抄録
【目的】本研究の目的は、男性が仕事や家庭の男女共同参画の担い
手・リーダーとなるための、家庭科の成果と課題を明らかにするこ
とである。具体的には以下2点を明らかにする。第1に、男性は、
中学又は高校時代、家庭科のどのような領域で知識や思考を深めた
と考え、どのような領域ではそれが不十分だったと考えているのか
を明らかにする。第2に、かれらの家庭科に関する上述したような
認識は、現在の家庭生活の実践に、どのように影響しているのかを、
男女共同参画の視点から明らかにする。
【方法】日本国内の男性雇用労働者1000人(20代~60代)を対象
に、学術調査を扱う企業(日本マーケティングリサーチ協会加入業
者)に依頼し、WEB調査を実施した。調査期間は2017年3月。
【結果】主な結果は以下の通りである。①先行研究での質問項目を
参考に、家庭科で、衣、食、住や家計管理、生活設計等、生活の知
識や技能を身につけたり考えを深めたりできたかを「当てはまる」
から「当てはまらない」の4段階でたずねたところ、「当てはまる」
割合が高かった項目は、最高でも「食物・栄養」について(8.5%)
でしかなく、全項目において、「当てはまる」の割合は10%を切っ
ていた。また、「赤ちゃん・幼児の世話」は「当てはまらない」の
割合が全項目で最も高かった(50.3%)。②日常生活の家事実践を
項目別に、「いつもする」から「まったくしない」の4段階でたず
ねたところ、「いつもする」の割合が高かった項目は順に「ゴミを
出す」(41.7%)、「家庭ゴミの分別」(41.0%)であった。
「家計簿をつける」は「まったくしない」の割合が全項目で最も高
かった(47.8%)。次に、子どもがいる人を対象に、日常生活の子
育てのかかわり(日常生活でどれだけ子育てにかかわった(かかわ
っている)か)を項目別に、「よくある(あった)」から「まった
くない(なかった)」の4段階でたずねたところ、「よくある(あっ
た)」が過半数を超えた項目はなく、最高でも「子どもと遊ぶ」(
46.0%)であり、「子どもの夜泣きの世話をする」(17.2%)、
「子どもを病院に連れて行く」(16.0%)「子どもを保育園・幼稚
園に迎えに行く」(15.2%)等は2割を切っていた。「子どもの病
気で、職場を早退したり休んだりする」では「よくある(あった)」
の割合は1割にも満たなかった。③ ②で述べた日常生活の家事実践
の程度において、「家族の夕食をつくる」「アイロンをかける」は、
①で述べた、家庭科で生活の知識や技能を身につけたり考えを深めた
りできたかに関する全項目と、相関係数0.2程度の正の関連があった。
また②で述べた日常生活の子育てのかかわりにおいて、「子どもの
病気で職場を早退したり仕事を休んだりする」は、①で述べた家庭
科で生活の知識や技能を身につけたり考えを深めたりできたかに関
する全項目と、相関係数0.2程度の正の関連が見られた。④「家庭
科の多くの領域で知識や思考を深められた」と認識している男性は、
統計的には弱い関連ではあったものの、学校を出ても食事作りを家
族任せにしない傾向や、仕事をしながら子どもの世話を妻だけに任
せない傾向が見られた。これは家庭科の成果の一つと言えよう。し
かし学生時代を振り返り、家庭科の多くの領域で知識や思考を深め
られたと考えている男性はそう多くなかったということは、家庭科
の課題ではないだろうか。例えば男性たちは、家庭科の中でも特に
保育の知識や思考を深められたとは認識しておらず、子育ての実践
も、現実的には「遊び」で止まっていると言わざるをえない。男性
が実質的に家庭の子育てに参画できるためには、「世話」にアプロ
ーチできる実践的学習の検討も必要ではないだろうか。今後は、更
に男性の属性(年齢、子ども、就労条件等)の条件別分析も進める。