被災地居住者から届いた手紙76通。
    2.分析方法  手紙の文章全体を対象としてデータベース化し、キーワードを抽出。その後、キーワードを統合し、絞り込み、出現数10以上のキーワードをクラスター分析にかける。
    【結果】
    中学生の手紙は、5つのクラスターと77個のキーワード、被災地居住者の手紙は、4つのクラスターと81個のキーワードに分類された。それぞれのクラスター分析結果を通して、以下のことが明らかになった。1)中学生と被災地居住者共に、生きる希望、お互いを思いやる気持ちが入ったポジティブなキーワードが多い。体験を共有しながら、立ち直ろうという気持ちが双方にあると考えられる。2)中学生自身の学校生活や家庭生活を振り返りつつ、将来に対する夢や希望を語る、あるいは生活の中で大変と考えていることを吐露する言葉も見られる。3)震災で一命を取り留めた状況から立ち上がり、強く生き抜こうとする意思が被災地居住者には強く見られる。出現頻度数もかなり多い。そしてその思いは、周りの人々の支えがあるからだという感謝の気持ちにあふれている。手紙がその支えの重要な部分になっていると考えられる。4)中学生、被災地居住者共に、震災当時の恐怖等を思い起こしながらも、前向きに生きようとする共通する感覚がある。以上のことから、中学生と被災地居住者をつなぐ授業実践を通して中学生は被災地居住者と震災の記憶を共有する、あるいは気持ちを理解できていた。また被災地居住者も中学生と共通する感覚を持つことができている部分が多かった。よって、授業実践が、「ふれあう」ことを創る効果を生んでいるということが確認できた。子どもが生活場面での「経験」を、身についた「本物の体験」にしていくには、単発的ではなく、継続的な活動を行うことの重要性、子ども自らが主体的にかかわること、そのためのしかけが必要であることが示唆された。また、日常的にふれあえる対象のみでなく、離れたところにあるもの・人・こととつながることのできるしかけも有効であることが示唆された。子どもにとっては、多くの事柄が実際に体験できるものばかりではない、それらに対して如何に自分に関係のあることとして当事者性を持たすことができるかを考えていく必要がある。
  • 熟練教師と初任教師の比較を通して
    磯﨑 尚子
    セッションID: A4-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー


    【研究の目的】
       教師教育におけるパラダイム転換と言える研究知見が提案され、その考え方が解釈され、実践化がなされている。それらは、L. Shulman(1986)が学習論の研究から提唱した新しい教師知識と、D. Schönが専門職の研究から提唱した反省的実践家(reflective practitioner)の教師像である。特に、前者の教師知識は、教職の専門性の樹立を標榜する教育改革運動に対する高まりがきっかけとされている(佐藤・岩川・秋田,1990)。本研究は、L. Shulmanの提唱する教師知識のうち、特に授業を想定した教材化に関する知識(pedagogical content knowledge:以下、PCK)について、中学校家庭科の熟練教師と初任教師の教師知識の比較研究を通して、その内実を明らかにすることを目的としている。

    【研究の方法】
       本研究では、公立中学校に勤務する、教職経験20年以上の3名の家庭科教師と教職経験10年未満の4名の家庭科教師(内2名は講師)に対して、半構造的面接法を用いて実施した。調査時期は、2013年から2014年である。半構造的面接法においては、まず、被験者にL.Shulmanの教育学的推論の概要と、特に翻案の4つの過程(準備過程、表象過程、選択過程、適合・仕立て過程)の解釈について説明し、各過程において「教材化の過程で行うこと、及び留意する点」について質問した。
       半構造的面接法で得られた発話プロトコルについて、1文ごとにどのような教師知識(PCKを除く6つの教知識である、教授内容に関する知識、一般的な教育学的知識、カリキュラムについての知識、学習者と学習者の特性についての知識、教育的文脈についての知識、教育目標・価値、哲学的・歴史的根拠についての知識)が含まれるかを分析した。分析に際しては、数量的なカテゴリーの分析とプロトコルによる質的な分析を行った。

    【研究の結果】
       分析の結果、まず、熟練教師の有する6つの知識の量は、初任教師よりもすべて多いこと、また、熟練教師は、知識量も初任教師に比べ多いだけでなく、複数の知識を組み合わせて、教材化を行っていることが明らかとなった。これは、PCKの本質が、複合的で構造化された知識であることの証左である。また、翻案の4つの過程において用いられる知識の量も、熟練教師の方が各過程で多かったが、表象過程に関しては、他の3つの過程における知識量よりも両者の量的違いの差が小さかった。
       質的分析結果について、翻案の4つの過程それぞれについて検討した。準備過程では、熟練教師は、生徒の家庭での実態を把握し、学習指導要領を読みこなし、多くの知識を活用して授業を計画している。つまり、熟練教師は、学習指導要領の趣旨と生徒の実態の理解を基盤に授業を想定して教材化と授業を立案している。表象過程では、熟練教師と若手教師で知識の量が最も差がなかった。しかし、プロトコルを検討すると、初任教師が教材の提示の仕方に関する知識が中心であったのに対し、熟練教師は生徒の意欲を高めたり知識を定着させたりする工夫をしていることが明らかとなった。選択過程では、熟練教師は学校の研修課題などを意識した授業になるような流れを考えていることが明らかとなった。適合・仕立て過程では、熟練教師も初任教師も授業のねらいを考えて仕立てているが、熟練教師の方がより具体的なねらいを有し、授業で終わるのではなく、家庭で実践させることを意識していることが明らかとなった。

    【文献】
    Shulman, L. S. (1986). Those who understanding: Knowledge growth in teaching, Educational Researcher, 15(2), 4-14.
    佐藤学・岩川直樹・秋田喜代美.(1990).教師の実践的思考に関する研究(1):熟練教師と初任教師のモニタリングの比較を中心に.東京大学教育学部紀要,30,177-198.

  • 寺本 愛
    セッションID: A4-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
      家庭科教師において求められる教師像を意識し、効率的に日々の授業実践や授業研究、研修などを通じて実践的指導力を向上させていくことが必要である。しかし、家庭科に関する研修の具体的な内容についての検討や、研修についての研究は十分になされていないのが実状である。本研究では、家庭科の授業づくりに関して、求められる研修の在り方の方向性をつかみたいと考え、特に授業経験の少ない若手の家庭科教師や教科担任制でない小学校の家庭科の授業づくりにおいて、どのような力に着目し、どのような研修内容を実施することが、より効果的であるのか、実際に即して検討を試みることを目的とする。
    【方法】
      学習指導要領や教科書に示される内容に対して、改めて課題意識を持つことを授業づくりの出発点とした場合、「なぜこの教育内容」が取り上げられ、「どのように教える」ことが適切なのであろうか、という問いを立てることになる。教師自身が教育内容を深く理解し学習者がわかるようにつくり換え、授業を介して教えることが必要となる。このつくり換えについては、教授学的変換といわれ、ドイツをはじめ諸外国の教授学で探求が進められている。我が国でも諸外国の教授学についての検討がなされているが、本研究では、長谷川榮(1995・2008)や三村和則(1987)高村泰雄(1972)大野(2014)らの論の展開を参考にし、教授学的変換を意識化する手立てを研修に取り入れることで教師自身の的確な教材選定や授業づくりの力へつなげられると考え、具体的な研修会での実証を行った。研究協力が得られた京都府T地区自主研究グループの研修において、平成26・27年度に実施された2年間12回のうち「みそ汁の調理」を対象とした5回の研修において、教授学的変換に係わる手立てを導入し、授業づくりについての参加教師の反応を分析することでその有効性について検討した。分析データは、研修の様子のビデオカメラによる記録や参加教師の発話や研修中及び研修後に記述したノート等の記録によった。
    【結果・考察】
      平成26年度は、調理実習や授業を想定した研修にみそ汁の調理方法や手順等を提示しないといった教科に関する必要な情報に制限を設ける手立てを仕組んだ。そのような調理実習を含む研修後、参加教師の交流を行った。分析の結果、参加教師は細部にまで既存の知識や技術について、学習者を意識しながら教育内容を捉える姿が見られ、教授学的変換の原理導入の有効性が認められた。
      平成27年度では、「みそ汁の調理」の授業計画を組み立てることを中心に授業過程を動的に検討する研修を実施した。教授学的変換の教授的正当化や教授的還元の作業を組み込んだ演習を行った。その結果、研修中の参加教師の発言には教授学的変換の要素が多くみられ、授業づくりについて理解できたとの評価を得た。このように、教師自身の的確な教材選定や授業へ活用する力を促し、自律的な授業計画、教材研究の力につながることが実践から明らかになった。
    本研究から、家庭科の授業づくりに有効な研修の在り方として、次の3点を挙げる。まず、研修参加の動機付けとメンバー構成である。今回の研修会では中堅教師と若手教師からなる構成で、参加教師の主体性に委ね、参加教師が自由な発言ができる雰囲気であった。2点目は今回実践したように、参加教師が主体的に問いを立てながら実習や演習に取り組む際に教授学的変換を促す手立てを工夫して取り入れること、3点目は今回実践には至っていないが、教授学的変換の理論を理解する研修内容を同時に組み込むことも効果的ではないかと考える。
  • 山本 亜美, 永田 夏来, 村田 晋太朗
    セッションID: A4-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    1.研究の背景及び目的
    本研究の目的は、中学校家庭分野における「家族」教育を対象とした実践論文より、教育評価についての現状と課題を把握し、俯瞰的な見取り図を得るための基盤を作ることにある。教育評価に注目することで、教員の「家族」教育に関する授業の傾向を明確にし、課題を見いだすためでもある。そのための手がかりとして、全国中学校技術・家庭科研究会の機関誌『理論と実践』に掲載された家族教育に関する実践論文のテキスト分析を行い、家族教育のメカニズムについての検討を行う。今日、家族の在り方について、家庭科教育ではどのように実践が求められているかという議論がなされている。本田(2009)や高橋(2015)においては、「家庭が大切だ」という学習指導要領や教科教育の方向性に対する、批判的立場が読み取れる。家庭科教育の領域においても、片田江(2010)は、家庭科教員が抱える実践課題の背景を明らかにし、濱崎(2013)においても、「家族」知のリアリティ構築を目指すために、その捉え方の転換を促す実践の可能性を示した。これらの「家族」教育の問題点として、他領域からの印象や個別の背景事例研究に留まっている点である。そこで、永田ら(2015)の調査では、GTA理論に基づき、実践論文のテキスト分析を行っている。分析では、27のカテゴリーに分類され、また、「生徒に求める資質・能力」に関する記述、「内容」に関する記述、「生徒の成果」に関する記述の3つからなる構造があることがわかった。そのため今回の分析では、27のカテゴリーのうち、「評価」に関するカテゴリーに着目し、「家族」教育の現状と課題を把握することで、一般的なレベルでの課題を明らかにすることを目的とする。

    2.研究方法
    全日本中学校技術・家庭科研究会の機関誌『理論と実践』を分析対象とした。その中でも今回は、現行学習指導要領期2009年から2014年に発行された中に掲載されている19本の実践論文を対象に、テキスト分析を行う。具体的には、GTA理論に基づき、テキストをカテゴリー化する。次に、「評価」に関するカテゴリーに着目し、各論文における「評価の目的(診断的評価、形成的評価、総括的評価)」、「評価の方法」、「評価規準(なにを評価したか)」「評価基準(どのような姿を根拠に研究成果としたか)」の観点で解釈を行うために、分析シートを作成し、解釈を行う段階と、二段階で分析を行う。

