抄録
【目的】これまでに行った省エネ教育効果に関する調査から,食生活に関して省エネ教育を行うことで意識変容や行動変容効果が得られることが明らかとなっている。そこで,今後省エネ教育を広く導入していくことを鑑み,行動変容ステージと合わせ,発達段階に応じた教育が必要であるとの観点から,昨年度は高校生と大学生を対象として省エネ教育を実施した教育効果の違いについて検討した。その結果,省エネ行動の実践の意欲は,高校生,大学生共に高まるものの,高校生は意識の変容にとどまり,大学生は行動変容につながっていることを確認した。これは,高校生が自分自身の生活における食に関する場面に,主体的に携わっていないことが原因の1つと考えられた。このことから,教育による省エネ行動変容効果は発達段階に応じて,生活内で実践しやすい項目を取り入れながら教育を行うことの重要性で実践につながる可能性が示唆された。そこで,本調査では,これまで大学生及び高校生に対して行ってきた教育を中学生に対しても同様に行い,教育前後のアンケート調査結果から中学生と高校生及び大学生の違いを明らかにするとともに,今後の情報提供及び教育のあり方及び省エネ教育の汎用性について検討することとした。
【方法】対象は,F中学校普通科2年生72名,F高等学校普通科2年生62名,T大学家政学部服飾美術学科3年生59名とした。調査方法として,省エネ教育(省エネに関する講義及びエコ・クッキング体験)の前後にアンケートを実施した。省エネ教育では,講義として,地球温暖化をはじめとした環境問題や日常生活での省エネ行動の大切さに加え,買い物,調理,片付けのポイントなどエコ・クッキングの考え方を解説し,調理実習ではそれぞれの指導要領に合わせた献立について,工程毎に日常の行動を振り返りながら,講義で学んだことを実践した。アンケートには,環境問題への関心度,日常の省エネ行動の実践度などに加え,より詳細に分析するために,食生活に関する省エネ行動15項目の実践度についての項目を用意し,教育前のアンケートから各生徒,学生の省エネ行動の現状を把握し,教育後のアンケートでは教育効果を把握した。
【結果】アンケートより,教育前後で環境問題へ関心度は関心のある割合(「とても関心がある」「やや関心がある」)が中・高・大学生すべて増加し,関心が高まっていることを確認した。教育前は中学生と高校生は同等レベルであったが,教育後は中学生の方が関心度が上がっていることを確認した。また,省エネ行動の実践度も環境問題への関心度と同様の傾向を示し,教育前後で増加した。また,中学生,大学生のほうが高校生よりも実践度が高いことが明らかとなった。食生活に関する省エネ教育による行動変容効果について,「買い物」,「調理」,「片付け」に関する設問について,食生活に関する省エネ教育の前後での実践度を確認した結果,「買い物」では大学生,中学生において行動変容効果がみられ,特に,「マイバッグの持参」等の社会規範が存在する項目や「旬の食材を選ぶ」等の省エネ以外の付加価値が存在する項目は比較的教育効果が高くなることがわかった。次に「調理」では中・高・大学生いずれも,他の食生活行動に比べて教育効果が高くなった。これは調理実習という体験学習による教育効果だと考えられた。「片付け」では,大学生では行動変容効果は見られたものの,変化はそれほど大きくなかった。今回の調査において,大学生>中学生>高校生の順で行動変容効果が高くなることが分かった。大学生においては,講義のみの教育でも,行動変容効果が得られるものの,中・高校生においては,講義だけではなく,知識を自分の経験として実体験できる調理実習などの体験学習機会を設けることで,行動変容に繋がることが示唆された。今回の調査ではいずれも限られた対象に対して行った結果であることから,今後対象を変え同様の傾向が見られるかどうかを検証していくことが必要である。