日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: P13
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第60回大会:ポスター発表
児童の製作技能に対する意識と課題
池﨑 喜美惠
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キーワード: 家庭科, 製作技能, 苦手意識
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抄録
【目的】 衣生活の外部化や簡素化により、被服製作の技能の習得の必要性は軽減されてきている。先に報告した第5・6学年の児童の製作実習に対する意識調査によると、第5学年の児童の意識は高い反面、第6学年の児童の意識は下降傾向にあることが散見された。
 そこで、本研究は、被服製作技能に対する苦手意識はどこに現れているのかを明らかにするために、小学校家庭科での製作技能に対する第5学年から第6学年にかけて児童の意識の変容を検討した。第5学年の児童は製作技能に対して肯定的な意識を把持しているが、興味関心や意欲を継続させるためにはどのような課題があるかを明らかにすることを目的とした。
【方法】 都内の小学校3校第6学年の児童236名(男子123名、女子113名)を対象に、2016年10月~12月に質問紙調査を実施した。調査内容は、製作技能14項目(たとえば、糸を通す、玉結び、なみ縫い、ミシンの上糸をかけるなど)について、第5学年の時および第6学年になって難しさや苦手意識をどのように感じるかについて4件法で回答させた。また、被服製作の授業や授業後の実践度についても尋ねた。さらに、自由記述により家庭科担当教師に製作実習の内容や実習授業を通して感じたことについて調査した。
【結果および考察】 1. 第5学年と比べて第6学年の製作学習は、男子18.5%、女子8.4%が「難しい」と回答し、男女間に有意差が認められ、男子の方が難しさを感じていた。また、第5.6学年とも「玉どめ」「なみ縫い」「しるしつけ」「ボタンつけ」には有意差が認められ、製作技能に対して難しいと感じている男子が多いことが明らかになった。第6学年になると男子は「針に糸を通す」「玉結び」を、女子は「針に糸を通す」「玉結び」「なみ縫い」「印つけ」「ミシンの上糸をかける」を難しくないと感じていた。
2. 男子は第6学年になると「針に糸を通す」「玉結び」「玉どめ」を得意と回答する児童が1割強増加した。一方女子は、「玉結び」を第5学年の時より得意であると回答した児童が3割増加した。女子の6~7割が、「玉結び」「なみ縫い」「印つけ」を「かなり得意」と回答し、すべての項目に対して、児童は得意になったと感じていることから、第5学年の学習の成果が表れているといえる。
3. 第5学年の時および第6学年になった時の意識の変容を検討すると、「糸を通す」「玉結び」「玉どめ」「ボタンつけ」「ミシンの直線縫い」について、t検定の結果、上位学年になるにつれ簡単であるという意識が顕著に表れていた。また、すべての項目に対し、得意感の上昇が表出された。
4. 3校中2校は作品キットを使用したり、小物入れ、きんちゃく袋、ナップザック、クッションカバー、テッシュボックスカバーなどを製作していた。また、学習後家庭で実践したかどうかを尋ねたところ、男子約33%、女子約64%が実践しており、女子の実践度の高さに有意差が認められた。
5.  家庭科担当教師は、日頃、用具を使い慣れていたり、家庭で実践している児童ほど、技能の上達度には差が出ていること実感している。また、技能の個人差や指導できる時間が制約されるため、指導や技能の定着には困難を感じている。
6. 児童に手指を使用して製作することを経験させることは、生活者としての基礎を培ううえで指導する価値はあると考える。特に「玉どめ」「ミシンの上糸をかける」「ミシンの下糸をまく」は、第5学年の児童にとっては難易度の高い技能例だといえるので、丁寧に指導をする必要がある。手軽に布製品を買える時代であるが、児童に手縫いやミシンで製作するための技能を学習する必要性を意識化させるために、教師が明確な指導観を持っていなければならない。さらに、第5学年の時に感じている製作の楽しさや意欲を持続させるためにも、児童が計画段階で製作過程のイメージを明確に持て、思考が深まるような題材の構成や指導の工夫が必要である。
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© 2017 日本家庭科教育学会
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