    3.結果と考察
    GTA理論に基づき、『理論と実践』に掲載されている19本の実践論文を分析した結果、「授業のテーマ」、「授業形態」、「生徒への指示」、「評価」、「教師の視点」、「その他」の6つの類型、計27カテゴリーに分類することができた。そのうち、「評価」に関するカテゴリーについては、「評価の対象」、「評価の材料」、「評価の段階(診断的評価、形成的評価、総括的評価)」、「生徒の変容」のカテゴリーに分類できた。また、「評価」に関するテキストについて分析シートによる分析の結果、「評価基準」の根拠となる要因において、「家族」教育の課題を見出すことができた。その根拠としては、(1)学習指導要領解説編及び教科書、(2)専門家やゲストティーチャーの指導・助言、(3)教師の既有知識、(4)教師特有の家族観、などがあげられる。
    今後は、「評価基準」の根拠となる要因について検討を行う予定である。
  • -ポイントムービーに着目して-
    有友 愛子
    セッションID: A4-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    目的
     本校中学部の家庭科では、生徒の学びを共有するためのツールとしてデジタルポートフォリオを軸とした授業のデザインに取り組んでいる。調理実習では、タブレットPCの授業支援アプリを活用した生徒同士の意見交換とその内容を加えたポイントムービーの作成を組み込むことで、協働的な学びを通した思考力や判断力の高まりと、効率の良い調理の進め方や調理技能の上達を目指した見方や考え方が促されたことを報告している(2015)。しかし、食材の調理上の性質等科学的な視点での思考や判断、学習の理解が課題であった。そこで、ふり返りの学習で「下級生に紹介したい調理のポイントムービー」をテーマとした学習を設定した。見方や考え方を成長させ学びを深めるためのICT活用として、調理のポイントムービーの蓄積の中から下級生に紹介したい動画の編集に取り組み、科学的な視点での思考・判断や学習の理解について検討することにした。
    方法
     調理実習のふり返りにおいて、(1)紹介したい内容をグループごとに考える、(2)お互いのグループの内容について意見を出し合う、(3)紹介したい内容を整理する、(4)整理した内容に適したポイントムービーを選択し編集するという流れで学習を展開した。調理手順、食材の調理上の性質、安全・衛生・環境への配慮、その他の4つの項目を軸として、意見交換やポイントムービーの編集に取り組ませた。ポイントムービーの編集はタブレットPCの動画編集アプリで行った。編集を終えたポイントムービーは、デジタルポートフォリオに組み込んで活用する他、ネットワーク接続ストレージに保存し、様々な情報機器からアクセスし用途に応じて自由に活用できるようにした。意見交換でまとめられた内容、生徒が編集したポイントムービー、質問紙調査の結果から、思考力や判断力、学習の理解について検討した。
    結果
     調理実習の導入として、デジタルポートフォリオに組み込まれた上級生が作成したポイントムービーを視聴して調理実習で気をつけたいことを考えた際と、ふり返りの学習として、下級生に紹介することを目的としてポイントムービーの編集のために意見交換を通して考えをまとめた際の調理手順、食材の調理上の性質、安全・衛生・環境への配慮、その他の4つの項目の記述を比較した。その結果、導入の学習では安全・衛生・環境への配慮等に関する内容が40.0%であったが、ふり返りの学習では調理手順や食材の調理上の性質に関する内容がそれぞれ35.7%に増加していた。食材の調理上の性質に関する内容は、導入では林間学校の経験や上級生のポイントムービーから得られた内容が中心であったが、ふり返りでは「塩をつけておくと鮭から水分が出るからキッチンペーパーでとる」「肉を焼くと縮んで浮き、火が通りにくくなるからしっかり菜箸で押さえる」等、食材の調理上の性質と関連付けた具体的な内容への変化が見られた。調理実習のふり返りとして意見交換やポイントムービーの編集に取り組んだ感想を分析すると、活動の内容が60.0%、学習の理解が20.0%、まとめ方が13.3%、客観的な意見が6.7%であった。この結果を他の題材のふり返りとして下級生へのアドバイスをデジタルポートフォリオにまとめる活動の結果と比較したところ、活動の内容や学習の理解に関する割合が高い傾向が見られた。素材となるポイントムービーを作成した上でふり返りの学習として下級生に紹介したいポイントムービーの選択や編集に取り組むという段階を設定したり、蓄積されたポイントムービーの中から意見交換の内容に適したポイントムービーを選択したりと、生徒の思考を深化・拡大させることを意図した授業をデザインが効果的であり、思考を可視化するツールとして動画の活用が有効であった。直接体験を「学ぶ・伝える・つながる」ことを目指した取り組みで、ポイントムービーを素材として視覚的に表現する活動においても、生徒の主体的な学びが促され、思考力・判断力・表現力の向上や学習の理解につながることを確認できた。
  • OECDとの共同による次世代対応型指導モデルの研究開発の一環として
    大竹 美登利, 藤田 智子
    セッションID: B1-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    背景と目的:文部科学省は1998年の学習指導要領から「生きる力」の育成を掲げ、「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」を目指し、「思考力」「判断力」「表現力」という教科横断的スキル育成を重視してきた。これらに一定の成果はあったが、思考力や判断力のとらえ方が教師で異なったり指導力がばらつく問題もあり、アクティブラーニング重視の学習指導要領改訂も進められている。
    こうした中で教科横断的スキル・キャラクターの育成課題を分析することは、OECDが構想するEducation 2030のビジョンに貢献すると考える。そこで東京学芸大学は「OECDとの共同による次世代対応型指導モデルの研究開発」プロジェクトを立ち上げ,各教科の授業分析を行い、日本で育成されるコンピテンシーとOECD Education 2030で提案される21世紀コンピテンシーとの関係を吟味し、その育成を構造化した21世紀型指導モデルの開発をめざす。
    本報告ではその一環として行った小学校家庭科のみそ汁の授業を分析し、そこで育まれるスキルとキャラクターを明らかにする。

    方法.教科教育担当の大学教員23名が授業で育成されるスキルやキャラクターを提案し、それをKJ法で15に絞った後、小学校教員500名を対象としたweb調査で、各教科で育成されると考えるスキルやキャラクターを抽出した。.家庭科授業研究会のメンバーによる協議で、育成すべきスキルやキャラクターを育む授業計画を立てた。.授業計画にそった授業実践をビデオ収録し、プロトコルや子どもの取り組み姿勢を分析し、そこで育まれたスキルやキャラクターを明らかにした。5年生3クラスを対象に、各クラス前方、広報、教師の動きと8班のうちの6班の子どもの様子を計9台のカメラで撮影し分析した。また、単元後に各クラス6人の児童ならびに担当教師をインタビューし、分析に加えた。なお本報告では資質能力の育成が明示的に表れた一人をとり取り上げる。

    結果及び考察.汎用的スキルは「(ア)批判的思考力」「(イ)問題解決力」「(ウ)協働する力」「(エ)伝える力」「(オ)先を見通す力」「(カ)感性・表現・創造の力」「(キ)メタ認知力」が、キャラクターは「(ク)愛する心」「(ケ)他者に関する受容・共感・敬意」「(コ)協力し合う心」「(サ)より良い社会への意識」「(シ)好奇心・探究心」「(ス)正しくあろうとする心」「(セ)困難を乗り越える力」「(ソ)向上心」が抽出された。評定平均値が高い傾向にあった家庭科で身につくキャラクターは、他教科の比較では(サ)のみで、家庭科の中では(ウ)(オ)(カ)(コ)(シ)(サ)であった。
    .各2時間続き3回を単元としたみそ汁の調理を対象とし、1次は試し調理で、班で話し合って煮干しやみその量を記録して調理し、最後に各班の味比べをする。2次では味噌や出汁の働きを確認するため、煮干しと味噌の量などを変えた4種類に限定して飲み比べさせる。3次では2回の授業をふまえて班ごとに最もおいしいと考えるみそ汁の作り方で調理した。
    .典型的に取り組みが変化した児童Aには以下のような姿がみられた。1次では話し合いで「分からない」を連発し、自分の意見を他者から否定されると「そ~」と言って引き下がり、積極的に関われなかったが、他の班のみそ汁と飲み比べをして、みそ汁の作り方のポイントに気づき始めた。2次の4種類のスープを飲み比べで、味のポイントを理解し、班でみそ汁の作り方を話し合う場面では、班員の意見が分かれた時に調整するなどリーダーシップを発揮し、積極的に関わっていた。3次では煮干しのはらわたをとる作業で手分けして行うことを提案したり、率先して味噌を溶くなど、自信や積極性が表れていた。またインタビューでも煮干し以外の出汁の違いに関心を示し、自分でみそ汁を作る意欲を述べるなど、好奇心や探究心が育成されていたことが確認できた。
  • ―炊飯学習の再発見として―
    岡部 雅子, 堀内 かおる
    セッションID: B1-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈研究の目的〉
      小学校家庭科の教科書には、汎用性の高い基本的な手順や知識と、個々の状況により加減が必要な時間等のめやすが記述されている単元が多いが、子どもたちはそれらを区別して読み取ることができず、すべて教科書に書かれたとおりに行えばうまくいくと考えている。
      そこで本研究では、炊飯の単元において、実習を通して学んだことや、自分の経験から言えることを、自分たちの言葉で表現し、教科書の炊飯のページに吹き出し型に付け加えていく形でまとめて、オリジナルの教科書ガイドを作ることを試みた。そして、子どもたちにどのような炊飯のときにもあてはまる内容と、状況によって加減する必要のある内容とが書かれていることに気づかせたいと考えた。その後グループで、作ったガイドをもとに「どんなごはんが炊きたいのか」という思いを共有し、それらを実現する具体的な方策を考え、次時の実習に臨ませた。そうすることで学習がより子どもたちの生活に生き、考えながら実践し続ける態度につながると考えたからである。こうした活動を通して、教科書を子どもたちの生きた教材として使いこなす方策を探ることを本研究の目的とする。

    〈方法〉
      授業実践は国立大学法人附属小学校5年生3学級において平成28年2月に行った。そのうちA組(児童数32名)での実践を報告する。単元名は「いつものごはんを見直そう」で、授業数は全10時間、授業の流れは次のようである。
    ・「いつものごはんとは」について考え、話し合い、学習課題を確認する。(1時間)
    ・ビーカーと文化鍋で炊飯をする。(各2時間)
    ・実習したことなどをもとに、グループでオリジナル教科書ガイドを作る。(2時間)
    ・オリジナル教科書ガイドを発表しあい、次時のおにぎり作りに向けて自分たちの作戦を立てる。(1時間)
    ・作ったガイドを生かして炊飯をし、おにぎりを作る。(2時間)

    〈結果と考察〉
      単元の導入では、「いつものごはんとは」について考えさせた。考えを交流する中で、子どもたちは、ごはんの炊きあがりを左右する炊飯の要素がさまざまあること、また、おいしさの基準は人によってちがうこと等に気づいた。その上で単元を通して「どうすれば自分の思い通りのごはんが炊けるのか」を追究することを確認してから、2回の調理実習を行った。
      単元最後のおにぎり作りの実習の前に、炊飯の実習を通して学んだことや自分の経験から言えることを、自分たちの言葉で表現し、教科書の炊飯のページ(開隆堂「小学校私たちの家庭科」pp.46-47)に吹き出し型に付け加えていく形でまとめて、グループで一枚のオリジナル教科書ガイドを作った。ガイドの吹き出しには、米や水のきちんとした計量、洗米の仕方、浸水時間の保障といった汎用性の高い知識に関する追加記述のほかに、水の量や火加減の調節など、自分の思いや米による違い等によって加減する必要のある作業があることについての記述が見られた。また、まとめのおにぎり作りの実習時には「どんなごはんが炊きたいか」という思いと具体的な方策を考えて臨んだグループがほとんどであり、これまでの実習に向かう姿勢との違いが見てとれた。
      このように、教科書をカスタマイズして作ったオリジナル教科書ガイドは、あいまいさや加減の要素を併せ持つ生きたテキストになり、教科書を教材化する有効な方策であるということができた。
    (なお、本研究は、小玉亮子お茶の水女子大学教授と堀内かおる横浜国立大学教授との共同研究の成果の一部である。)
  • 望月 朋子, 河村 美穂
    セッションID: B1-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    研究目的

    DeCeCoによるキーコンピテンシーが世界的な注目を集め、教育現場では関連した科学的リテラシーの育成が急務の課題とされている。PISA調査(2003)では科学的リテラシーを「自然界および人間の活動によってつくり変えていった自然の変化について理解し、意思決定できるために、科学知識を駆使し、問題を見分け証拠に基づく結論を引き出すことのできるような能力」と定義している。家庭科では、教科として成立して以来、生活を科学的に理解し、科学的知識を応用しながら生活を営むことを目指してきたが、PISAが定義したこの科学的リテラシーでは、十分に生活を科学するということを説明できないと考えられる。

    そこで、本研究では家庭科における科学的リテラシーを「自然界および人間の活動によって変化した自然や生活、社会状況について理解し、必要に応じて意思決定するために、文化的、社会的、自然科学的な知識を活用し、自らの生活に即して問題を見分け、証拠に基づき生活がよりよくなるような結論を導く能力」と仮に定義する。本研究は、実際の調理実習の授業において文化的、自然科学的知識を学んだ生徒が、どのようにそれらの知識を捉えているのかということを生徒の授業記録を対象として探究し、明らかにするものである。

    研究方法

    対象とした授業は2016年1月~2月に実施した静岡県東部公立中学校2年生2クラス84名(男子44名、女子40人)「ちらしずしを作ろう」である。本研究では、授業前(2016年1月)と授業後(2016年2月)の2回に同一の質問紙調査を実施し分析データとした。調査項目は、以下の通りである。(1)食文化に関する設問(1問):どんなときにちらしずしを食べると「おいしい」と感じるか。それはなぜですか。(2)食品科学に関する設問(2問):①さやいんげんをゆでてからざるにとって水にさらす理由について書いてください。②うす焼き卵をきれいにつくるために大事だと考えること書いてください。いずれも生徒に自由記述させ、それぞれの設問の記述についてカテゴリーを生成、分類して検討を行った。

     

    結果と考察

    設問(1)の「どんなときにちらしずしを食べるとおいしく感じるか」では、授業前には、行事、ひなまつり、お祝いのときが44人で、授業後には57人であった。その理由として、「ひな祭りのときにだいたい食べるから」、「お祝いするときに食べる料理だから」等行事の時に特別に食べる記述や「親せきなど、みんなが集まったとき」といった大勢で食べる場面を想定した回答が増加していた。

    設問(2)「さやいんげんをゆでたあとに水にさらす理由」には、授業前の回答は、「色が鮮やかに、濃くなる」4人、「食感がよくなる」14人、「わからない」42人であり、授業後はそれぞれ60人、10人、4人であった。

