日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: 1-2
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2017年例会
住生活における音環境に関する1/10住宅組立模型を用いた授業実践
広川 智子*飯野 由香利
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キーワード: 1/10組立模型, 音実験, 騒音
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抄録
【研究の背景と目的】

高校生を対象とするアンケート調査から多くの生徒が音環境を意識して生活していないことが明らかになった。一方でほとんどの生徒が生活音をうるさく感じてはいるものの生徒自身の自宅で対策していない。騒音対策をしていない原因として「方法が分からない」、「我慢する」などの考えが多い。

本研究の目的は、縮尺1/10の住宅組立模型を用いて、生徒に壁材の基本的な防音性能を理解してもらい、住まい方の工夫による室内の音環境改善ついて学習してもらうことである。

【防音実験の概要】

防音実験では縮尺1/10住宅組立模型の2畳間を部屋で騒音を測定する。2部屋の壁を182mm空けて設置し、2部屋の間に騒音源として防犯ブザーを防振材料の上に載せて固定させる。2部屋の壁を同種類で囲み、天井は中央に穴を開けて騒音計1台ずつを上部から差し込んで、外部から部屋内への音の伝搬量を計測する。

・「建築材料の持つ防音性能」を学ぶための実験:7種類の壁材(グラスウール、紙、木、ガラス、コンクリート、花崗岩)から1種類を選択して壁4面を取り付け、壁材の防音性能を計測する。

・「住まい方の工夫による騒音対策」の実験:模型の1部屋の壁の室内側にフェルトを設け、もう1部屋に本棚を設置し、防音性能の違いを比較する。

続いての実験として、壁内の室内側を身近な材料で囲み防音性能を騒音計で測定する。

【授業実践の内容】

2017年8月中旬に新潟県N市内のA中等教育学校の4・5年生(高校1・2年生)44人を対象に音に関する授業実践を行った。各班は3~4人で構成し、6~7班で実験を行った。

授業展開を示す。1)音に対する建築の性能「防音」と「吸音」の解説、2)音の強さのレベル(IL)と 音圧レベルSPL デシベル(dB)の説明、3)騒音計の使い方、計測方法の概説、4)実験上の注意喚起、5)音実験の実施(①音源からの直達音を測定、②騒音計を建築材料で囲み測定、③騒音計をさらにカーテン等で包み測定)、6)実験結果をグラフ化、7)実験結果から音環境に関する解説。

【アンケート調査の概要】

授業前後にアンケート調査を行った。回収率は100%で44人のデータを得た。アンケートの内容は、1)授業全体の理解度(①理解できたこと、②分かりやすかったこと、③理解できなかったこと、④難しかったこと)、2)材料の基本防音性能の理解度、3)住まい方の工夫による騒音対策の理解度、4)騒音対策への興味、5)音環境教育を受講した感想、などである。

【結果】

1)授業全体の理解度

授業全体の理解度を確認した結果、理解できた、分かりやすかった内容は「壁材の種類ごとの防音性能の違い」が86%で高く、次に「遮音性の高い材料」57%であった。これは模型を用いたことや比較実験により壁材の種類や遮音性の高い材料を認識したためと推定される。

2)壁材の防音性能の理解度

各壁材の防音性能については「とても理解できた」+「少し理解できた」割合が100%であったことから、ほぼ理解できたと言える。

3)住まい方の工夫による騒音対策の理解度

住まい方の工夫による防音性能は「とても理解できた」+「少し理解できた」割合が86%であった。防音性能を学ぶことで生活が良くなると思う割合が授業前の86%から授業後に95%に上昇した。

4)騒音対策への興味

 授業前は騒音対策への興味がある割合は62%に対し、授業後は90%に上昇した。

5)音環境教育を受講した感想

 音環境の授業を受講し「面白かった」割合は100%であり、面白かった内容は「騒音計の計測」「各壁材の音実験」「遮音と吸音の基本原理」であった。

謝辞

本研究は科学研究費助成事業(基盤研究(c) 課題番号15k00925 代表者 後藤哲男)の研究助成を受けた。ここに深謝の意を表する。
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