日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: B2-2
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ジグソー法で学ぶ中学校家庭科の授業開発
住生活授業の生徒の記述分析から
*金子 京子伊深 祥子小川 裕子飯野 由香利藤原 恵里
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抄録

1、問題と目的

 平成29年告示の中学校学習指導要領では、技術・家庭(家庭分野)の住生活は、「衣食住の生活」として扱われることになった。住生活の内容は「住生活の機能と安全な住まい方」とされた。高等学校の調査では住生活の学習は教えにくいとされている(宮崎ら2008)。中学校でも住生活の授業実践は教えにくいとされる内容である。小川ら(2014)は、住生活領域の授業配当は4~6時間がもっとも多いことを示している。本研究の授業内容は、中学校技術・家庭(家庭分野)の「住居の機能と安全な住まい方」の中の「家族の生活と住空間との関わりが分かり、住居の機能について理解すること」である。ジグソー法を用いた4時間の住生活の授業開発を行った際の効果について明らかにする。

2、研究方法

 研究対象は、さいたま市H中学で初任者が指導する1年生2クラスである。授業実施時期は2018年1・2月である。研究方法は記述分析である。授業後の3回の生徒の記述を分析対象とした。

3、授業の概要

 5時間扱いのカリキュラムの2時間目から5時間目の4時間を使い、ジグソー法を用いて「家族の生活と住空間との関わりが分かり、住居の機能について理解すること」を取り上げた授業を実施した。2時間目の初めにジグソー法の学習を実施することを伝えた。使用した資料は、A日本家屋・Bスマートハウス・C高層マンション・Dコレクティブハウスの4つである。4~5人のホームグループで、各自が資料を読み込んだ後、3時間目に発表原稿の作成を行った。4時間目と5時間目は、ジグソーグループ゚による活動を実施した。発表は、質問時間を含めて10分とした。ジグソーグループでは、質問を考えたり答えたりすることが、学びに効果的であると考え、質問することを、ジグソー学習中の机間指導の重要な配慮事項とした。最後に授業から学んだこと、自分の理想の住まいについて記述した。この課題の完成は家庭学習となった。

4、結果と考察

 計3回の授業後の生徒の記述(ホームグループの学習後とジグソーグループの学習後、および自分の住みたい理想の家を考えた後)をまとめた結果を、下記に示す。

:ホームグループ学習後:ジグソー学習直後 :理想住まい記入後

1位家に関する知識  1位家に関する知識 1位住む家の条件

2位発表に関する学び 2位発表に関する学び2位家に関する知識

3位授業感想     3位住みたい家   3位住みたい家

4位住まいを知りたい 4位授業感想    3位住みたい間取り

5位住みたい家    5位将来への参考  3位授業感想

 計3回の記述から、ジグソー法を用いた学習では、生徒は授業を進めるごとに家に関する知識・理解を深めていることがわかる。特に「いろいろな家の特徴が分かった」等の『家に関する知識』は3回とも上位に入っており、自分が住む家について考える指針となっていた。次に授業の中にでてくる4つの家のどれかに住みたいという意思を明記する『住みたい家』に関する項目が回を増すごとに高くなっていた。最後に、自分の理想の住まいを書いた後の記述では、「今までは豪華でおしゃれな家に住みたいと思っていたけれど、様々な家の勉強をして、ただ広くておしゃれな家なのではなく、住みやすさや何十年住んでも飽きない家が1番いい家だと実感しました・・」等住む際に配慮したい『住む家の条件』が1位になっていた。

 このように住居学習をジグソー法で学ぶことから、住生活について知識や考えが自分の生活とかけ離れていた生徒が、生活者として住むという視点にたって「住まい」について理解していくことに至っていた。今回の授業は新任の授業者であったが、経験が浅くても対話する授業を実施することができていた。今後どのような内容がジグソー法に適しているかを検討することが課題である。

 本研究は文部科学省科学研究費助成事業(基盤研究(C)課題番号:17K04767 代表者 小川裕子)による。

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