    設問(3)「うす焼き卵をきれいにつくるために大事だと考えること」についての記述を分析したところ、授業前はとき卵をなるべくうすくひくというような「うすさ」に関することが29、こがさないように気をつける「焼き加減」に関すること21、「火加減」に関することが15であった。授業後は、卵を全部ではなく、何回かにわけてやくというような「うすさ」に関すること43、こげないように注意したという「焼き加減」に関すること24、卵を焼く温度を保つという「火加減」に関すること31、であった。記述総数は調理実習後に増加していた。以上のことから、調理実習を通しても食文化について理解可能であること、調理科学についてはゆでて水にさらすと色が鮮やかになる「さやいんげん」について理解しやすいこと、一方でうすやき卵を作ることに関しては、科学的な理解よりも作る手順をより必要なものとして学ぶことがわかった。
  • 小林 裕子, 永田 智子
    セッションID: B1-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】
       自然災害大国と呼ばれる我が国において、児童生徒に対し実践的かつ継続的な災害学習の実施は必要不可欠である。本研究の目的は中学校家庭科で災害時の食を扱った学習の開発、実施、評価を行うことである。前回の報告(小林、永田2015)では研究の第一段階として、中学生に災害に関する質問紙調査を実施した。その結果、食料を数日分備蓄している家庭は3割程度に過ぎず、災害時に水や食料の確保が不安だと答えた生徒が6割を上回っていた。また社会の中で広がりを見せる従来の「非常食」から保存のきく日常食を災害時に活かす「災害食」への転換や、「ローリングストック法」の考えはまだほとんどの中学生が知らないことが分かった。そこで次の段階として「災害食」を題材とした課題解決的な学習を開発し実践することとした。 【開発した学習】
      開発した学習は3時間で構成され、B食生活と自立(3)ウの「食生活についての課題と実践」に位置づけた内容である。この題材の目標は「災害時の食生活に関心をもち、課題をもって災害時の調理活動と献立作成を体験することを通して、災害時に備えた食品の備蓄を工夫して計画を立てて実践できること」である。この目標に沿い、学習の構成は、1.生徒が災害時の食生活に関心をもち課題を見つけ、どのような解決方法があるかを知り考える 2.災害時を想定した「災害食」の調理実習を実施し、体験活動から工夫や学びをさらに深める 3.平均的な家庭の備蓄食品から災害時の一日分の献立を栄養バランスにも配慮して考え家庭での実践につなげる という展開とした。3ではB(2)イの献立学習内容を押さえながら家庭での備えの改善につながるよう工夫した。
    【学習の実践】
       実践は兵庫県公立中学校2学年の生徒5クラス164名を対象に、2016年2月に行った。  第1校時の授業はパワーポイントを使用して行った。南海トラフ地震の被害想定と日本が自然災害大国であることの確認から入り、災害時の食生活の課題にはどんなものがあるか各自で考え、発表をして意見の共有を行った。次に日常的に保存のきく食品を備蓄しながら使い回す「災害食」の考えや、その実践方法として「ローリングストック法」が推奨されていることを学習した。従来の乾パンやアルファ米のように使わず備えておく「非常食」より、「災害食」は賞味期限切れの無駄がなく、味も普段から慣れているので合理的でよいという感想が大半を占めていた。  第2校時は災害時を想定した調理実習を行った。使う食材は保存食品のみ、水の使用は調理と洗い物含め各班2リットルに制限、ガスコンロは使用可とした。献立はポリ袋炊飯で作るわかめご飯とツナ缶を肉の代わりに使用したツナじゃがとした。栄養面で6つの基礎食品群をすべてカバーした献立である。炊飯時間が20分と短く洗い物も出ず、なおかつ食味も炊飯器で炊き上げたものとほぼ変わらないと生徒に大変好評であった。食器にラップを敷き洗い物を減らす体験も行った。被災地から生まれた節水になる工夫のすばらしさに感心している様子が伺えた。  第3校時は班活動とした。平均的な家庭の備蓄食品を各食品群別に分け一覧にしたプリントを配布し、まず各自で災害時の一日分の献立を栄養バランスも考慮して考えた。それを班単位で組み合せ1週間分にまとめるという活動を行った。その後、献立を立てる際に不足した食品や使用しなかった食品を挙げ、災害時の備蓄の課題を再度見直し、どのように改善していけばよいかを具体的に考えた。  今後は、授業で生徒が記入したワークシートの感想や自己評価、アンケートなどを分析し評価を行う予定である。
  • ―種子島の中学校家庭科におけるキビナゴ手開き実習の導入―
    福留 奈美, 黒光 貴峰
    セッションID: B1-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】
    日本の食文化の特徴のひとつに魚食文化がある。地域で獲れる魚を季節ごとに調理・加工の工夫をして食べてきた伝統があるが、肉の消費機会が増え、サーモン等脂ののった骨がない切り身や輸入魚を消費する傾向が強まっている。
    本授業開発および実践の目的は、1) 日本人の伝統的な食文化のひとつとして地域の魚を自ら調理しておいしく食べるための知識・技術の習得、2) 魚食を通して地域の食文化の特徴を知り、地域への愛着や誇りに思う意識を育てること、3) 地域内全中学校実施に対する地域の期待と課題抽出、以上3つである。
    本授業は、調理実習で敬遠されがちな丸のままの魚としてキビナゴを用いた点、地域とのつながりを授業に組み込むために地域で活動する食生活改善推進員に学校ボランティアとして参加いただいた点、魚食の要件として欠かせない鮮度のよい魚の調達に地元の漁業協同組合の協力をあおいだ点等で、地域の食文化に焦点をあてた地域に開かれた授業展開の試みを含んでいる。  

    【方法】
    ■対象クラス: 種子島の中学2年生5クラス計147名。内1クラスは授業研究のための公開授業とした。
    ■指導計画: 3学期(1月末~2月)に家庭科調理実習「魚を調理しよう」1時間(50分)の中で実施した。同授業は、前年度までのサーモンのムニエルに代えて、地元で水揚げされた生のキビナゴを手開きして蒲焼きにするメニューとした。実習1週間前の事前学習の時間に、地域でよく獲れる魚の種類、キビナゴの知識、魚料理の種類、キビナゴ手開きの動画確認、調理の手順確認等を行った。実習当日は、実習の注意点と流れの確認、キビナゴの手開き実演、各台に分かれて生徒1名につきキビナゴ4尾の手開き個別指導、フライパンで蒲焼き作り、試食、片づけ、評価シート記入、2-3名の発表を実施した。
    ■分析対象:生徒への事前事後アンケート調査、家庭へのアンケート調査、漁協担当者へのインタビュー、参加した学校ボランティアへのアンケート調査、授業研究参加者へのアンケート調査、種子島の他地域の保護者・学校関係者へのアンケート調査を実施した。
    ■授業開発研究としての準備・協力:学校長への授業実施の説明および生徒・保護者へのアンケート調査実施の許諾依頼、家庭科教員と協力した指導案作成、食生活改善推進員の学校ボランティア参加調整、鮮度のよいキビナゴを確実に当日手配するための漁協との協力連携調整を行った。  

    【結果】
    ・キビナゴの手開き実演と個別指導は、食生活改善推進員2名と教員1名の計3名で行った2クラスと、教員1名のみで行った3クラスがあった。
    ・調理実習に参加した生徒のキビナゴの手開きに対する自己評価は、よくできた(28.6%)、できた(47.6%)、あまりよくできなかった(19.7%)、まったくできなかった(2%)であった。まったくできなかったと答えた生徒は教員1名のみで手開き指導をしたクラスであった。
    ・キビナゴの蒲焼きを家族に作ってあげたい/ぜひ作ってあげたいと答えた生徒は計70.1%であった。あまり作りたくない/作りたくないと答えた計18.5%の生徒の多くは、手開きで手がくさくなって嫌だったと答えた。
    ・手開き指導を行った学校ボランティア6名からは、もう少し時間が欲しかったという要望が多くでた。
    ・漁協関係者、学校ボランティアの本授業に対する評価は非常に高く、他地域の保護者・学校関係者においても本授業で取り上げた内容に対する関心の高さを確認できた。
    ・授業観察を行った家庭科・理科担当教員5名は、同様の授業実施が自校で可能である/難しいができる可能性はあると評価した。  

    【まとめと今後の課題】
    ・サーモンのムニエルをキビナゴ手開きと蒲焼き作りに代えて行った調理実習は、漁協や学校ボランティアの協力により他校でも実現可能性の高い授業となった。
    ・今後種子島全島の中学校(3校)の実施を目指す中で、授業時間の拡大に合わせた授業構成、地域との連携の仕組み作りなど課題抽出ができた。
  • ―富山県の高校生の実態調査から―
    中川 寛大, 堀内 かおる
    セッションID: B1-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善において」(2008)では、家庭科の関連事項として「衣食住にわたって伝統的な生活文化に親しみ、その継承と発展を図る観点から、その学習活動の充実が求められる」と明記された。つまり、食文化を学ぶ意義として、食文化の伝承・継承と食文化の発展・創造が挙げられる。食文化は時代や環境などに応じ常に変化し、未来に向かって進化していくものであり、食文化の発展・創造に向けた家庭科の授業デザインは、今後の課題として重要であると考える。本研究では特に魚食に注目した。日本の食文化をみると、魚介類と大豆が主要なたんぱく源として利用されてきた。魚介類は捕り尽くさなければ、持続的に得ることができる食料資源である。富山県は富山湾に面し、他の都道府県と比較して魚介類の消費量は多いが、近年その消費量の減少が指摘されている。そこで本研究では、富山県の高校生の魚食の実態や食文化への意識などを把握することにより、魚食文化の発展・創造に向けた家庭科の授業デザインを検討するための基礎資料を得ることを目的とする。
    【方法】 富山県立高等学校3校に通う生徒506名(男240名、女266名)を対象に、2016年1月~2月にかけて質問紙調査を実施し、491名から回答が得られ(有効回収率97.0%)、統計処理された。
    【結果と考察】
    1.魚食の実態 魚介類を食べることの好き嫌いについては、「好き」が80.4%と高率であり、魚介類を食べる頻度は、「週に2~3日」が59.5%と最も高かった。魚介類を食べることの好き嫌いと魚介類を食べる頻度とのクロス集計から、魚介類を食べることが好きだからといって食べる頻度が増えるわけではないことが示唆された。普段よく食べる魚介類の種類は、サケが最も多く、サバ、ブリ、アジ、イカの順番で多かった。内食、中食、外食それぞれにおいて、肉類を使った料理と魚介類を使った料理とではどちらが多いか尋ねたところ、中食と外食では肉類を使った料理が多く、内食では中食・外食と比較して魚介類を使った料理が多くなる傾向が明らかになった。
    2.魚介類に対する意識 「魚介類を食べることは、日本の食文化である」に「そう思う」と回答した生徒は95.3%、「魚介類を食べることを次の世代にも伝えていきたい」に「そう思う」と回答した生徒は92.7%であった。「魚介類を食べることは、日本の食文化である」と捉えている生徒は、それを「次の世代にも伝えていきたい」と考えていることが示唆された。「魚介類は資源である」に「そう思う」と回答した生徒は89.2%、「魚介類を乱獲していないか気になる」に「そう思う」と回答した生徒は73.5%である一方、「魚介類の育成・漁獲・流通過程について関心がある」に「そう思う」と回答した生徒は37.1%であり、魚介類は資源であり、乱獲してはいけないと捉えながらも、実際には魚介類の育成・漁獲・流通過程を注視しない現状が示唆された。
    3.学校で食文化を学ぶ意味 学校で食文化を学ぶ意味として、「食文化に関する知識を習得するため」が51.5%で最も高く、次いで「食文化に関心をもつため」が48.8%であった。高校生は食文化を学ぶ意味を知識の習得や関心をもつことと考えていることが明らかになった。一方、「食文化を発展させ、新しい食文化をつくり出していくため」が3.5%と低率であり、食文化を学ぶ意味として、食文化の発展・創造がほとんど意識されていないことが示唆された。男女間では、「食文化に関する技術を習得するため」で男子が有意に高率であり、「食文化に関する知識や技術を日常生活にいかすため」、「食文化を受けついで伝えていくため」では女子が有意に高率であった。
     今後の課題は、本調査をもとに魚食文化の発展・創造に向けた高等学校家庭科の授業をデザインし、授業実践を行い、その有効性を検証することである。
  • -教員養成系大学生と小学校教員との比較から-
    小谷 教子, 冨田 道子, 松岡 依里子, 齋藤 美保子, 石垣 和恵
    セッションID: B1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
       1995年以降,国際連合(以下、国連とする)の「人権教育のための国連10年」や「人権教育のための世界計画」の策定にみられるように,国際社会において個々人の多様性を理解し尊重する意識の高まりのなか共生の視点が強く求められている。
        近年の日本に目を向けると,2006年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」に2014年批准書を寄託し,2013年に文部科学省が制定した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」は2016年4月1日から施行されている。本法律には多様なニーズを持つ児童,生徒,学生に対し教育現場における合理的配慮が詳細に示され,国公立学校においてはこの配慮が義務化された。現在,学校現場の教員を中心に広がりつつある「授業のユニバーサルデザイン(以下、UDとする)」の取り組みも合理的配慮の1つであろう。しかし,日本全体の共生意識を高めるためには,学校教育現場の場合,多様なニーズを持つ当事者のまわりにいる児童,生徒,学生や教職員といった学校全体の共生意識の育成も課題と捉える。
       そこで研究者らは,教員をめざす学生を対象とした「共生」「人の多様性」の理解を深めるための家庭科UD学習手引書による授業実践を行った。本調査結果と,先に小学校教員を対象にした同授業実践結果(冨田,松岡2015)とを比較しながら,教員養成に関わる大学の家庭科の授業に本UD授業を導入する効果を検討することを目的とする。
    【方法】
       教員養成に関わる大学で,UD手引書のなかの「UDって何?」の90分授業を行った。これは,学生が身近なUD製品に触れ,各製品にどのような配慮がなされているかをグループで話し合い,最後にクラスで交流しながら,UDへの関心を高め,人の多様性について考える授業である。この授業の前後にUD知識・意識調査を行い,事前事後の項目間の差異をみるためにt検定を行った。授業後の感想は記述内容を類似した回答ごとに分類し,数量的把握を行った。調査対象者は,東北,関東,関西,中国,九州地方の教員養成に関わる国立・私立大学および短期大学の学生196名であり,授業実施時期は2015年10月~2016年2月である。
    【結果】
    1 UD知識 事前事後調査
      UD授業の前後に実施したUD知識調査12項目についてt検定を行ったところ,すべての項目について0.1%水準で有意に差があったことが明らかになり,UD知識が一定量増えたことが示された。
    2 UD意識 事前事後調査
       UD授業の前後に実施したUD意識調査13項目についてt検定を行なったところ,すべての項目で有意差があることが明らかとなった。とりわけ,0.1%水準で有意なものは9項目あり,1%水準で有意なものは1項目,0.5%水準で有意なものは2項目であった。これまで無意識に利用してきたUD製品・サービス等が,身近なところに浸透していることに気づき,UDの意味や考え方を理解できたことが明らかになった。加えて,UD普及率の地域格差や,学校環境や教育におけるUD視点の必要性を感じたことが明らかとなった。
    3 感想の記述内容の分析
       学生は,UDが小・中・高等学校での既習内容となっていながらも,身近な製品・サービス等を取り入れた体験的な学習であったことから,UDの意味や誰のためのUDかを深く理解し,UDの必要性を自身にひき寄せて考える記述が多くみられた。
    4 小学校教員との比較検討
       UD意識の事前事後の変化を見ると,調査対象者が小学校教員(30代以上),大学生のいずれであってもすべての意識項目で有意差があることがわかった。しかし,その詳細を見ていくと,教員よりも大学生の方が授業後の意識の高まりの度合いが大きいことが明らかになった。青年期の特徴ともいわれる感受性の高さや社会的意識の高まりが相まって,本授業が彼らの「共生・人の多様性」への理解を深め,社会を客観的に捉えられたことが結果から推察される。
  • 指導者の違いに着目して
    速水 多佳子
    セッションID: B2-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【目的】
    家庭科は生活全般を学習対象としており、限られた時間数の中で幅広い内容を取り上げて授業を実践していかなければならない。特に住居領域については、他の領域と比較して授業時間数が少なく、扱いが低調であることがこれまでに報告されている。その理由としては、学習素材が教室に持ち込みにくく、指導に必要な教材や資料が不足していること、生徒の興味・関心が低く、そのために教員にとっても手応えがなく指導を敬遠する要因となっていることなどがあげられる。
    近年、学校における教育の情報化が推進されている。ICT活用により、生徒の学習意欲が高まることや効率的に教材を表示することで、時間を有効に使えるようになることが報告されている。住居領域の指導上の課題を解決する方法の一つとして、ICTを効果的に活用することがあげられる。ICTによって学習対象を教室内に取り込んで生徒に提示することができ、興味・関心を引き出すことが可能となることが考えられる。そこで、ICTを活用した住居領域の授業案を作成し、高等学校において実践を行って、その効果を検証することを目的とした研究を行った。その中で、同じ教材を使用した授業を教員経験の異なる2名の家庭科教員に実践してもらい、指導者によって、授業の前後で生徒にどのような意識の違いが出るかに着目して分析を行った。
    【方法】
    住居領域の授業は、県立A高等学校普通科1年生「家庭基礎」において、8クラス301名(男子158名、女子143名)を対象に、平成27年1月から2月に各クラス5時間ずつ行った。授業を担当した家庭科教員は、約20年の経験がある授業実施校専任の家庭科教諭と週に3日間勤務している非常勤講師の2名である。この2名の教員が4クラスずつを担当し、専任の教諭が担当したクラスをA(男子82名、女子70名、計152名)、非常勤講師が担当したクラスをB(男子76名、女子73名、計149名)として、クラス間の違いを比較した。授業は教科書とプリントを用いて、ICT機器(電子黒板と書画カメラ)を部分的に活用しながら行った。住居領域の授業前後における生徒の意識を、アンケート調査を実施して比較した。調査内容は、住居領域の学習内容の理解度と学習意欲、住居領域に対する意識(重要度、興味・関心、役立ち感等)についてである。
    【結果】
    学習内容の理解については、教科書に太字で書かれている語句を抜き出し、使用頻度の高いものを内容ごとに分類して20項目を選び、それぞれについて5段階(詳しく説明できる、ある程度説明できる、少しは知っている、聞いたことはある、知らない)で尋ね、平均値と標準偏差を算出した。すべての項目で、学習による理解の深まりが見られ、特に「動線」「コレクティブハウジング」「起居様式」の数値が上昇した。学びたい内容については、同じ20項目から複数回答可で選択を求めたところ、授業前後ともに、「地震対策」「快適な住居の条件」が多かった。
    住居領域に対する印象を5段階(とてもそう思う、そう思う、どちらとも言えない、あまり思わない、思わない)で尋ねたところ、「興味・関心がある」は、授業前の平均3.38から授業後3.57、「今後の生活で役立つと思う」も、授業前4.15、授業後4.23と上昇し、特に役立ち感は授業前の段階から強い。
    教員による違いをAとBのクラス間で比較すると、学習内容の理解と学習意欲は、授業前の段階でAクラスの方が全体的に数値は高い傾向が見られたが、各クラスを授業前後で比較すると、どちらも同程度の違いであった。しかし、住居領域に対する意識(他と比べて重要、興味・関心、役立ち感)については、Aクラスは授業前後で高まりが見られたのに対して、Bクラスは変化が見られなかった。
  • 飯野 由香利
    セッションID: B2-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    研究の背景と目的】 
       先行研究1)で、家庭科の教員は家庭科室、調理室、被服室及び普通教室を使用して授業を行うことができることから、これらの教室の方位や階数の相違を活用して住環境の実験実習を行えることを示した。
       本研究では、家庭科で使用する物品や身近な物を活用した実験実習を実践し、その有効性を示すことを目的とする。

