日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: B3-4
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家庭科の学習を通して育むグローバルな視点
「グローバルライフ」学習者へのインタビュー調査からの検討
*横瀬 友紀子河村 美穂
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抄録

研究目的:グローバルな視点を育む取り組みが実践として広がりつつある。家庭科においては日常生活で手にしている物の背景に目を向けさせ、世界とのつながりを気づかせ消費行動を考えさせる実践、生活に関する文化比較などを通じて自国の文化と異文化を理解させるなど様々な実践がみられる。しかし、学習者の変容をとらえるということについては充分にできていないという課題があり、家庭科におけるグローバルな視点を育むということについての研究も途上である。本研究は、スーパーグローバルハイスクール(以下、SGH)に指定された対象校において開発・実践された「グローバルライフ」(家庭基礎代替科目)を研究対象とし、2015年度に実施された授業で学習した生徒へのインタビューを行った。そこで生徒は何をどのように学んでいるかを明らかにし、家庭科の学習を通じてグローバルな視点をもつということの内実について検討することを目的とする。

研究方法:研究対象とした「グローバルライフ」は対象校のSGHカリキュラムにおいて「日常の生活の中から世界とのつながりに気付き、身近なこととして考えられるように視野を広げる」ための基礎科目として、1年次生の必修科目(学校設定科目)として設置されている。2015年度は、私たちの生活と消費行動全般について世界とのつながりについて考える分野、衣分野、食分野の内容を中心に構成されている。この科目では生徒が自分の生活から世界の現状へと視野を広げ、世界の現状から自分の生活を見つめ直すという往還を重視し題材の選定、配置を行っている。昨年度の発表では、2015年度実施の授業を受講した生徒の学習一年後の振り返り記述をデータとし、四つのカテゴリーを生成し分析した。生徒は授業から一年後、生徒それぞれが自分にとって身近なグローバル課題について興味をよせていたこと、特に生徒自ら調べる、討論するなど主体的な取り組みをした題材についての記述が多く挙がったことを報告した。今回は、学習直後の振り返り記述と学習一年後の振り返り記述を用いて学習後から一年経過した学習者の変化を分析した。その上で変化のあった生徒4名に対して半構造化面接法を用いてインタビューを行った。

結果と考察:インタビューの対象生徒は、学習直後の振り返り記述、一年後の振り返り記述をもとにグループ分けを行ったなかで、学習直後の振り返り記述においては「日常の生活の中から世界とのつながりに気付き、身近なこととして考えられるように視野を広げる」という段階まで到達していると考えられるグループに属していた。直後の振り返り記述では全体の約半数の生徒が、同じく授業によって視野が広がり自分の生活と世界とがつながっていることを自分の内面に迫って振り返ることができていた。しかし、一年後の振り返り記述においては、自分の生活と世界とがつながっていることについての具体的な記述は減少していた。そこで「世界や社会と自分とのつながり」について、インタビューを通して詳しく知ろうと考えた。生徒の語りからは、グローバル課題に対して各自がそれぞれの向き合い方をし、自分に関わりのあることとしてとらえていることがわかった。これらは記述では十分に表現されなかったものであった。自分への関わり方については様々に語られたが、いずれも自分の言葉で自分の経験から語ることができていた。家庭科の学習を通じてグローバルな視点をもつということは、学習者にとって遠くにあるグローバル課題を自分の身近な問題とつなげることであると考えられる。

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