日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: 3-4
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2017年例会
中学校家庭科における日常着の手入れの指導内容の検討
都甲 由紀子*財津 庸子
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抄録
1.研究目的・背景 現代の衣生活の中で,衣服は家庭内で製作するものではなく購入するものになっている。家庭科の中でも裁縫の実習を扱う内容は減少し,衣服を手入れしてどのように衣生活を送るかの内容が重要視されるようになっている。そこで,日常着の手入れについての学習指導要領や教科書における記述の変遷を分析し,関連する科学技術開発や文化の歴史を踏まえつつ,指導内容を検討することを本研究の目的とする。


2.研究方法 平成元年?29年までの学習指導要領と中学校家庭科教科書における日常着の手入れの内容を分析する。発行されている3社の教科書を調査対象とする。「洗濯」「衣服の収納・保管」「衣服の補修」に関連する内容を抽出し,その内容に影響を与えてきた科学技術開発や文化の歴史と現状を確認し,教科書への反映の状況を調査し,新学習指導要領に基づく指導内容をふまえ,教材を開発・提案する。衣生活(日常着の手入れ)の内容を深める教材とともに,環境(資源・生活排水等)・家族・家庭生活(家事労働・ジェンダー・絵本等)の内容に通じる教材を具体的に検討する。


3.研究の結果 平成元年改定の「中学校学習指導要領 第2章 各教科 第8節 技術・家庭」において「日常着の手入れ」は「家庭生活」の家庭の仕事として位置付けられていたが,その後は「生活の自立と衣食住」,「衣生活・住生活と自立」,「衣食住の生活」の一部となっている。平成20年告示で現行の学習指導要領の中では,日常着の手入れに関する記述として「衣服の材料や状態に応じた日常着の手入れができること」と示されている。この指導要領に基づく教科書の記述には,手入れの仕方の解説とともに洗濯,アイロンかけ,衣服の補修等の実習が取り上げられている。平成29年3月に公示された新指導要領では,「衣服の材料や状態に応じた日常着の手入れについて理解し,適切にできること」「日常着の手入れの仕方を考え,工夫すること」と改定されており,日常着の手入れに関する指導内容について充実が求められている。今後,手入れの方法の解説や実習に終始しない教材の開発が望まれると考え,具体的な教材と指導内容を提案することとした。授業の導入に使える教材として,洗濯する人が描かれている名画や浮世絵,洗濯中の人の写真や映像,絵本「みんなでせんたく」,科学技術の進歩に伴い開発された新しい洗剤の成分や形態,洗濯物を畳む機械の事例等を提案し,環境や家族・家庭生活に通じる内容も取り入れて,生徒が考えて理解を深めることを目指した指導内容を検討した。


4.考察 注意深く手入れをしなくても衣服はすぐ買い換えることができるという意識も一般的になっているように見受けられる。現代の生活の中で洗濯は機械に任せる家事になっており,洗濯機の中はブラックボックスになっているため,「日常着の手入れ」は学習の動機付けや当事者意識を持たせにくい。手入れの方法のみを教えるのではなく,魅力的な導入教材を検討し,手入れの必要性,手入れの意義,手入れのより良い方法について問いを立て,将来の衣生活を想像させて考えさせる活動を加えることで「日常着の手入れ」についてより理解を深める指導内容を提案することができると考える。
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© 2017 日本家庭科教育学会
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