抄録
目的
本研究では、子どもへの金銭の教育と生活時間の管理の面から、子どもが主体的に判断する機会を与え、子どもの価値観を育て実践する場として家庭や地域教育のあり方を考える。そのために、経済的に困窮する家庭の子どもへの学習支援を取り上げる。学習支援の支援者の立場から、子どもと家庭(保護者)に対する金銭と生活時間の過ごし方に関する支援と情報共有について明らかにすることを目的とする。本論においては小学生、中学生を子どもと表した。
方法
生活困窮世帯への学習支援を実施する自治体で、支援者を調査対象とする質問紙調査を行った。支援者は、ボランティアが55名、事業委託NPO法人と雇用契約をしている教育支援員あるいはスタッフが12名、雇用契約をしていない無償スタッフが1名、その他2名、記載なし8名である。このうち本研究で分析対象としたのは、支援する対象が小学生のみの支援者11名、小学生と中学生の両方に関わっている支援者23名、中学生のみの支援者は16名である。質問項目の内容は、状況把握と支援内容、学習支援に参加してから子どもや保護者が変化したと思われる点について、それぞれ4段階評価で回答を求めた。
倫理的配慮
本研究は、佛教大学「人を対象とする研究」倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果
1.生活困窮世帯への学習支援等、地域教育においては、子どもや保護者が学校との関わりがないと、子どもへのお金の教育とともに保護者への情報提供が必要とされた。
児童生徒にお金についての教育をすることと、保護者に就学資金等の情報を提供することとは関連性があった。子どもの環境面の問題として、子ども自身が学校や家庭で孤立していたり、基本的生活習慣が身についていない、また子どもの問題で保護者と学校や専門機関が連携できない、コミュニケーションが取れない状況と、子どもへの金銭の教育を行うこととの間に関連があった。また保護者の問題として、専門機関の相談支援の必要や学校との関わり、教員とコミュニケーションが取れない問題と、保護者への就学資等の情報提供とは関連が見られた。
2.学習支援に参加してからの児童生徒や保護者の変化について、高い評価をする支援者のグループは、子どもへのお金の教育や保護者への就学資金情報の提供を行っていた。子どもにお金の教育をする支援者は、子どもが自分の意見を言えるようになる変化を評価した。また、保護者への奨学資金の情報提供をする支援者は、子どもが自分の意見を言えるようになり、保護者が子どもと将来の話をするようになったこと、保護者が学校行事に参加するようになり、教員とコミュニケーションがとれるようになったことを高く評価した。
3.子どもの生活時間の過ごし方を情報共有している支援者グループは、保護者が学校行事に参加しない、教員とコミュニケーションが取れない問題を把握し、それが子どもへのお金の教育や保護者への就学資金の情報を提供する支援に影響していた。
追記
本研究は, 文部科学省科学研究費【基盤研究(C)】「生活保護世帯の家族コミュニケーション力を促進する学習支援プログラム実践モデルの構築」(研究代表:三沢徳枝)の助成によるものである。