    方法と結果
    1)住教育の現状と実験
       2015年6月に新潟県のA・B市における中学校と高校の家庭科教員に私共が作成した住領域に関する教材を発送し、教材に示している原理及び実験に関してアンケートに回答していただいた。39部を回収し、回収率は29%であった。
       アンケートから得られた家庭科教員が指摘する住領域を教える上での問題点は、「家庭での実践が難しい」39%、「良い教授方法を示す資料や情報がない」32%、「住実習ができない」26%であった。一方、対策は、「興味・関心が持てるような教材」69%、「生徒が体感できる実習」59%、「身近なことを取り入れた内容」54%、生徒が「興味・関心の持てる実験方法」46%であった。これらの結果から、生徒が興味・関心の持てる教材や体感型実習の提示が求められており、家庭実践に繋げるためには身近なことや物品を取り入れることの重要性が認められた。そこで本研究では、家庭科の授業で使用している物品や生徒にとって身近な物を用いる住環境実験を考案することとした。
       次に、新潟県内で使用されている家庭科の教科書における住領域の内容について小・中・高校別に分析した結果、快適な室内環境の内容が多かった。教材中に示した熱・光・空気・音環境の原理や実験方法に関して、教員が実践していない原理または実践しにくい実験として挙げられた割合を見ると、光環境実験が77%以上、次いで音環境実験が62%以上で高かった。これらの実験で実践しにくい理由として、光環境実験では「材料が用意しにくい」、「材料費がない」、「時間内にできない」が21%と最も高く挙げられ、音環境実験では「材料が用意しにくい」が50%で最も高かった。これらのことより、材料は手軽に手に入り、準備が容易にできるものが重要であることが分かった。そこで、家庭科で使用する物品や生徒にとって身近な物を使用して光環境と音環境の授業を実践し、理解度について分析した。
    2)光環境の授業実践
       2014年12月に新潟県M市立K小学校18人を対象に光環境の授業を行った。学内に設置されている身近な人工照明器具の写真を示しながら、光環境について説明した結果、生徒は発光原理、照明方式、配光及び室内の雰囲気への影響などを理解し、興味がわいたことを確認した。また、製作活動を通して「境界線で曲がって進む」といった光の屈折特性についての理解度が66%以上と高かった。
    3)音環境の授業実践
       2015年11月に新潟県M市立N中学校120人を対象に音環境の授業を行った。身近な紙コップやつまようじ及び糸を組み合わせた糸電話を使用して音の伝搬について体感した。さらに、家庭科で使用するミシン、ボール、泡だて器、すり鉢とすり棒などを使用して発音し、音の3要素の可視化を行った。授業前の理解度を見ると「何も知らない」が40%と最も高く、「音速」と「音の3要素」を除く他の項目は20%以下と低かったのに対して、授業後には「空気伝搬音」と「固体伝搬音」を除くほとんどの項目の理解度は27%以上になった。また、家庭科で使用する物品の利用について生徒に尋ねたところ、90%が「身近で分かりやすい」、87%が「使った方が良い」と回答した。 

    参考文献
    1)飯野由香利:家庭科住領域の授業における校舎利用の可能性と体感型授業の有効性の検討、日本家庭科教育学会第58回大会研究発表要旨集、pp.36~37、2015年6月
       なお、本研究は科学研究費助成事業(基盤研究(c) 課題番号26350065 代表者 飯野由香利)の研究助成を受けました。
  • 杉浦 淳吉, 三神 彩子
    セッションID: B2-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    住生活は私たちの生活の根幹となるものである。しかし、身近である一方、各家庭によって居住環境が異なることから指導が難しいのが現状である。リフォームの必要性や、それが省エネルギーにどうつながるのかという理解の促進は、中等教育における家庭科で取り上げる課題であるが、実際の家庭科教育の現場に目を向けてみると、小川ら(2014)の東海四県の中学校および高校の家庭科教員を対象とした調査からも、住生活分野が十分に扱われていない実情が浮かび上がってくる。 一方、日本の住宅ストック戸数約6、060万戸(2013年)の内、国の定める断熱性能を満たしている住宅の割合は約5%しかない。無断熱の住宅では、年間の暖冷房のためのエネルギーが国の定める断熱性能基準を満たした住宅に比べ約2.5倍も必要となる。また、断熱性能の低い住宅では、暖房している部屋としていない部屋の温度差が大きくなり、冬の「ヒートショック」や夏の「熱中症」などの危険性が高まることが指摘されている。 そこで、本研究では、中学校・高等学校の家庭科補助教材として、ゲームを通して住環境の抱える問題点や改善方法を知り、省エネ・健康・快適な暮らしを実現することを主眼に住宅リフォームを題材にしたゲーム・シミュレーション教材として『住宅リフォームすごろく』を開発し、家庭科教育での活用について検討することとした。開発は、住宅や省エネ及びゲーミング・シミュレーションの専門家らにより共同で行われた。 本教材では、ゲームを用いた問題解決の手法「ゲーミング・シミュレーション」を取り入れ、ゲームで問題意識を持たせてから、次に具体的説明をすることで生徒の関心を引き出すことを目指した。問題構造をゲームで表現することで、参加者はルールに従って役割を演じながら、問題と解決方法を学習していくことができる仕組みとなっている。また、ゲームを行った後にディブリーフィングというプロセスを経ることで、さらに学びを深めることができる。本教材ではゲームシステムとして双六を用いているが、双六は学習者にとって馴染みやすいだけでなく、実社会で体験すれば長時間かかるプロセスをフローチャートによって短時間に追体験することができる特徴を持つ。 住宅リフォームすごろくは、4名1組で行い、ゲームボード、6種類の住宅リフォームカード、コマ、サイコロ、ポイント記入表からなる。ゲームボードには「問題認識ゾーン」、「住宅リフォームゾーン」、「問題解決ゾーン」、「行動改善ゾーン」、「地球環境ゾーン」の5種類のゾーンが設定されており、「リスクの認識からその解決へ」というストーリーが展開される。学習者はスタート時に100ポイントをもち、各ゾーン・マス目でのイベントで上下するポイントを多く保持した者が勝利する。問題認識ゾーンでは、既存住宅における様々なリスクを学ぶ。住宅リフォームゾーンでは、認識された問題からポイントを支払ってリフォームするかどうかの意思決定を行う。問題解決ゾーンでは、各自のリフォームの有無をもとにリフォームの効果を学習する。行動改善ゾーンでは、リフォームだけではなく、一人ひとりが省エネ行動をとることの有効性を学習する。最後の地球環境ゾーンではゲーム内で体験してきた個人のミクロな行動と地球レベルのマクロな環境問題との関連を学習する。 ゲームには、住宅リフォームと省エネルギーに関する教師用解説書があり、住居、環境、省エネなどに関する知識を得やすいよう工夫がされている。現在、学校教育をはじめ広く住生活教育関係者へ活用の呼びかけを行っており、中学・高等学校の家庭科などの授業でも実践の取り組みが進んできている。実践報告や活用事例も含め、教材の意義と普及への取り組みについて報告することとする。
  • ジェンダー観、生活主権者意識を中心に
    荒井 紀子, 春貴 良幸, 村田 尚未
    セッションID: B2-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【目的】
    1994年度より開始された高等学校男女必修家庭科が2014年で20年目を迎えた。1999年には男女共同参画社会基本法が制定され、男女が共に学ぶ家庭科は定着した。この間、日本社会は、少子高齢化が進み、保育や介護などの生活問題が顕在化するとともに、震災を背景に、持続可能な生活や共生社会への関心が高まっている。その一方で、2単位科目「家庭基礎」の履修校が増加し、学習時間の減少によって高校生が家庭科を学ぶ機会が削られている現実もある。
    本研究では、男女必修家庭科の開始年、10年目、20年目の調査をもとに、高校生の意識・実態について、生徒のジェンダー観や生活主権者意識を中心に比較・分析し、変化の特徴を明らかにするとともに、その背景や課題について考察する。
    【方法】
    福井県、長野県、京都府を中心に、進学系、職業系の計5~10校の高校生を対象に、ほぼ同一の質問項目を用いて、約10年ごとに質問紙調査を実施した。これら3つの調査:1994年調査(荒井・鶴田)、2003年調査(荒井)、2014年調査(荒井・春貴・村田)の結果をもとに検討する。
    調査項目は、基本属性(性別、学科、履修科目、希望進路、両親タイプ)と意識・実態(ジェンダー観、自立意識、生活実践度、生活主権者意識、家庭科の教科観・学習観)である。このうち、生活主権者意識(市民性)については、消費者意識、政治への関心、社会活動参加意識の3点について尋ねた。調査校については、ほぼ同様になるよう設定している。
    【結果と考察】
    1.ジェンダー観については、ジェンダーにとらわれない傾向を示す割合は、性別でみると全ての項目で女子の方が高く、その傾向は、いずれの調査にも共通している。経年変化でみると、ジェンダーにとらわれない傾向は2003年度調査が最も顕著で平等意識が高まっている。1994年と2014年はほぼ同様の程度を示しているが、ジェンダーバイヤスの意識をはっきり示す生徒の割合は減ってきており、特に男子にその傾向がみられた。
    2.身の回りのことや家事にかかわる生活実践度は、いずれの調査でも男女ともに低い。性別では女子の実践度が男子よりも高いがその差はわずかであり、性別にかかわらず日本の生徒の親任せの実態は変わっていない。経年変化をみると、女子は食事づくり、衣服選択のいずれも低下傾向にあり、男子は若干実践度が上昇している。
    3.自立意識では、男子の自立にとって家事、育児ができることが重要と回答する男子の割合が増加し、また政治への関心や市民のマナーについても自立にとって重要とする割合が男女ともに増加している。男女必修家庭科は、特に男子の意識や実践に影響を及ぼしているといえる。
    4.社会活動参加意識は、経年的に見て、全体的に高まっており、特に女子が積極的で、市民性(シティズンシップ)の芽生えがみられる。2つの大震災を経て、高校生が以前より地域や社会の生活に目を向ける傾向がでてきていると考えられる。
    5.家庭科を「身辺処理や家事を学ぶ教科」というより「生活について総合的、実践的に学ぶ教科」と捉える生徒が増加している。生活を多角的に捉える家庭科への理解度が上がっていると思われる。また、家庭科を学ぶことによって暮らしへの関心が高まったと肯定的に捉える割合が男女ともに増加する傾向がみられた。
     ジェンダー意識が2003年調査をピークにやや低下傾向がみられること、生活実践度が低いままであることは、家庭科の履修単位減による授業時間数の減少も関係していると推測される。しかし、その一方で本調査では生徒のジェンダー観や自立意識、衣食住の実践、市民性・生活主権者意識は相互に密接に関連しあっていることが示唆されており、これらの知見を生かしたカリキュラムや学習方法の構築が課題であると考える。
  • ―家教連京都サークルの活動についてー
    井上 えり子, 唐津 育子, 田中 任代
    セッションID: B2-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    目的:本研究は、1973年4月に始まり1994年3月まで継続された京都府立高等学校の男女共修家庭科について、関係資料を収集整理するとともにその全容を解明し、その歴史的意義を明らかにすることを目的としている。 
    これまで、共修実践を牽引した京都府立高等学校家庭科研究会(以下、府立研究会)の活動の解明を中心に、「資料保存と府立研究会の組織体制について」(2012年12月例会)、「府立研究会の指導資料について」(2013年)、「到達目標の作成について」(2014年)、「女子のみ「家庭一般」(通称「残家」)について」(2015年)を発表してきた。 
    本報告では、これらに引き続き、家庭科教育研究者連盟(以下、家教連)の京都サークル(以下、家教連京都サークル)について取り上げる。家教連京都サークルは府立研究会の教育研究活動を推進していく上で大きな役割を果たしていたと考えられ、その活動の全容と共修実践における役割を明らかにすることを目的とする。
    方法:筆者らのうち田中は1974年から、唐津は1980年からの家教連京都サークルのメンバーであり、長く活動に携わってきた。これらの経験と家教連京都サークルの夏季学習会資料などの関連資料を用いて、活動の全容と共修実践における役割について検討する。
    結果:1962年に京都市立堀川高校定時制の安田雅子らによって京都サークルが結成された。1966年8月に家教連が発足し、1967年に安田、1968年に池田悠子、森幸枝らが家教連の会員となった。1971年12月には家教連京都支部第1回総会が開かれ、京都サークルは家教連に合流、家教連京都サークルとなった。 同サークルでは、月1回の例会と年1回の夏季学習会が開催され、共修家庭科の自主編成や共修実践の内容、到達目標、家庭科の独自性や教科論について議論・検討された。とくに、夏季学習会では、府立研究会の当該年度の重要課題が検討された。そして、ここでの研究成果が府立研究会に反映され、1973年から始まった京都府立高校の男女共修家庭科を推進していくこととなる。 
    家教連京都サークルの活動は大きく4期に区分できる。Ⅰ期(1962~1981年8月)、Ⅱ期(1981年9月~1993年)、Ⅲ期(1994~2002年)、Ⅳ期(2003~2016年)である。各時期の特徴は、Ⅰ期は家教連京都サークルの結成と京都府立高校の男女共修家庭科の実施、Ⅱ期は京都府の教育行政の管理強化と男女平等教育実現へ向けた活動の高揚、Ⅲ期は1989年版高等学校学習指導要領改訂による男女共修家庭科の実施、Ⅳ期は1999年版高等学校学習指導要領改訂による2単位科目の設置とそれによる単位数の削減である。 
    Ⅰ期では、主として共修家庭科の自主編成に関する内容が検討された。とくに教科の独自性を明確にするため、男女共修「家庭一般」の到達目標を家庭生活の「しくみ」と「いとなみ」に分ける案がサークルで検討された点が注目される。森によると「しくみ」の中で科学的認識を形成し、「いとなみ」によって生活に生かす実践力を養うことを目指したという。そして、この案は府立研究会に反映された。  
    Ⅱ期では、教育行政により男子が家庭科を履修できないよう学校現場に圧力がかけられたが、これに屈しない家教連京都サークルの活動は共修家庭科を維持発展させる上で重要な役割を果たすこととなった。とくに、森は、サークル活動の中で、教科論、教科の独自性、学習指導要領の精査、男女共修家庭科の今日的意義、運動論、教師論などについて精力的に情報発信し、指導的役割を担った。 
    Ⅲ期とⅣ期では、社会科学的視点やジェンダー視点の重視、新しい教授方法の探求など、Ⅰ期Ⅱ期で培ってきた家庭科の教科論と実践を発展させる活動が行われた。いっぽうで、家庭科教員の多忙化や新規採用者の抑制などから、サークルメンバーの減少や固定化が課題となり、これまでの蓄積を次の世代に引き継ぐための活動も行われるようになっている。
  • 藤田 智子
    セッションID: B2-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【目的】
    「学習レリバンス」は、学習そのものを面白いと感じる「現在的レリバンス」と学習が将来役立つといった感覚である「将来的レリバンス」の2 つに分けて捉えることができる。両者のレリバンスがあった場合、男女とも継続的な学習を促進する意識が高い(本田2004)。つまり、小中高等学校での家庭科の学びにレリバンスを感じているかが、その後の家庭科教育の内容に関する学習意欲、すなわち進路選択に影響を与えると考えられる。
    男女共修家庭科を学んできた大学生たちの学習経験および、家庭科教育のどのようなことに意義を感じているか、家庭科の学習レリバンスの構造を明らかにするとともに、その後の進路選択に違いがあるかを明らかにするため、大学での専攻による違いを分析することが本研究の目的である。

