日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: 3-3
会議情報

2017年例会
環境配慮への行動力と生活文化の継承・創造力を育てる家庭科教育の試み
冬季長野県における中学生向き指導法の開発と検証
福田 典子*長谷川 美紀*小林 里美
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抄録
【目的】
 長野県北・中信地域は降雨量が少なく晴天日数が多い気候特性より高原野菜や果樹栽培が盛んであり,野菜や漬物の摂取量も多い。かつては養蚕業が盛んで諏訪地方の絹博物館は小学校と連携し多彩な教育活動の試みもなされている。年間・日内気温変動が大きく,冬季の気温低下や積雪も多い気候特性より,衣食住の生活にも独自の工夫がなされている。近年家庭科では,持続可能な次世代の社会形成および地域の生活文化の継承や創造に生徒の関心を高め,その学習意義を理解させ,その実現を目指す指導のあり方が検討・提案されている。

 県内の旬の食材を生かすことの重要性や廃棄物の減量化・資源化を意識することは,生徒が多様な環境配慮行動を自己判断で推進するための行動力と本県の気候風土に根ざした生活文化の継承・創造力の基礎に繋がるものと期待し,授業研究を行った。本研究では,これらの教育プログラムの試行により,消費者市民社会の一員育成を狙った家庭科教育の可能性を見出すことを目的とした。

【方法】

 家庭分野の中で,多くの時間数が配当されている食生活および衣生活の研究を中心に行った。食生活では本県の冬季特産物である「林檎」を素材とし,エコクッキングを意識した調理法の考案に注目した。衣生活では「紬糸」を素材とし,紬着物試着体験などを含め,紬糸と生糸の違い,残りもの(草木)染め等の教材の検討を行った。残りもの染めの材料として冬季収穫加工最盛期の野沢菜および長芋の廃棄部から抽出された色素に注目した。教材研究および授業研究は平成28年11月~平成29年1月に行った。検証授業は,平成29年2月~3月,N県S大学教育学部附属N中学校第2学年男女約40 名および附属M中学校1学年男女約40名を対象として実施した。いずれの教材および指導法に関しても,授業前後に生徒の関心や意識に関する調査を行った。調査票は4件法として,1点全く思わない,2点あまり思わない,3点そう思う,4点とてもそう思うとして,学習効果の検証を行った。

【結果と考察】

 授業は2学年「食生活と環境」1学年「衣生活と環境」として扱った。食生活と環境では生徒が林檎の材料特性を生かしながら,信州の粉食文化を継承し,かつ廃棄物の減量化を推進するための調理法をグループで考案し,生徒相互に良い視点を指摘し合い,調理法の幾つかを実際に実習し,試食し確かめる指導法を開発した。衣生活と環境では,絹(紬)糸および残りもの染めに注目させた。生徒が染色技法のルーツでもある叩き染めを事前に体験し,その後野菜廃棄部に含まれる色素を活用した野菜のこり染めを中心とした染色・造形実習を行う(紬糸のタッセルづくり)指導法を開発した。

食生活と環境の実践では,考案したレシピへの生徒相互のコメントに,「エコだけじゃなくて,郷土料理に似せているところがいいな」「材料の他に(燃料)ガスにも気を遣っていてエコだ」などが挙げられた。また授業後の感想には「どの案も独創的で林檎だけでこんなにアイディアが出ることに驚いた。」など,生徒にとって創造的であり思考的な授業であった様子が伺えた。「林檎を全て使い尽くす調理法」への生徒の関心の平均値は,授業後3.83であった。衣生活と環境の実践では,授業前後において男子の紬糸への関心の平均値は2.61から3.00へ増大した(ns)。すなわち,事前にマイナスだった関心が授業後にプラスに変化する傾向が認められた。授業後「もったいないの気持ちで生活すること」への重視意識は,食生活と環境の実践では3.83,衣生活と環境の実践では3.36となった。

 本研究で開発したいずれの教材・指導法においても,改善の余地は多いものの授業後に学習者から肯定的回答を得たことから,開発教材・指導法の指導効果の可能性が示唆された。
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