日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: P05
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中学校家庭科被服実習における生徒によるミシンの管理
「ミシンのカルテ」の活用の検討
田澤 紫野*小松 恵美子
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抄録
【目的】中学校家庭科の衣生活学習では、ミシンを使用した授業を必ず行わなければならない。生徒はすでに小学校家庭科でミシンを学習しているが、その後家庭でミシンを使用する機会はほとんどなく、大半は使用方法を忘れている様子が見受けられる。また、あらかじめミシンの下糸や上糸の準備ができた状態であれば縫うことができるが、自分でミシンを出して準備するところまでが難しく、苦手意識を抱いている生徒が多い。そのため、ミシンを使用していく中で、生徒自身が使用しているミシンの特徴を捉え、上手く縫えない場合の対処法をつかむ必要があると考える。加えて、授業中に生徒がミシンの不調を感じても、人数が多ければ教師がその場だけでミシンの管理をしきれないという現状がある。以上のことから、ミシンの不調や上手く縫えなかった原因および対処法などを生徒自身で記録し、後で教師が確認できるようにすることが必要であると考える。
 そこで、ミシンの状態および問題発生時の対処方法などを、生徒自身が記録し管理する「ミシンのカルテ」を作成し、教材として取り入れることが有効ではないかと考えた。本研究は、生徒自身による毎時のカルテの記入が、生徒のミシン縫い技能の定着に与える効果について、検証を行うことを目的とする。
【方法】O町立O中学校第2学年22名を対象とし、単元「布を用いた物の製作」において、「ミシンのカルテ」を取り入れた授業開発を行った。「ミシンのカルテ」とは、生徒がミシンを使用した際に、使用年月日・担当者・上糸調子・縫い目の長さ・問題点およびその対処などを記入する用紙である。カルテの活用実践は、生徒が毎時間カルテに自分でミシンの状況を記入して授業終了時に提出し、教師はカルテを確認して次の授業のはじめに生徒に返却する、という方法で行った。
【結果】単元「布を用いた物の製作」(全11時間)は、第1次~第3次に分けて授業を行った。第1次「ミシンで縫えるようになろう(3時間)」は、本単元の導入であり、ミシン実習上の注意や基礎知識、下糸や上糸の準備の仕方など、ミシンの基本的な技能について学習し、白い布に書かれた線通りに直線や曲線を縫う練習を行った。第2次「リバーシブルランチバッグを作ろう(7時間)」では、教師が提示した作り方の手順を参照し、グループで積極的に助言し合い協力しながら製作を行った。最後に、第3次「実技テスト(1時間)」では、ミシンの準備から線に沿って縫うところまでを自分の力でできるかテストを行った。
 本単元の中で生徒は、授業の最初に割り当てられた一人一台の専用ミシンを使用し続け、毎時間「ミシンのカルテ」に書かれている管理項目を記入して提出した。教師はそれを授業後に確認し、気になる記入があった場合には生徒への聞き取りや、教師がミシンの点検を行った。毎時間「ミシンのカルテ」を記入することで、生徒自身が使用しているミシンの特徴を捉え、上手く縫えない場合に自分なりに対処している姿が、生徒の記録から読み取れた。このことから本単元において「ミシンのカルテ」を活用し、生徒自身でミシンを管理することが、生徒のミシン管理能力および問題が起こったときの対処方法など、ミシン縫い技能の定着に与える効果があるとわかった。また、授業中に生徒がミシンの不調を感じても、教師がついて見ることができない場合、生徒自身でその状況を記録し、後で教師が確認することができたため時間の短縮につながった。さらに、生徒が自分専用ミシンとして責任をもって使用するという意識も、もたせることができた。
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© 2018 日本家庭科教育学会
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