抄録
【目的】
COPD患者に対する短期間の集中的な高強度の運動療法は呼吸困難を軽減させ,運動耐容能やADLを改善させる.わが国では肺結核後遺症や塵肺といったCOPD以外の慢性呼吸器疾患患者も多いが,高強度の運動療法の効果に関する報告は少ない.
本研究では,肺結核後遺症患者と塵肺患者に対する高強度の運動療法の効果について検討した.
【対象と方法】
本研究参加の同意を得た肺結核後遺症患者24例(男性19例,女性5例,平均年齢71.4±5.2歳,%肺活量 56.5±12.8%,1秒率62.8±16.9%)と塵肺患者25例(全例男性,平均年齢71.1±6.1歳,%肺活量 72.7±20.0%,1秒率58.6±17.9%)を対象とした.
運動療法は外来にて週2回,10週間実施した.運動療法の内容は,高強度負荷(最大運動能の80%の運動負荷)による持久力トレーニング,上下肢筋力トレーニング,呼吸筋トレーニングである.評価は,運動療法介入前,10週間後の時点で,肺機能,6分間歩行距離(6MWD),呼吸困難(BDI),ADL(千住ら),最大吸気筋力(PImax)を実施し,比較した.
【結果】
肺結核後遺症患者では,運動療法介入前後で6MWD:416.6→471.3m,BDI:6.8→7.5,ADL:79.7→87.2点,PImax:62.4→76.5cmH2Oと有意な改善がみられた(p<0.05).
塵肺患者では,運動療法介入前後で6MWD:429.7→467.2m,BDI:6.8→7.5,ADL:80.4→83.9点,PImax:65.0→77.7cmH2Oと有意な改善がみられた(p<0.05).
両疾患ともに肺機能は差を認めなかった.
【まとめ】
今回,肺結核後遺症患者,塵肺患者ともに,高強度の運動療法により呼吸困難が軽減し,運動耐容能,ADL,最大吸気筋力が改善した.
肺結核後遺症や塵肺といったCOPD以外の慢性呼吸器疾患患者に対しても短期間の高強度の運動療法は有効であった.