    【方法】
    男女共修家庭科を学んだ大学生に対して、アンケート調査を行った。本研究の目的に合わせて分析できるよう、教員養成系教育学部家庭科専攻の学生、教員養成系教育学部家庭科以外の専攻の学生、家政学・生活科系学部の学生、その他の学部の学生の4つのカテゴリーに合わせて対象者を選定した。
    教育学部生および家政学・生活科学部生は、対象者が限られることから、これらの大学に所属する教員に協力をお願いし、質問紙調査を行った。調査の時期は2016年1月~2月である。教員を通して質問紙を配布し、授業時および個別に回収した。配布数は1,008名で有効回答数は946名であった(有効回答率93.8%)。
    主にその他の学部生を対象にweb調査を行った。web調査は(株)マイボイスコムにモニター登録をしている学生に対してメールを配信して回答してもらった。調査の時期は2016年2月9日~12日である(有効回答数300名を目安に打ち切り)。メール配信数4,665名、有効回答数336名、有効回答率7.2%であった。
    質問紙調査とweb調査を合わせた有効回答のうち、大学での専攻または性別が不明な者を除いた1270名を分析の対象とする。対象者の詳細は、教育学部家庭科専攻255名(女性232名、男性23名)、教育学部家庭科以外の専攻504名(女性369名、男性135名)、家政学・生活科系学部231名(女性229名、男性2名)、その他の学部280名(女性175名、男性105名)である。

    【結果】
    まず家庭科の学習経験について、調理実習、被服製作実習は経験したことのある者が9割以上であった。ロールプレイング、ふれあい体験学習、ディベート、ゲーム、実践課題などは全体として経験がない者が多かったが、家庭科専攻の学生は、比較的経験割合が高かった。家庭科専攻に進んだ学生の方が多様な学習内容や学習方法を経験している、または経験したことを覚えているといえる。教育学部の家庭科専攻以外の学生と家政学・生活科学系の学生では大きな差はみられなかった。
    次に、家庭科に対する学習レリバンスについて、「好きだ」と「そう思う・どちらかといえばそう思う」割合は全体で約85%であったが、「そう思う」割合を大学での専攻別に見ると、家庭科専攻の学生は約80%であるのに対し、家政学・生活科学系の学生は約5割、家庭科以外の専攻とその他の学部の学生は約3割と大きな差があった。「役に立つ」と「そう思う・どちらかといえばそう思う」割合は全体で約90%で、「そう思う」者の割合は、家庭科専攻の学生で高く、その他の学部の者は低かった。「おもしろい」と思うかについては、「そう思う・どちらかといえばそう思う」割合は全体で約85%であったが、「そう思う」割合については、「好き」「役に立つ」と同様の結果であった。
    教育学部家庭科専攻に進む学生は家庭科に対する学習レリバンスが非常に高い。一方、学校教育に対する価値を重く置いていると考えられる教員養成系教育学部の家庭科専攻以外の学生や、家庭科教育とのつながりが深い専攻と考えられる家政学・生活科学系の学生はそれほど学習レリバンスが高くなかった。しかし、全体としては、家庭科に対して肯定的に受けて止めていた。
  • 森田 美佐
    セッションID: B2-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【目的】
    本研究の目的は、子どものいる働く女性(ワーキングマザー)が、学生時代にもっていた将来の職業生活や家庭生活についての知識、考え、経験と、現在の働き方を明らかにした上で、職業生活と家庭生活におけるジェンダー平等のために、家庭科でどのような学びが必要かを検討することである。

    【方法】
    調査対象者は、末子が小学生までの女性雇用者1000人とし、調査はインターネットリサーチ会社を通してWEB調査を行った。調査項目としては、学生時代のこととして「将来の職業生活や家庭生活の知識、考え、経験」「将来のライフコース」、現状として「現在のライフコース」「経済的自立意識」、属性として「年齢」「学歴」「子ども数」「雇用形態」「年収」等をたずねた。

    【結果】
    1. 30代までは、中・高卒の人はその他の人よりも、学生時代に雇用形態について詳しくなかったが、
    現在は非正規雇用に就いている割合が高かった。一方、40代以上、中・高卒、大卒・大学院卒のいずれかに当てはまる人で、学生時代に、将来の自分のライフコースに何らかの理想があった人は、なかった人よりも、現在は正規雇用に就いている割合が高かった。

    2.短大・専門学校・高専等卒と大卒・大学院卒の人は、高卒の人よりも、学生時代に、将来の職業キャリアに対して主体的に考え行動する傾向が見られた。

    3.学歴や年代に関係なく、学生時代に、近代家族の概念に基づいた家庭生活を送ることが理想と考えていた人は、そうでない人と比べて、現在でも「夫の収入が高ければ仕事をやめたい」と考える傾向が見られた。

    【考察・結論】
    第1に、高校生までに家庭科で、非正規雇用の働き方や生活を知る機会を更に増やす必要があると思われる。本研究では、非正規雇用で働くワーキングマザーの割合が、大卒以上よりも中・高卒に多い傾向が見られたが、彼女たちが高校生までの段階で、非正規雇用についてあまり知らない傾向は軽視できない。

    第2に、高等学校において、女子生徒が、いかなる形態であっても将来の働き方や生き方を具体的に描く学習が必要だと思われる。高校生の段階から、将来どのようなライフコースを選びたいのかを考えることは、子どものいる働く女性の、不本意ながらの非正規雇用の選択を防ぐ可能性もあると思われる。

    第3に、現状は子育てしながら働く女性でも、彼女たちが学生時代に性別役割分業意識をもっていると、女性側に、夫婦が共同で家計を運営する意識や個人単位としての経済的自立意識は育ちにくいと考えられる。女性が自身の就業継続は夫の経済力次第と考えるならば、たとえ女性の就業率が上昇しても、女性が主体的に職業キャリアを描く機会は制限されるばかりでなく、男性も「稼ぎ手役割」から解放されないだろう。

    家庭科は、男女が性別役割分業意識にとらわれない生き方についての学習を提供してきたが、それでも性別役割分業を肯定する若年女性は存在している。女性が社会に出る前に、「どのように生きたいか」「その夢の実現にはどうすればいいのか」を考えることと同時に、「その生き方は相手の生き方の幅(自由)を狭めないか」も考えることが、ジェンダー平等の実現には重要と思われる。
  • 大本 久美子, 松岡 依里子, 齋藤 美重子, 望月 一枝, 川村 めぐみ
    セッションID: B3-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    [研究目的]

    近年、キー・コンピテンシーやリテラシー、21世紀型スキルなど様々な名称の「資質・能力」が注目されている。また国際的な教育課程改革の動向を見ても知識伝達型ではない、「資質・能力」育成型のカリキュラムが推進されている。我が国においても学習指導要領次期改訂に向けて「学力の3要素」や「21世紀型能力」に基づき、資質・能力の育成をふまえたカリキュラムマネジメントなどの議論が現在盛んに行われているところである。

    家庭科は長年、「生活をより良くする知識や技術や態度」を探究してきた。現行の学習指導要領では家庭科の目標を「人間の生涯にわたる発達と生活の営みを総合的に捉え、生活を創造する能力と実践的な態度を育成する」としている。つまり「生活を創造し実践する力を育む」教科として、知識の提供だけではない、様々な資質・能力を育む学習を積み重ねてきている。また90年代に入り、男女共修で学んでいることの意義は大きいが、急速に進む社会の変容に対応して、これからの家庭科教育ではどのような資質・能力を身につけさせることが必要なのだろうか。

    荒井(2005)は「生活主体を育む家庭科カリキュラム」の中で、市民を育む4つの学習課題と、技術・技能、認知、情意の3領域で能力の大枠を捉え、各領域別に家庭科で育みたい具体的な能力を提案し実践例を報告している。大本ら(2010)は、「高校家庭科におけるシティズンシップ教育」において、シティズンシップを図る4つの力(自己管理力、生活設計力、人間関係形成力、社会参画力)を提案した。また堀内(2015)は、「21世紀型能力」の観点から「生活を批判的に捉え、客観的、多面的に思考する批判的思考力」、「社会と関わる力」、「人生を学び実現する力」等を提案している。本研究ではこれらの先行研究や海外の事例に学びながらグローバル社会に着目した高等学校家庭科で育成したい資質・能力を明らかにする。

