抄録
【研究の背景と目的】
アクティブ・ラーニングの1つである知識構成型ジグソー法を用いた授業が中学校や高校で実践されている。知識構成型ジグソー法による授業を小学校で実践する場合、配布資料の内容を理解する力や説明する力及び対話する力が十分に備わっていない小学生には難しいと考えられることから、授業実践上の工夫が必要である。一方、小学校の家庭科では新学習指導要領において住環境全般の習得を目指している。
そこで本研究では、小学校で住環境に関する実験型ジグソー法の授業を実践し、問題点や改善点を明らかにする。
【授業の内容】
2017年12月16日に新潟県A市立B小学校の5年生(男子15人、女子14人)を対象に、「現在住んでいる家でより快適な生活をするためにどんな工夫ができるか」という課題について、4つの住環境テーマ(A:暖かく住まう、B:涼しく住まう、C:健康に住まう、D:近くに住む人々と共に住まう)から捉える授業を2回行った。4・5人の児童で班を構成し、各人が1テーマを担当し、授業前に自分のテーマに関する資料を各人が読んできた。1回目の授業のエキスパート活動では、各住環境テーマの原理に関する実験を理科室で次の内容で実施した。A実験ではアルミホイルや新聞紙で腕を覆って保温の仕組みや床材の種類による足裏での熱伝導の相違を体感し、B実験で体から熱と水分が出ることをビニール袋を使って理解し、日光を想定した赤外線ストーブからの熱放射を体感し、C実験で箱の2つの窓の開け方の相違による流出量の相違の可視化、及びD実験で紙コップを用いて音の伝搬の仕組みを理解した。2回目の授業前に、各自のテーマの資料内容を復習するために中間課題を出して穴埋め問題に回答してもらった。教室で行った2回目の授業では、ジグソー活動班毎に各自のテーマの要点を他のテーマ担当の児童に説明し、説明を受けた児童はワークシートに理解した内容を記入した。その様子をiPadで収録した。さらに、同授業内で行ったクロストークでは班毎に各テーマで理解できた内容を発表して教員が板書した。総まとめは板書に基づいて行った。分析はルーブリック評価(心地よさ、健康性・安全性、工夫・改善方法の理解、省エネの4つの観点から理解度を評価)と1・2回の授業後に行ったアンケート及びワークシートの記述に基づいて行った。
【結果】
1)住環境に関するテーマ毎に、資料を読み、エキスパート活動で視覚的・体験的な原理実験を行った結果、児童は実験に積極的に取り組んでおり、理解できた内容数は資料内容より実験内容が多かったことから、原理実験は理解の向上に繋がることがわかった。
2)ジグソー活動において、ほとんどの児童が各テーマについて資料を丸読みしており、実験内容に関する説明が少なかった。しかし、アンケート結果からは他のテーマの内容を理解できた割合が8割以上であった。A・Bテーマは身体からの放熱と温冷感との関係の知識が必要であることや資料内容の説明が多少難しかったために理解度が多少低かった。ルーブリック評価により各班でのジグソー活動後の理解度を分析した結果、平均的な理解度や理解度のばらつきが班により異なった。班による相違は主に説明力や聞いて理解する力によると考えられる。
3)クロストーク時に発表された内容は資料内容のみの列挙に留まった。
4) 各テーマにおける家庭実践の内容は、健康に住まうために換気をする(Cテーマ)が最も多く、次いで涼しく住まうためにカーテンを閉める(Bテーマ)や騒音の原因をなくす・遠ざける(Dテーマ)が多く、暖房器具(Aテーマ)も挙げられた。5)小学生が住環境の内容を理解する際に、資料内容の原理を実験するエキスパート活動を取り入れたジグソー法の授業はある程度有効であることがわかった。一方で、ジグソー活動時の伝達や対話を補うための実験時の写真やイラストを活用した資料の必要性が認められた。
本研究は文部科学省科学研究費助成事業(基盤研究(C)課題番号:17K04767 代表者 小川裕子)の研究助成を受けた。