抄録
1.目的
衣生活の自立という視点から中学生の衣服管理を鑑みると、洗濯は家族全員分をまとめて行うことが多いが、アイロンかけは自分自身で行う生徒も多い。アイロンかけは、被服素材の特徴の理解や、素材と温度の関係、アイロンによってしわがのびる原理などを理解した上でなされる必要があるが、系統だった学習がなされているとは言い難い。そこで、「系統的学習を考慮したアイロンかけ」に関する教材開発のための基礎資料を得ることを目的として、シャツにアイロンをかけるときの動作分析ならびに視線分析をおこなった。
2.方法
研究1:小学校・中学校の学習指導要領、ならびに、アイロンかけについて記された中学校家庭科教科書3冊の記載内容を省察し、小学校家庭科教科書2冊の記載内容とその関連性について検討した。
研究2:女子大学生を中心とした男女8名を被験者として、しわのついたカッターシャツの半身に、10分以内でアイロンをかけさせ、眼球運動測定装置(竹井機器工業、Talk Eye Lite TKK2951)を用いて、アイロンかけの動作ならびに視線を記録した。
3.結果及び考察
研究1:小学校学習指導要領には,手入れの項に「アイロンかけ」に関する記載は見当たらず、中学校学習指導要領に「日常着の手入れについては、中学生が日常着として着用することの多い綿、毛、ポリエステルなどを取り上げ、丈夫さ、防しわ性、アイロンかけの効果、洗濯による収縮性など、手入れにかかわる基本的な性質を理解し、その違いに応じた手入れの仕方が分かり、日常着の洗濯などが適切に出来るようにする」と記載されていた。
小学校の家庭科教科書には、アイロンかけに関して、温度・布目・安全な使用法に関する記載があった。中学校の家庭科教科書には、アイロンかけに関する記載事項として、「1.衣服のしわを伸ばすためには熱が必要(3社/3社)」、「2.アイロンを上手にかけるコツ1:面積の小さい部分から大きい部分へ(3社/3社))」、「3.アイロンを上手にかけるコツ2:布目にあわせて(1社/3社)」、「4.アイロンを上手にかけるコツ3:裏面から(1社/3社)」、「5.アイロンを上手にかけるコツ4:端から中心にむかって(1社/3社)」、「6.アイロンを上手にかけるコツ4:裏面から(1社/3社)」、「7.霧吹きとスチームの使用法(1社/3社)」、「8.カッターシャツに上手にアイロンをかけるコツ(2社/3社)」、「9.カッターシャツの部位とその名称(3社/3社)」、「10.立体構成と平面構成の違い(2社/3社)」が記載されていた。衣服のしわを伸ばすためには熱だけでなく、水分と圧力が必要であることについては、ほとんど記載されていなかった。
研究2:研究1で示された項目に加え、品質表示のチェック、アイロンの温度管理の方法、しわが伸びたかの評価などをアイロンかけ動作の分析項目とした。視線分析の結果からは、アイロンの先端だけを見る被験者、アイロンの先端とこれからかけようとする部位を見る被験者にわかれた。また、8名中7名の被験者が、アイロンが設定した温度になったかどうかを、アイロンに手をかざす、アイロン台にアイロンをあて、そのアイロン台を触って温度が上昇しているかどうかを確認しており、アイロンの温度ランプによって温度上昇を確認した被験者は1名のみであった。
4.謝辞
本研究の一部は、科学研究費(26282011 基盤研究(B)リスク対応型衣生活教育の体系化と教材開発 代表者 與倉弘子)の助成を受けたものである。