    [研究方法]

    1)文献調査より、グローバルシティズンとして育成すべき資質・能力を概観する。2)オーストラリアとシンガポールの資質・能力の構成要素や国際バカロレア教育の実践事例を参考に資質・能力を「目指す学習者像」や「育成したい資質・能力」として整理する。3)昨年報告した「学習内容と育成すべき資質・能力」を基に研究成果を加え、「グローバルな視点を導入した家庭科カリキュラム」で育成したい資質・能力を提案する。

    [結果と考察]

    グローバル社会に着目した家庭科では「他者や公共的利益にも配慮できる生活者(市民)」の育成が求められ、社会の変容に柔軟に対応でき、グローカルな視点を持って考え行動でき、社会の構成員としての責任や自覚を育むための学習が必要である。IBプログラムにおいては、育成を目指す人間性を「考える人」「心を開く人」など10の人物像として表していた。シンガポールでは「少なく教え、多くを学ぶ」教育改革が行われ、育成したい資質・能力を「コアの価値」「社会的・感情的コンピテンシー」「21世紀コンピテンシー」の3重構造で示し、コア価値には尊敬、ケアや責任などが含まれていた。オーストラリアでは、7つの汎用的能力(異文化間理解、倫理的理解、批判的・創造的思考力他)を設定し、それらを教科の内容に埋め込んでいた。

    これらを踏まえ、家庭科で育成したい「主体的に生活を創造し実践する力」の具体を、他者(ヒト、モノ、コト)とのかかわりで新しい価値観やライフスタイルを創り出す力とし、「多様性・人権の尊重、寛容性、異文化への理解、共感、イメージ力、洞察力、感受性、柔軟性、地球市民としての自覚・責任、批判的思考力、課題発見・認識力」などを育成したい資質・能力とした。これらの資質・能力は、ホリスティックにとらえた現実の生活課題から題材を精選し、対話を通して思考を深める学習活動や学習者自らが既習事項などと関連付けながら考えや説明を作り上げる授業の中で育成したい。 

    *なお本研究は、日本家庭科教育学会課題研究(1-3)による研究の一部である。
  • 齋藤 美重子, 望月 一枝, 川村 めぐみ, 松岡 依里子, 大本 久美子
    セッションID: B3-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】

    現在日本では生活のさまざまな場面でグローバル化の影響をうけている。教育改革の動向もPISAなどの国際「学力」調査の影響を受けつつ行われてきた。2008年、2009年の学習指導要領の改訂では「基礎・基本」の重視と「生きる力」の育成という方針は踏襲され、グローバル化と「知識基盤社会」の進展という国際的な社会変動に対応するよう明示された。

    家庭科ではジーンズを教材として消費生活のグローバル化を問う授業開発(堀内,2011)や地域の伝統と文化に関する授業開発(土橋・志村・斉藤,2011)等が行われている。K学園女子大学の小学校教員を目指す学生23名にアンケートしたところ、これまでの小・中・高等学校の家庭科において「グローバル化にかかわる授業を受けたか」に対して、23名中10名が何も行ってこなかったと回答した。教育界ではグルーバル教育の重要性は認識されつつも実際の教育実践は少なく、生徒自身自分たちの生活がグローバル化と関連しているという意識がない。特に高等学校家族分野ではグローバルの視点は管見の限りみあたらない。

    岡野(2012)はグローバル化の中で家族は弱体化していると指摘している。多田(2006)はグローバル時代における共創型対話力の重要性を指摘し、対話型授業を提唱している。

    そこで、本研究ではグローバル化を意識させる高等学校「家族」の授業デザインを検討し、資質・能力との関係性を検証したい。インチョン宣言、教育2030をふまえ、グローバル社会とは世界を一つのシステムとして捉え、複雑に関わり合う全体として捉えることとし、生徒に自分たちの現在の状況、グローバル化の中での位置づけを把握させ、ジェンダー平等の視点、社会参画への意欲を高める授業デザインを示したい。


    【研究方法】

    ①グローバル化を意識した高等学校家族分野の授業デザインを、望月(2015)のケアをシティズンシップ概念に組み込むこと、多田(2006)の対話型授業を援用して授業を構想し実践する。

    ②実践された授業を石森(2013)の指標項目を参考に生徒の振り返りから資質・能力との関係性を分析し、グローバル化を意識させる家族分野授業カリキュラムを開発し、その成果と課題を探る。

    なお授業実践は2015年10月~2016年2月、私立中高一貫男子校の高校1年3クラス計130名を対象に行った。


    【結果及び考察】

    家族の授業の導入として、「主な国の合計特殊出生率の動き(欧米)(アジア)」(「平成27年版少子化社会対策白書」内閣府)、及び「世界の高齢化率」(「平成27年版高齢社会白書」内閣府)のグラフを読み解く対話型授業を行い、世界における自分たちの生活の立ち位置を確認させた。授業では問題発見・課題認識に大きな効果が見られた。グラフを読み取る対話型授業は自分の学びを表現でき、ジェンダーの視点に気づかせるものだった。次に自分自身の生き方を探究する視点を持たせるため、幼稚園実習や救世主べビーに関するアサーション・ディベートなど計6時間のカリキュラムを開発した。

    生徒の記述分析の結果は次のとおりである。

    第一に出生率等のグラフを読み取る対話によって国や地域単位の差異と異文化理解にとどまらず、生徒同士の差異と理解が進み、多様性の理解が重層的になった。つまりジェンダー平等の視点、当事者性から社会を問い直す視点、社会的な支援の必要性と具体的な手立ての理解が深まった。第二にディベート準備の調べ学習及びディベートにより、主体的に学ぶ力、情報発信力、コミュニケーション力を高めていることが明らかになった。つまり知識・技術を使って他者や事物と関わり合う学習をし、学習が進むにつれ、獲得した知識が生徒の中で生きた知識となり、資質・能力の支えとなることが示唆された。第三に文脈に沿った知識の学び方が資質・能力を育み、さらなる高次な学習のスタートとなることが解明された。


    *なお本研究は日本家庭科教育学会課題研究(1-3)による研究の一部である。
  • 望月 一枝, 齋藤 美重子, 川村 めぐみ, 松岡 依里子, 大本 久美子
    セッションID: B3-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】 本研究の目的は、グローバル社会に対応した家庭科教師の専門性と方略を解明することである。グローバル社会の特徴を池野(2014)は、社会システムが個々人の生活世界に入り込み、「システムに植民地化される」ことだと指摘した。望月(2013)は、グローバル社会をジェンダー、持続可能な社会、シティズンシップの概念で見直すこと、多様な選択肢が広がる一方、リスクも伴うので、「食べる」、「着る」、「育つ・育てられる」、「住まう」、「家族」などの「生きるための学習」が重要性を増すと提示した。同著で、井元(2013)は、生産から廃棄までの食生活をトータルで考えること、葭内(2013)は、消費者教育で「背景」への眼差しを育てること、倉持(2013)は、幼児理解と豊かな養護性を社会とのかかわりで考えること、天野(2013)は、家族の変化や多様性を客観的・構造的に把握し自分の育った家族以外の家族モデルを知ることをあげている。しかし、同著及び先行研究においても、社会の変容に伴う家庭科教師の専門性と方略は充分に解明されていない。 【研究方法】 1.家庭科教師と共に、グローバル社会を意識させる授業をアクションリサーチし、授業カンファレンスを持つ。具体的には、公立高校の消費のA授業(2015年9月)、本研究グループメンバーである齊藤の私立高校の家族のB授業(2015年10月)を対象とし、授業カンファレンスを実施する。2.B授業は、西オーストラリア州立Duncreig Senior High Schoolの授業観察調査(松岡)における授業空間に関する知見、フランスLycee Professionnel Jean Monnet(職業高校)のシティズンシップ教育の家族授業観察とフランスの教科書調査(望月)から教材と方略に関する知見を得る。授業をフィールドノーツ、ICレコーダーに記録し、発話を文字に起こす。授業カンファレンスでは、苦慮した点、手応えを感じた点など、対話を通して家庭科教師の専門性と方略を析出する。3.以上をふまえて、国立教育政策研究所(2016)、コンピテンシーベイスの授業づくり(石井2015)、(奈須2015)、ディープ・アクティブラーニング(松下2015)を批判的に参照し、研究目的に接近する。 【結果及び考察】  A授業では、映像と実物(チョコレート)、B授業では、各国の出生率のグラフを用いた。授業は、どちらもグループの話し合いと一斉授業の対話を組み合わせ、生徒の参加を促していた。A授業は、教師の生徒に寄り添い深い知識と分かりやすい説明をする発話が多く、B授業では、教師が生徒同士の発話を促し、コーディネイトする発話が多かった。 A授業では、知識や活動を詰め込みすぎて、「フェアトレードのチョコレートを買うこと」が暗黙の正解となった。それは、教師がオープンエンドな生徒とのやりとりをどのように着地させれば良いか迷いがあったことが析出された。B授業では、「教える」授業から「教えない」授業への転換をする際、教師に葛藤と不安があったが、生徒の発話が活発に起こり、ジェンダーや育児制度や政策と自分の生き方と重ねる深い学習ができたことが確認できた。 家庭科教師の専門性は、メタ認知的な知識とアプローチとして発揮され、何に気づかせ、どのような命のケアの技法を身につけるかをデザインすることであった。方略は、生徒の反応を見取る教師のリテラシーと空間構成で実践コミュニティを作り、教師の即興的な発話と立ち位置で授業を再デザインしながら知識や価値観を可視化、共有化することであった。 *なお本研究は日本家庭科教育学会課題研究(1-3)による研究の一部である。
  • クリティカル・リアリズムをてがかりにした家庭科の授業実践の分析
    大西 友恵
    セッションID: B3-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    著者は,近年の家庭科の授業の実践研究について,学習指導要領において求められていることの達成と実際の授業方法という二者への注目によって展開される授業研究が多く,このような授業実践研究について検討する余地があるのではないかと考える。そこで本研究では,二者にのみ注目して展開される授業として,著者自身が過去に実施した中学校家庭科における被服製作授業の実践研究を事例として示す。さらに,クリティカル・リアリズム(以下,CR)の視点から同事例を分析し,「授業実践」を「学習指導要領」と「学習者の生きる世界」との相互作用の中に位置付ける可能性を提示することを目的とする。
    CRとは,英国の哲学者バスカー(Roy Bhasker,1944-2014)によって創られた科学哲学である。バスカーは,従来の「どのようにして知識が可能になるのか」という認識論的な問いに対し,「一体,社会ならびに人々は,それらが知識にとって可能な対象となるようなどのような性質を持っているのか」という存在論的な問いを立て,この世界は構造化されており,差異化しており,階層化しており,そして変化するということをCRの出発点とした1)。CR研究者のダナーマーク(Berth Danermark,1951-)は,知を生み出すメカニズムについて,「概念・知識」「実践」「世界」という三者が互いにかかわり合い,そこから新たな知が生成されると述べている2)。本研究では,この「概念・知識」「実践」「世界」を,「学習指導要領」「授業実践」「学習者の生きる世界」に置き換え,三者のかかわりを授業実践の分析視点とする。  

    【方法】
    (1) 2008~2010年に徳島県内の二つの公立中学校(A中学およびB中学とする)2学年を対象に実施した家庭科における被服製作の授業実践を事例研究として示す。この被服製作の授業では,生徒にとって身近な衣類から資源の大切さを学んでもらうため,各家庭にある不要な布を用いたリサイクル作品を製作することにし,教材には家庭生活の中で利用できるスリッパを選んだ。尚,授業実践を行うにあたり,対象の生徒には事前と事後にアンケート調査を実施したので,その結果を提示する。
    (2) CR理論を基に,アンケート調査の結果を分析する。
    (3) 分析結果を踏まえて,事例と同様(不要な布で何か作る)の授業を展開するならば,どのような授業が展開できるのかについて考察を試みる。  

    【結果】
    (1) 本授業実践においては,環境(とりわけリサイクルに関する)をテーマとする授業と被服製作の授業をかかわらせた。アンケート結果から,複数の単元をかかわらせて関連付けを図ることの重要性が見出された。また,この実践事例では,学習指導要領を重視した授業を展開したこともわかった。
    (2) CRを基に,「学習指導要領」「授業実践」「学習者の生きる世界」の三者のかかわりを授業実践の分析視点とすると,本事例では,学習者の生きる世界と授業実践をどうかかわらせるかは,授業外のこととして学習者に任されていたことがわかった。単元のかかわらせ方や教材選びは教師が決定していたが,学習者の生きる世界を重視するのであれば,授業内で学習者と共に単元間のかかわりを考え,教材を選ぶことが必要であると思われる。
    (3) (1)と(2)の結果を踏まえて,学習者の生きる世界のコンテクストを,授業実践の内容や学習指導要領に示されたねらい等とかかわらせることができるような授業展開について検討した。本発表においては,授業のアウトラインを提示する。  

    参考文献 
    1) バース・ダナーマーク,マッツ・エクストローム,リセロッテ・ヤコブセン,ジャン・Ch.カールソン著,佐藤春吉監訳,(2015) 『社会を説明する-批判的実在論による社会科学論』,ナカニシヤ書店,京都
    2) 同上, p.49

