抄録
【目的】
日本においては、家庭科が生活科学に基づく知識・スキルを通して、生活文化的価値観を学ぶ機会を与えているが、外国につながる児童にとっては異文化である日本の生活文化を学ぶ際の難しさがあると考える。言い換えれば、家庭科の学習こそが、外国につながる児童に、生活文化を実践的に学ぶ重要な機会を与え得る。
そこで、本研究においては、家庭科を初めて学ぶ小学校の5年生の最初の家庭科のガイダンスにつながり、2年間の家庭科学習の見通しがもてるような家庭科ガイドブックを開発する。このガイドブック使用により、対象の子どもたちや家庭が日本の生活文化への理解を深められるように、需要の多い4外国語(中国語・英語・ポルトガル語・フィリピノ語)を選び、日本語版と同様の文章にすることで、日本語を学ぶ機会を増やしたいと考えた。
ここでは、日本語版の内容を示し、中国語・英語については目次を示す。最終的には、ポルトガル語・フィリピノ語版の発刊も予定している。
【方法】
外国につながる児童の現状を理解し、学校・家庭生活のなかでの課題に関するヒアリングと、日本の家庭科の小学校の家庭科の内容をもとに日本語版家庭科ガイドブックを作成した。なお、日本語を学ぶ機会を増やすために、翻訳は日本語ガイドブックと同じイラストを使い、文章を忠実に翻訳した。また、この外国語家庭科ガイドブックの教育的効果を測るために、ガイドブック使用後に意見・感想を聞いた。
【結果と考察】
外国につながる児童が感じている課題は、日本のライフスタイル・食べ物や調理・実習の準備・洗濯やそうじ・気候の応じた着方などであった。また、日本の小学校家庭科は、家庭生活や家族・日常の食事と調理の基礎・快適な衣服と住まい・身近な消費生活と環境で構成されていることから、日本語ガイドブックは以下のような内容とした。
・家族:日本の家族の特徴・家族で楽しむ1年の行事
・食文化:和食のとくちょう・調理(料理)のための道具・こんろの使い方/包丁の使い方・ごはんとみそ汁をつくろう・卵料理をつくろう・野菜いためをつくろう・食品の栄養と献立
・衣文化:日本と他の国の民族服・ぬい方の基礎・あたたかい着方とすずしい着方・きせい服の表示の見方
・住文化:住まいと整理とせいとん・安全な住まい方
・消費・環境:家族のみんなにやさしいユニバーサルデザイン・環境問題をもたらしてもの・環境にやさしいことをやってみよう
たとえば、家族で楽しむ1年の行事として、正月・節分・ひな祭り・花見・子どもの日・梅雨・七夕・盆・月見・祭り・七五三・大掃除などが躍動感のあるイラストとともに示されている。
外国語家庭科ガイドブックの使用後の意見・感想をみると、日本の行事に関する関心が高まり、生活のなかで何となくマネしていたことが実践的に理解できたことが示された。和食や調理技能や献立についての内容に対する有用性も示唆されている。気候の暖かい国からきている児童が、日本の寒い季節を快適に過ごすための着方を知ったり、清潔な暮らしを支えているそうじの仕方に関する知識・スキルを得たことが明らかになった。また、日本における生活文化への尊重と同時に自国の生活文化を再確認する機会になることから、この外国語家庭科ガイドブックは生活文化の多様性への理解につながる教育的効果があると考える。