日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: P06
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中学校家庭科担当教員に対する研修の実態―免許外教員を中心に―
*日景 弥生志村 結美青木 香保里
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抄録

1.はじめに                                        
 教員には、普通免許状教員(以下、免許保有教員)、臨時免許状教員と免許外教科担任制度による教員(以下、免許外教員)がある。中学校家庭科担当者は少子化に伴う小規模校の増加、少ない授業時数などを背景に免許外教員が増加している。また、免許外教員は、様々な課題(例えば「知識や技能に自信がない」「家庭科教育の意義や重要性を伝えられない」)を抱えているといわれている。そこで、本研究では都道府県における中学校家庭科担当教員、特に免許外教員に対する研修の実態等を把握することを目的とした。
2.方法
2.1.アンケート調査
①対象及び時期:47都道府県教育委員会を対象とし、平成29年8月~10月に実施した。②内容及び方法:「免許保有教員及び免許外教員の人数」「教員研修全体に係る内容」「免許外教員の実態及び研修に係る内容」「特筆すべき実態や研修等」などについて、自記式質問紙法により郵送配布・回収にて実施した。
2.2.ホームページ調査
①対象及び時期:アンケート調査で「免許外教員向け研修を実施している」と回答した7県を対象に、平成29年12月~翌年1月に実施した。②内容及び方法:各県教育センターHPから「研修名」「対象者」「ねらい」「内容」などを調査した。
3.結果および考察
3.1.アンケート調査
 47都道府県中23府県から回答(回答率は48.9%)が得られた。①免許保有教員及び免許外教員の人数、教員研修全体に係る内容(研修数・開設時間等):府県により大きく異なった。②免許外教員への研修等の実施の有無:「実施している」9県、「特にしていない」8県,「無回答」6県だった。③免許外教員の参加状況:「多くの方が参加している」4県、「あまり参加していない」4県、「ほとんど参加していない」1県,「無回答」14県だった。④研修等の形態:「免許外教員のみを対象とする研修を実施」6県,「免許保有教員と同じ研修を受講」2県、「両者を併せて実施」1県、「無回答」14県だった。⑤研修等の内容:「家庭科の知識・技能に関すること」(7県)、「学習指導要領に関すること」(5県)が多かった。⑥免許外教員の指導力:8項目のうち「生徒の実態を踏まえた授業を行っている」は「とても/ある程度そう思う」7県、「家庭科の授業の進め方に自信がある」「自信を持って生徒を評価している」の2項目は「全く/あまりそう思わない」9県、「家庭科の知識や技能が身に付いている」は「あまりそう思わない」8県となり、免許外教員の指導力の評価等は低い結果となった。
3.2ホームページ調査
 免許外教員研修を実施している7県のうち、HP記載の程度から、4県(D、E、F、R)を対象とし、調査した。
①研修の日程:D県、E県、F県は5月に2日~3日間、R県は10月に1日の日程で開催されていた。②対象者:D県は免許保有教員も受講可能であり、E県・F県は前回の受講から時間が経過した教員も対象としていた。③目的:4県とも教科の知識・技能習得及び指導力の向上が目的だった。④内容:4県とも実技研修があった。E県、F県は内容別、E県、F県、R県は評価について、R県は授業改善の具体策について講義・協議を行っていた。⑤対象教科:4県とも技術と家庭の研修があり、5教科以外が多かったが、F県は全教科の研修を実施していた。
 以上のことから、免許外教員の実態は府県により差異があること、免許外教員の指導力は総じて低いこと、免許外教員研修を実施している県は少ないことが明らかとなった。

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