  • クリティカル・リアリズムをてがかりとした家庭科教育での展開
    竹下 浩子
    セッションID: B3-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    持続可能な開発のための教育(ESD)は、ユネスコにおいて、地球的視野で考え、様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組み、持続可能な社会づくりの担い手となるよう一人一人を育成する教育として位置付けられている。家庭科は、理科や社会科と並んで、ESDの内容を多く含む教科であり、実践的・体験的なESDの展開が期待される。しかし、2014年の日本家庭科教育学会の課題研究報告書「ESDとしての家庭科教育の可能性と役割」に見られるように、ESDを視点とした授業実践は多く行なわれているものの、実際にESDを意識して実践している教師は少ない。この要因として、ESDが理論として、教師のシャロウな(浅い)気づきだけにとどまり、実生活の中での教師のディープな(深い)気づきと実存するカリキュラムとのつながりが見出せないためと考えられる。本報告では、クリティカル・リアリズム(CR)を補助線として、教師のシャロウな気づきとディープな気づきから、ESDを視点とした家庭科教育の再構築とその課題を明らかにすることを目的とする。
    【方法】
    1.  まず、家庭科の方向性について、メタ理論のCRから従来の家庭科教育カリキュラムと実生活の事象とESDのそれぞれの特徴について整理し、3者の関係をアウトライン化する。
    2.  次に、2015年9月に行なった教員免許状更新講習会で「家庭科におけるESD」を受講した幼稚園教諭、小・中・高等学校教諭の講習会後の感想文から、ESDについての理解や認識について、(1)シャロウな気づき、(2)ディープな気づき(3)その他に分類する。
    3.  最後に、教師を対象としたチョコレートを題材としたESDの授業実践例の提示から、教師のディープな気づきを具体化し、従来の家庭科教育の再構築への提案を行なう。
    【結果】
    1.  CRはメタ理論にすぎないが、従来の家庭科教育カリキュラムと実生活における事象とのギャップをESDの視点から捉える上で、分かりやすく示すことができた。
    2.  教師のESDについての理解や認識について、シャロウな気づきとディープな気づきを分類したところ、多くの教師が、ESDを使って、新たな視点で家庭科教育を捉え直すということに、共感していることが分かった。本報告では、この新たな視点で家庭科教育を捉え直すことに焦点をあて、その中でのディープな気づきについてさらに検討していきたい。
    3.  カカオ豆・チョコレートは、ESDを視点とした家庭科の授業実践事例としてよく取りあげられている。これらの授業実践では、児童労働の問題やフェアトレードについて触れるため、家庭科では消費の内容を中心に展開されている。本報告のチョコレートを題材としたESDの授業実践例の提示では、教師が実際にカカオ豆からチョコレートを作るという体験活動を行い、教師自身の消費生活との関連からの気づきが見られたが、児童・生徒に教えたい内容については、精鋭する必要があると考えている教師もいた。従来の家庭科教育の再構築を考える上で、教師のディープな気づきを大事にする必要があるが、授業実践につなげるためには、さらに手続きを踏む必要がある。
  • クリティカル・リアリズムをてがかりとした生活課題への接近
    鈴木 明子, 中岡 和美, 小桝 由美
    セッションID: B3-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー


    【目的】  家庭科教師の教科観の確立,小・中・高の学習内容の体系化,家庭科の資質・能力の習得を目指した学習者の主体的学習を可能にするために,家庭科のカリキュラム検討が重要であることは言うまでもない。特に高等学校家庭科においては,「家庭基礎」の時間数の少なさ,科学的な展開の不十分さ,課題解決的な学習と実践的・体験的な学習の展開の問題,学習者の学習意欲と生活実践の乏しさへの対応などカリキュラムに依拠する課題が山積している。そこでは,高等学校家庭科で担う資質・能力を学習者の実態に応じて具体化し,到達目標を明確にして学習内容,題材及び学習方法を精選するといったコンピテンシーベースのカリキュラムへの転換を図ることが求められている。本報告では,家庭科の資質・能力を問いつつ,それらを身に付けるために,最終的な到達目標としてのパフォーマンス課題をどのように設定すればよいのかといった,今後の家庭科カリキュラム構想において重要と思われるこれらの問題に焦点を当て,クリティカル・リアリズムの理論をてがかりに,一人ひとりの学習者にリアルな生活課題への接近を可能にする家庭科カリキュラム構想の方向を提起する。

    【方法】 学習内容の総合化を意図し,かつストーリー性をもつ2つの「家庭基礎」のカリキュラム事例を,クリティカル・リアリズム(以下CR)をてがかりとして評価可能な点と課題点を解釈することを試みた。まず,カリキュラム構想段階で教師によって資質・能力の具体化はどのように意図され,各授業の本質的な問いに結びついているのか,また到達目標としてのパフォーマンス課題遂行のためのステップアップは,各授業でどのように保障され,最終的にどのようなかたちで学習者に提示され,指導されているのかなどについて整理した。その上で,学習者一人ひとりの違いやわからなさを協働的に学びにつなぐ可能性をもつ場面を抽出し分析,評価した。事例1は,社会構成主義の教育観と真正の評価論に基づく「学習者が自己評価活動によってリアルな生活課題を認識し,授業での学びを実生活に生かすことを繰り返し継続するカリキュラム」(小桝実践)である。事例2は,逆向き設計理論(G.ウィギンズ・J.マクタイ:2012)に基づく「本質的な問いから教科目標にせまる自立した生活者を目指すカリキュラム」(中岡実践)である。

    【結果】 事例1では,「学校知と生活知をつなぐ」,「生活者としての他者,身近な環境との積極的なかかわりと自分の成長の実感」,「学習内容の関連性に基づく生活事象の多面的,総合的な捉え」等を生活主体者育成の下位能力として挙げ,自己の成長を認識することを重視し,各自の生活実践を到達目標としていた。事例2では,「自分自身の生活」,「他者とのつながり」,「地球や環境とのつながり」,「未来の生活とのつながり」の認識を自立(自律)した生活者に必要な下位能力として挙げ,自己と環境との相互作用やライフステージを認識すること重視し未来の自分の生活を具体的にイメージして生活認識や生活行動を見直すことを到達目標としていた。いずれの事例も,自分自身であるいは他の生徒や教師等との相互作用の中で,生活事象の再文脈化や本質の探究を行う場面で,個々の学習者の生活課題への接近を可能にすると考えられた。家庭科カリキュラム構想において,人間生活の複雑さや不確実さをそのまま見つめさせる題材や学習方法の工夫が必要であることが改めて示唆された。
  • クリティカル・リアリズムをてがかりとした原論の検討
    正保 正惠
    セッションID: B3-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【目的】わが国においては、戦後の再出発後すぐより家政学と家庭科教育が別々の道を歩むという両方の学問にとってある意味不幸な歴史を辿ってきた。そのため、家庭科教育の背景学問として家政学があるとされながらも、その関係については明確な検討をされてきていない。そこで、今後双方の学問体系が相乗効果を発揮するために、どのような方法があるか、そのモデルを提起したい。
    【方法】(1)家政学そのものの成立に大きな影響を与え続けてきたのは、アメリカ家政学である。そのアメリカ家政学について、80年代までのモデル化を行ったマージョリー・イーストの『家政学の過去・現在・未来』に登場する4つのモデルを基本にして、アメリカでの歴史を踏まえてわが国の現在と未来を考える。(2)その際、クリティカル・リアリズム(以下CR)の発想をてがかりに家政学のモデルとわが国の家庭科教育をニュージーランドのテ・ファリキを模して交差させる。(3)さらに、家政学のモデルの一つとして挙げられるエコロジーについて、そのコンセプトの深化を検討する。(4)その先に新たな体系化の提案を行う。
    【結果】(1)マージョリー・イーストは、アメリカの高等学校・大学で家庭科教育・家政学教育に従事された後、1958年から1980年までペンシルバニア州立大学家政学部家庭科教育科の課長を務め、その間、アメリカ家政学会の会長を務めるなど、全米の家政学の発展に寄与した人物である。彼女が、4つのモデルとして挙げたものの原理とその後の展開について、整理した。4つのモデルとは、アリストテレス(家庭管理)モデル、レークプラシッド(エコロジー)モデル、デューイ(手技教育)モデル、女性の役割モデルの4つである。このモデルを日本の家庭科教育と家政学に当てはめて考えることで、原理的にどうつなげていけるかを検討した。 (2)次に、クリティカル・リアリズムを用いてこれらの関係を深める方策を探った。CRには、聞きなれない用語がたくさんあるが、その意味内容さえ理解できれば、世界存在並びにその中の人間の位置についての見方がクリアになり、誰でも自らの思考を整理し研究戦略や研究方法の指針として応用できるところが魅力となっている。その手法を用いたNZのテ・ファリキは、幼児教育において、マオリの文化と西欧文化を融合させることに成功しているが、ここでもその発想をヒントに家庭科教育と家政学を紡いでみたい。 (3)エコロジーの考え方も多重的であり、アルネ・ネス、ジョージ・セッションズらによる交通整理の結果、エプロン・ダイアグラムと8つの基本原則が編み出されている。ここでも応用してみたい。 (4)これらの結果として、今までの家政学と家庭科教育学をお互いに強固にするためのモデルを提示する。(具体的には当日資料配布)
    参考文献 ・マージョリー・イースト 村山淑子訳『家政学の過去・現在・未来』家政教育社 1991 ・(一社)日本家政学会家政学原論部会訳『家政学未来への挑戦 全米スコッツデイル会議におけるホームエコノミストの選択』建帛社 2002 ・セイラ・ステイジ ヴァージニア・B・ヴィンセンティ 倉元綾子監訳『家政学再考 アメリカ合衆国における女性と専門職の歴史』日本文芸社 2002 ・バース・ダナーマーク、マッツ・エクストローム、リセロッテ・ヤコブセン、ジャン・Ch.カールソン 佐藤春吉監訳『社会を説明するー批判的実在論による社会科学論ー』ナカニシヤ書店 2015 ・アラン・ドレングソン井上有一『ディープ・エコロジー生き方から考える環境の思想』昭和堂2001
  • 若月 温美
    セッションID: B4-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
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    【目的】高等学校家庭科の学習では、生徒が自分の生活と結びつけて考えることで、学んだ知識をより深く理解し、実践的にとらえることができる。そのためには教師が一方的に知識を伝達する授業ではなく 、教師と生徒の対話の生成により、生徒が思考を深める授業をすることが必要である。発表者は、高校家庭科教師が生徒の応答を「聴く」ことから行う、教師の瞬時の判断による発話には、対話を生成する発話である場合とそうでない場合があることを明らかにした(1)。家庭科教育における授業研究についての先行研究は、多くが教育内容・教育方法等に関する課題を設定したもので、子どもや教師の視点から授業をとらえた研究は十分ではない。本研究では、授業における生徒と教師の対話の生成要因と対話を生成する教師の発話の種類ついて、生徒への質問紙調査より明らかにする。
    【方法】2015年7月から8月にかけて、千葉県の高等学校2年生273名(男子125名 女子148名)を対象に質問紙調査を行った。質問紙調査の内容は 、(1)家庭科は好きか(2)生徒自身が実施した「食生活調査」の結果について①「栄養のバランスがよくないと思いました」と発表したことに対して、②「特にありませんでした」と発表したことに対して、教師の応答を6例示し、その後の会話を「続けたくない(1点)」「どちらかというと続けたくない(2点)」「どちらでもない(3点)」「どちらかというと続けたい(4点)」「続けたい(5点)」の5択とし得点化した。
    【結果・考察】1.教師の応答に対して会話を続けたいと考える要因として、①家庭科が好きか②男女の違い、に着目しt検定を行った。①について12項目中10項目について「とても好き」のほうが平均値が高く、有意差(p<.0.05)が見られたことより、家庭科に対して好意的であるほど会話を続けたいと考えると解釈できる。また、②については、12項目中6項目で男子のほうが平均値が高く、有意差(p<.0.05)が見られたことより、男子のほうが会話を続ける意志が高いことが解釈できる。2.家庭科が「とても好き」「どちらかというと好き」と答えた生徒は62%で半数以上の生徒が家庭科の学習を好意的にとらえていた。3.①②の教師の発話例について生徒が会話を「続けたくない」「どちらかというと続けたくない」と回答した割合は、①「栄養のバランスがよくないと思いました。」と発表したことに対して「なるほど、バランスが良くないと思ったんですね。じゃあなぜそう思ったのですか?」について合わせて23%と最も少なかった。一方「はい、具体的にどのような栄養素や分量などが過不足なのでしょうか。理想の栄養素量については以前勉強しましたがそれに沿って栄養素名や分量などを挙げてみてください。」について59.3%と最も多かった。また②「特にありませんでした」と発表したことに対して「バランスがよかったのですね。食事は誰が作ったのですか。」については合わせて18%と最も少なかった。一方「問題がないというのは摂取量が目安通りということですか?そんな理想の食生活をぜひ発表して。」について合わせて53.4%と最も多かった。教師の発話の内容が「復唱」+「正当化の要請」(主張内容に対して正当化する理由を求める)「受容」+「拡張の要請」(自己の主張に別の内容を付け加えて述べることを求める)であれば生徒は会話を続けたいと感じ、「統合の要請」(生徒の主張を理解し、共通基盤の観点から説明し直すことを要請する)の場合は会話を続けたいと感じないことが明らかになった。生徒の発話を促すために、教師は生徒の発話を「受容」しさらに「正当化の要請」や「拡張の要請」を用いることが有効であることが示唆された。授業における生徒の発話を促すために、教師の発話を改善する研修プログラムの開発が今後の課題である。
     【引用文献】(1)若月温美(2015)日本家庭科教育学会第58回大会研究発表要旨集P104-105
  • 荒井 きよみ
    セッションID: B4-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    21世紀の情報基盤社会において生徒の問題解決能力やプレゼンテーション能力の育成が求められている。パフォーマンス課題とは「リアルな状況で、さまざまな知識や技能を統合して使いこなすことを求めるような課題」(松下2012、西岡2008)とされ、多様な資質・能力の評価方法や教育内容を位置づける。翻って高等学校家庭では、1960年学習指導要領告示より一貫してホームプロジェクトによる問題解決学習を担い、現代が求める能力・資質を育んできた。ホームプロジェクト実践の中で生徒が何を学び、どのような能力を身につけてきたのかを明らかにするために、どのように評価するかが重要かつ喫緊の課題である。本研究では、家庭基礎における高校1年生のホームプロジェクトの取り組みを対象として、パフォーマンス評価とその評価基準について検討することを目的とする。

