抄録
【目的】
住民自らが生活拠点である地域のあり方を考え、課題などに対して自らどのようなかかわりができるかを考えることが豊かな地域社会を形成すると考える。しかし、近年特に若者の地域への関心の低さや帰属意識の希薄さなどが指摘されている。学校教育においても社会に出た際に地域とかかわる術を身に付け、地域社会を創造する担い手としての自覚を持つための学習が重要である。
そこで本研究では、心身共に発達し、社会に出る一人前の人間として形成される準備段階であり、また自らが考え、行動することが社会的にも求められている高校生が地域に主体的にかかわる意欲につながる家庭科の地域学習を検討することを目的とする。高校生の生活の実態を考えると、小・中学校とは異なり、自身の自宅がある地域(以下、自宅地域)ではなく、遠方に所在する学校に通学することが大半である。二つの地域社会で多くを過ごしながらも、勉学や部活等で忙しい等の理由から地域との接点も少なく、当事者意識も持っていないと考えられる。そこで、高校生がかかわる自宅地域と学校地域に対する意識調査を実施し、この2つの地域社会に対する意識を比較することによって、高校生の地域の捉え方を考察する。
【調査方法】
(1)時期:2017年8月~9月
(2)対象:神奈川県立K高等学校、家庭基礎を履修する1・2年生552名
(3)方法:石盛ら(2013)が作成したコミュニティ意識尺度を一部改変し、「地域への参加意欲」「地域へのかかわり方」「地域への愛着」「生活者としての自覚」の各3項目について5件法で回答
【結果及び考察】
(1)地域への参加意欲に関する3項目からは、地域への連携・積極性について考察した。「社会的活動やボランティア活動等に参加したい」は、自宅地域では約40%以上占めていたが、学校地域では約30%にとどまっていた。しかし、住民と連携して何か行動を起こすことによって自らの生活を豊かにしたいと考えている割合も自宅地域が約50%、学校地域が約35%を占めていたことから、地域がよくなることは自分の生活も豊かになると考えていることが分かった。
(2)地域へのかかわり方に関する3項目からは、住民と行政の在り方に関する考え方を考察した。「地域の問題解決には住民と行政が対等な関係を築くことが重要」と考えている割合は両地域ともに約70%以上を占めていた。「地域を良くしていくためには住民が主体的に決定する必要がある」の回答が「行政は住民に協力しなければならない」よりも割合が高いことから、住民側がより主体的にかかわることが必要と考えていた。
(3)地域への愛着の3項目では、自宅地域と学校地域で最も大きな差が表れ、「自宅地域に愛着を感じている」の回答は約65%に対し、「学校地域に愛着を感じている」は約30%であった。
(4)生活者としての自覚に関する3項目からは、地域のことを自分事として捉えているか考察した。自宅地域で約63%、学校地域では約35%が「地域の環境整備は行政に任せておけばよいと思わない」と回答しており、また「地域をよくするためには、自分以外の他者に依頼するべきではない」の割合も高かった。しかし、両地域ともに「住民運動が起きたらそれにかかわりたくない」と回答した割合が高く、地域で起こったもめ事にはあまりかかわりたくないと考えていた。
(5)本調査から、高校生は特に「地域への参加意欲」「地域の愛着」に関しては、自宅地域は高いが、学校地域は低かった。その理由として、①学校地域は自宅地域よりもかかわりがなく、生活体験が少ないこと、②単に通学する場として考えていること、などが考えられる。しかし、自分自身も地域へ関わることの必要性を感じていることからも、全く無関心ではないことが分かった。特に1日の大半を過ごす学校地域への愛着や参加意欲を高めるためには、住まう人の立場になって学校地域を見ることのできる授業が必要だと考える。