抄録
【目的】
? 健康増進のためには、バランスの良い食事、適切な運動、十分な休養・睡眠をとることが大切であることが知られている。しかし、20歳代では朝食を欠食する割合が高値であり、そのうち朝食に何も食べないと回答している者は男性12.9%、女性13.5%であった(平成27年度国民健康・栄養調査結果)。食品群別摂取量をみると、野菜類はどの年代も目標値の350gに達していないが、特に若年層では摂取量が少なく、20歳代男性257.1g、女性226.8gに留まっている。果物類、乳類の摂取量も低値であることから、1日に必要なビタミン・ミネラルを十分に摂取できていない可能性が高い。
? また、睡眠の状況については、1日の平均睡眠時間が6時間未満の者が増加しており、睡眠時間が不十分であると同時に、寝つきや日中の眠気を感じている者が多くみられている。
? 教員養成課程の大学生は、将来、学校において児童・生徒へ教育する立場であることから、自らが模範となるよう規則正しい生活を早期に身につけることが必要であると考えた。
? そこで本研究では、大学生を対象に生活時間調査を行い、食習慣状況の実態を把握し、今後の課題を検討することを目的に行った。
【方法】
? 2016年6月、教員養成大学の学生で、初等家庭の受講者2~4年生189名を対象とした。生活時間調査は、平日(大学授業がある日)と休日の2日間、調査対象日の行動を5分刻みで記録し、あわせて同日の食事内容を記録してもらった。回答に不備があるものを除き、95名を解析対象とした。
【結果および考察】
? 大学生の平日の起床時間は6時台46名(48.4%)、7時台30名(31.6%)、就寝時間は24時以降の者が57名(60.0%)であった。休日の起床時間は、6~9時台に分散しており、就寝時間は24時以降の者が53名(55.8%)であった。学業以外の行動のうち、部活・サークル活動をしている者は平日32名(33.7%)、休日39名(41.1%)、アルバイトをしている者は、平日32名(33.7%)、休日47名(49.5%)であった。休日にアルバイトをしている者のうち、1日に8時間以上している者がおよそ2割であった。
? 食事について何も食べていないと回答した者の割合は、平日では朝食8名(8.4%)、昼食1名(1.1%)、夕食3名(3.2%)であった。食事摂取の時間帯は朝食が8~10時であるのに対し、夕食時間は16~23時であり、食事摂取の時間の幅がみられた。休日では朝食11名(11.6%)、昼食7名(7.4%)、夕食6名(6.3%)の者が何も食べていないと回答した。休日にアルバイトをしている者が帰宅後に夕食を摂取しており、食事時間が22時以降になっていた。
? 主食・主菜・副菜をそろえた食事をしている者は、平日では朝食12名(12.6%)、夕食25名(26.3%)であり、夕食の方で食事をそろえている者が多くみられた。しかし、全体として主食のみや複合料理(主食と主菜が1つになった料理)が多くみられ、野菜や果物、牛乳・乳製品の出現頻度は少なかった。
以上のことから、大学生は学業以外に部活やサークル活動、アルバイトに費やす時間が多いため就寝時刻が遅くなり、朝食欠食や食事摂取の時間が不規則になっていることがわかった。食事の質や量のみならず、摂取するタイミングを含めた総合的な栄養教育の必要性が確認できた。今後の課題として、不規則な生活を過ごしている学生に対して、睡眠の重要性、生活環境の改善も含め食意識を高めることが必要であると考える。