    【方法】
    対象とする首都圏の普通科高校はスーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)指定校である。1学年は、SSHクラスが2学級とSSHクラスではない生徒(以下、非SSH)が6学級の計8学級から構成される。1学年8学級321人に、2015年度家庭基礎(2単位)においてホームプロジェクト(A4レポート5枚)を夏季休業課題とした。なお、テーマ設定は2学期の授業展開から食生活の課題に限定した。10月の授業1回(2時間連続100分)で全員が学級単位のポスター発表をし、相互評価を行った。ここでは、生徒が設定したホームプロジェクトテーマをSSHクラスと非SSHクラスで比較分析し、評価方法および評価基準としてのルーブリックを検討する。

    【結果】
    (1)テーマを最重点キーワードから12項目に分類した。多い項目から順に①摂取不足食材(野菜/魚/果物/豆/牛乳)64(19.9%)、②栄養(バランス/代謝)42(13.1%)、③体調不良(夏バテ/風邪/熱中症)35(10.9%)、④調理の能率・経済性(簡単料理/食費)29(9.0%)、⑤食生活を取り巻く環境(食品ロス/食料自給率/国産)28(8.7%)、⑥理想の体づくり(アスリート/筋肉/脳/骨)23 (7.2%)、⑦中食・外食・加工食品(コンビニ食/インスタントラーメン/菓子)23(7.2%)、⑧健康・流行食品(発酵食品/機能性食品/未来食)20(6.2%)、⑨体質改善(アレルギー/便秘/貧血/低血圧/口内炎)20 (6.2%)、⑩青年期における毎日の食事(朝食/弁当)18(5.6%)、⑪おいしさの科学15 (4.7%)、⑫食文化4 (1.3%)となった。高校生は食生活の課題を健康と結びつけて捉えているといえる。SSHクラス(n=80)は⑧健康・流行食品10(12.5%)、⑦中食・外食・加工食品10(12.5%)が非SSHクラスより有意に多かった(<0.05)。
    (2)生徒は前後半各40分間で各20件程度のポスター発表をまわり評価した。評価方法はテーマの独創性、実践の有用性、4つのプロセス(問題発見、計画、実行、反省評価)の設計性の3つの視点からそれぞれ3段階(3・2・1)で判定し、各自プリントに記入した。SSHクラスと非SSHクラスで比較したところ独創性((2829.388)=8.226,<0.001)と有用性((2860.442)=6.757,<0.001)の平均点に有意差がみられ、非SSHクラスにおいて多かった。

    【課題】
    教員ではなく生徒自身がパフォーマンス課題を設定するため、ふさわしいテーマ設定ができたかという点からも評価する必要があった。相互評価は項目の尺度が曖昧であったことと時間内に全員分を聞くことが難しく、正確に評価できないまま記載していた生徒が散見された。また、発表をする、発表を聞くという2つの学習体験から得たことを自己評価で とるべきであった。ルーブリックは問題解決能力についてホームプロジェクトの実施、プレゼンテーション能力についてホームプロジェクトの発表を4段階で表わし、新たな視点を加え、パフォーマンス評価として再構築する。

     

     
  • 「複式学級用小学校家庭科教科書」を資料として
    八幡(谷口) 彩子
    セッションID: B4-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    目的 演者は、日本の家政学史・家庭科教育史研究の一環として、戦後、文部省の教科調査官として小学校家庭科の教育課程行政に携わった鹿内瑞子氏の旧蔵資料を読み進めている。「鹿内瑞子旧蔵資料」は、昭和26(1951)年~昭和52(1977)年の小学校学習指導要領改訂までをほぼ網羅し、この期の小学校家庭科に関する教育行政を把握する上で貴重な資料である。とくに、「へき地教育関連資料」は「鹿内瑞子旧蔵資料」を特徴づけるものであるが、十分な検討は行われてこなかった。そこで、本研究では、「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる「へき地教育関連資料」の検討を通して、昭和20~40年代における小学校家庭科の展開過程の一端を明らかにすることを目的とする。なお、本報告(第2報)では、「へき地教育」に関する資料として、「複式学級用小学校家庭科教科書」を資料として、複式学級における小学校家庭科の学習指導・教材の状況について検討する。

    方法 本研究で用いる資料は、国立教育政策研究所教育図書館所蔵「鹿内瑞子旧蔵資料」(1,139点)のうち「へき地教育関連資料」74点である。そのうち、本報告(第2報)では、「複式学級用小学校家庭科教科書」8点(『鹿内瑞子旧蔵資料目録』による資料番号428~431、533~536)を分析対象として、昭和40年代の複式学級における小学校家庭科の学習指導・教材の状況と鹿内瑞子氏の関わり・教育行政について考察する。

    結果 (1)「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる「複式学級用小学校家庭科教科書」は、いずれもA5版、80ページからなる。刊行年が記されていないもの3点、昭和45(1970)年刊行2点、昭和48(1973)年刊行2点、昭和49(1974)年刊行1点の合計8点である。改訂理由書が付されていることから、昭和40年代後半の短期間の間に内容の改訂が行われていることがわかる。

     (2)資料番号428の表紙には、「複式学級用 第5・6学年用 小学校家庭科6」と標題が記されている。昭和40年代の小学校家庭科教科書は、第5学年と第6学年それぞれに学年別の教科書が作成されていたが、「複式学級用小学校家庭科教科書」は、第5学年と第6学年の複式学級で使用されることを想定して「第5・6学年用」としながらも、「小学校家庭科6」(6年生用)と書名がある点に着目できる。また、開隆堂と東京書籍の共同刊行という特殊な刊行形態となっている。

    (3) 「複式学級用小学校家庭科教科書」を編集した「複式家庭科研究会」のメンバーは、奥付によれば、野上象子氏を代表者とする10名(のちに新井包子氏と吉松藤子氏を代表者とする9名)の名前が記されている。

    (4) 資料はいずれも昭和43(1968)年に改訂された小学校学習指導要領に対応する教科書で、5年生向け、6年生向けのいずれの教科書も、「1 わたしたちの家庭」から「10 楽しい会食」までの10章構成となっている点は共通しているが、各章で扱われる題材等は学年による違いがある。

    (5)「複式学級用小学校家庭科教科書」が実際の複式学級において、どのように使用されたのかについては、「鹿内瑞子旧蔵資料」以外の情報を踏まえて、今後明らかにしていく必要がある。現在、少子化を背景に、複式学級がへき地に限らず増加している。現代の複式学級における小学校家庭科の学習指導のあり方を考える上で、今後も引き続き検討を進めていきたい。

    なお、本研究は、JSPS科研費 26350049の助成を受けたものである。

    文献 丸山剛史・佐高美里・橋本昭彦『戦後教育改革資料19 鹿内瑞子旧蔵資料目録』国立教育政策研究所(2006)
  • 古田 豊子
    セッションID: B4-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー
    目的:小学校高学年から中学生期において、家庭科が、教科の目標到達以外に果たしている働きについて明らかにし、それを意図的に指導の中に位置づけることで、子どもの自己肯定感を育むことができることを実証する。 小学校の高学年から中学生期にある子どもの特徴は、自我が芽生え、「自分とは何か」というような本質的な疑問を持つようになる。この時期の子どもは、自分に自信がもてず、不安定な状態に陥ったり、葛藤に苦しんだりする。この時期には、子どもの世界で価値があると考えられているさまざまな能力について、それを持ち合わせているかどうかという評価によって、ある種のヒエラルヒーが出来上がる。家庭科は、小学校5年生という思春期のこのような心理状態の時に、初めて出合う教科であり、家庭科がそれまでの価値基準とは違った側面で、友だちのよさを発見する機会を多く含んでいるといえる。子どもたちの生活体験が乏しくなっている現代であるから尚更、子どもたちの集団においては、生活上必要とする技能を身につけている子どもが自立した姿と映り、友だちから認められる機会を得ることになる。こうした機会を得た子どもは、それまで、自信のなさから抜け出ることができずに苦しんでいた自分を解放することができる。さらに、ここで得た自信と自己肯定感は、学習へのモチベーションを高くし、家庭科以外の学習活動全般にも発揮することになる。この側面を、家庭科の指導過程に位置づけ、家庭科の題材目標の到達とともに、自己肯定感を得られる学習過程の設定し、その可能性を明らかにしたいと考えた。
    方法: 1.家庭科学習の中から、子どもが他者から認められる活動場面を特定し、どのような価値基準で評価されたのかを明らかにする。2.子どもが自己肯定感を得られる学習過程を設定した授業実践を行い、家庭科が、個人の技能習得とその評価だけで終わるのではなく、自己肯定感の醸成や学級集団づくりや学級経営に生かすことができる点を明らかにする。  製作に関する学習内容についての指導方法としては、通常、題 材の到達目標が設定され、それに向かう学習展開が順を追って立 案される。そこでは、子どもが教師の指導のもと、目標である技 能の習得をめざして製作活動を行い、作品が完成することで、学 習が終結する。しかしここでは、学習過程の中に、本研究のねら いである、家庭科の隠れた効果を引き出すための場面設定をし、 学習の成果に加える。 結果:1.については、家庭科の授業を参観し、子どもが友だちか ら評価される場面を特定することができた。 2.家庭科「小物作り」の指導について、子どもの場合は、「友だちに誉められて嬉しかった」という結果に集約されるが、これは、自分が頑張ったと思うところを認められた場合と、自分では意識していなかったところに友達が気づいてくれた場合の、両方の嬉しさがあった。また、指導した担任教師の観察からは、子どもたちの友だちへの関心が高まったり、友だちのよさに気づいたりする場面をよく見るようになったことや、学級集団としての協働意識も芽生えてきたことなども変容として捉えられている。したがって、本研究の成果として、家庭科は自己肯定感を育てることができ、家庭だけでなく、学級集団においても人間関係を育てる力となっているといえることが実証された。ちなみに、中学生が6年生の家庭科の学習に入って助言したが、中学生自身の振り返りや、小学校のときの担任の観察から、中学生も自己肯定感を得ることができたことが実証された。また、将来家庭科の指導を行う、教員養成大学の家庭科指導法の授業でも実践したところ、学生は「このワクワク感を、自分が授業するときに生かしたい。」という感想を持った。     指導者になった時に生かされることを期待している。
  • 野中 美津枝, 亀井 佑子, 新山 みつ枝, 荒井 きよみ, 荒井 智子, 石島 恵美子, 真田 知恵子, 吉野 淳子
    セッションID: B4-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    会議録・要旨集 フリー


    【目的】

    東京都高等学校家庭科教育研究会(都家研)では、班別学習(少人数編成授業:授業クラスを2クラスに分けて同時展開)の推進に長年にわたって取り組んできた経緯がある。班別学習は実習授業の安全性や技術を含めた家庭科の学力向上を図る上で効果が期待されている。現在、少人数編成授業は家庭科教員の減少を防ぐ方策としても挙げられており、東京都の事例を検証することは家庭科教育において歴史的価値があると同時に今後の家庭科教育の課題を検討する上でも意義があると考えられる。

    そこで、本研究では、東京都立高等学校家庭科の班別学習(少人数編成授業)設置の経緯を調査するとともに、現在の実態と課題を把握することを目的とする。

    【方法】

    東京都立高等学校家庭科の班別学習(少人数編成授業)設置の経緯を把握するため、昭和41年から平成25年までの都家研の研究活動報告による文献調査および教員への聞き取り調査を実施した。さらに、最近の状況を把握するため、東京都立高等学校家庭科教員に班別学習に関する質問紙調査を実施した。平成27年2月に162校へ郵送して73校から回答があり、回収率は45.1%だった。

    【結果】

    (1)都家研が教育委員会に陳情した結果、家政科における「被服」「食物」の専門科目の分割授業は昭和34年に認められている。普通科では、昭和45年10月に都議会において家庭科の分割学習に関する請願が採択されたものの、予算化はされなかった。そのため、都家研では予算編成上のための資料として昭和45年11~12月「家庭科の分割学習に関するアンケート」を実施し、現行の授業クラスを分割学習で25人にした場合に必要な教員数を提示している。

    (2)昭和46年の陳情書では、分割学習が必要な根拠が示され、現行の家庭科が平均で48人一学級編成であるため、技術習得上、危険防止上、使用教室の面積及び教材機器の活用上の理由から、一学級の人数上限は25人が限度としている。昭和54年には都家研に研究グループ「家庭一般の班別学習推進の研究」を設置し、分割学習から班別学習に名称を変更して班別学習の実施を組織的に推進し、昭和55年に普通科高校5校が班別学習実施となった。以降徐々に実施校が増加し、昭和59年は18校が班別学習を実施している。

    (3)平成元年学習指導要領告示で高校家庭科が平成6年より男女必修になることが示された。そのため、平成2年の陳情書では、実施している49校の班別学習による学習成果、実験実習における安全性に関する実態調査の結果を資料として班別学習の必要性を述べ、加えて男女必修に向けての教育条件の整備として班別学習の拡大を挙げている。さらに、「男女必修家庭科推進のための要望書」も平成2年から10年まで毎年提出している。平成6年に家庭科は男女必修となりクラス単位の授業が可能となったが、班別学習の実施校数は拡大し、平成12年は76校が実施している。

    (3)平成18年は99校が実施し、この頃が最大となっている。これは、平成15年に「家庭基礎」2単位科目が登場したことによる授業時数の減少の影響によるものと推測される。その後、各学校での班別学習の申請が受理されにくくなるとともに、陳情という手法がとりにくくなり、都家研も平成24年以降は陳情をしていない。

    (4)東京都立高等学校73校の実態調査の結果、現在班別学習を実施しているは41校で56.2%の実施率だった。班別学習の経験者65人の班別学習の評価は、「良い」87.7%、「どちらともいえない」10.8%、「悪い」0%だった。「良い」と評価した理由として、一人ひとりにていねいに対応できる、主体的な学習活動をさせやすい、実験実習での安全の確保、効率のよい実習ができるなどを挙げている。
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