日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
Print ISSN : 0913-5227
ISSN-L : 0913-5227
報文
ヒエ (Panicum crus-galli L., var. frumentaceum HOOK. f.) 粉およびシルクフィブロインの添加が食パンの物性ならびに食味特性に及ぼす影響
伊藤 幸平尾 和子濱西 知子松永 直子高橋 節子
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 57 巻 2 号 p. 89-99

詳細
抄録

ヒエ粉ならびにヒエ粉置換による強力粉の性質および調理・加工特性を明らかにする目的で懸濁液の加熱時の粘度変化, 糊の物性を求め, 食パンへの利用を試み, ファリノグラフィーによる生地の混捏特性, 食パンの膨化倍率, 物性ならびに官能評価から検討した. さらにヒエ粉置換食パンの物性ならびに食味の向上を図る目的でシルクフィブロインを添加して検討した.
1) ヒエ粉を強力粉に置換することにより強力粉100%に比べ粘度上昇開始温度, 最高粘度, 冷却50℃の粘度は高くなり, ブレークダウンは大となった. ヒエ粉を置換した強力粉の糊はヒエ粉の置換量が増すに従い軟らかさを増し, ヒエ粉100%糊は, 強力粉糊の約1/3の硬さを示した.
2) ヒエ粉を強力粉に置換すると生地は軟らかく, 生地形成時間が長くなった.
3) ヒエ粉を10および20%置換した食パンは7~8%膨化が向上し, 全体の硬さは10%置換で対照の約80%, 20および30%置換で約60%と軟らかくなったが, しなやかさが減少し, こしのない食パンとなった.
4) 官能評価の嗜好において, 10%置換の食パンは強力粉100%と同様に好まれた. しかし, ヒエ粉20および30%置換ではきめの良さ, しっとり感がなくもろさがあると評価され, これらの項目で好まれなかった.
5) シルクフィブロインゲルをヒエ粉置換食パンに添加すると, 著しく膨化倍率が低下し, 添加効果は認められなかった.
6) シルクフィブロイン溶液を水と代替するとヒエ粉30%置換生地において生地形成時間が約2分間短縮された.
7) シルクフィブロイン溶液を用いて食パンを調製したところ, 強力粉100%およびヒエ粉置換食パンともに膨化が著しく向上した.
8) 官能評価からシルクフィブロイン溶液の添加により強力粉100%食パンではしっとり感があると評価され, またヒエ粉30%置換食パンはシルクフィブロイン溶液を添加することによりきめの均一性が得られ, 対照の強力粉100%と同等の嗜好を示した.

著者関連情報
© 2006 一般社団法人 日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top