日本家政学会誌
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最新号
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報文
  • 長野 隆男
    2024 年 75 巻 12 号 p. 593-601
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

     湿式グラインダー (WG) 処理おからとバクテリアセルロース (BC) が, 卵白ゲルの力学物性とそのゲルを形成する分子間力に与える効果について研究を行った. WG処理おからとBCの粘度は, 濃度の増加に伴って上昇し, シアシニング流動を示した. 同じ濃度において, BCの粘度はWG処理おからよりも高い結果であった. 加えるWG処理おからとBCの濃度を変えて卵白ゲルを作製し, 圧縮試験を行った. WG処理おからまたはBCの濃度が高くなるに従って, ゲルの破断応力, 破断歪, ヤング率は高くなり, 弾性パラメーターnは低下した. 同じ濃度において, WG処理おから卵白ゲルはBC卵白ゲルよりも, 破断応力と弾性パラメーターnが高い値であった. ゲルの形成に関与する分子間力の評価を, ゲルから4種類の溶液に溶出したタンパク質量を測定することにより行った. WG処理おからまたはBCの濃度が高くなるに従って, ゲルからジスルフィド (SS) 結合を切断する溶液に溶出したタンパク質量が増加した. SS結合の形成を阻害する2-メルカプトエタノールの濃度を高くするに従って, ゲルの破断応力と破断歪は低下し, WG処理おからとBCの添加効果は小さくなった. 以上の結果から, WG処理おからまたはBCを添加することにより卵白ゲルの物性が向上することが示された. その理由として, ゲルを形成しているSS結合が関係していると考えられた.

資料
  • 筒浦 さとみ, 河嵜 唯衣, 小島 唯, 山口 智子
    2024 年 75 巻 12 号 p. 602-614
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

     本研究は, 保育士及び幼稚園教諭養成のための学外実習において, 保育学生が保育所及び幼稚園で食事時間に行っている子どもへの支援の現状を示すことを目的とした. 平成26年10月~平成27年3月に保育学生72名並びに保育士及び幼稚園教諭29名を対象として, 保育所及び幼稚園の食事時間における子どもの食行動と保育学生の支援についての質問紙調査を実施し, KJ法のA型図解法を用いて, 質的に検討した. 保育学生が観察した0-5歳児の子どもの食行動には【食事の準備】, 【食環境の整備】, 【衛生】, 【食事内容】, 【水分摂取】, 【食への関心】, 【アレルギー児への対応】, 【生活リズムとの関係】, 【摂取量】, 【食べ方】, 【偏食】, 【食事に集中】, 【マナー】, 【空気嚥下】, 【片付け】, 【歯磨き】の大カテゴリー (16項目) が抽出された. これらの食行動に対して保育学生が実際に行った支援を抽出するとともに, 保育士・幼稚園教諭が実習中の保育学生に期待する支援と比較した. 保育学生の支援の具体的な内容として, 声掛け, 注意, 介助・補助, 観察, 見守りがみられ, 保育士・幼稚園教諭が保育学生に期待する支援にはさらに指導や他職種との連携等がみられた. 本研究により, 保育所及び幼稚園の食事時間における子どもの食行動に対する保育学生の支援の現状が明らかとなり, 見守りの姿勢やアレルギー児への対応等, 今後の保育学生への食教育に関する新たな課題が見出された.

  • 星野 亜由美, 岸田 恵津, 布谷 芽依, 相川 美和子
    2024 年 75 巻 12 号 p. 615-628
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

     骨量測定を取り入れた教科横断的な食育授業を行い, 1年後に追跡調査を実施した. 本研究はこれらの結果を基に, 中学生の骨量変化の特徴を明らかにすること, 食育授業の有効性を長期的な視点から評価すること, および2度の骨量測定を通じた生徒の気づきを明らかにすることを目的とした.

     食育授業と追跡調査に参加した71人を対象とした. 食育授業は, 2021年7月に2年次を対象に実施した. この際, 授業内で骨量測定 (超音波法) と食習慣・生活習慣に関する質問紙調査を行った. 追跡調査は, 2022年7月に3年次を対象に, 骨量測定と質問紙調査を実施した.

     骨量の指標であるOSIの平均値は, 男子2年次2.615, 3年次2.748, 女子2年次2.759, 3年次2.831であり, 1年間で増加傾向であった. 食習慣・生活習慣は, 3年次で運動部に所属する者の割合が低下し, カルシウムを多く含む食品の摂取頻度も概ね低下した. 「2度の骨量測定を通じ気づいたこと, 考えたこと」は約8割が記入し, 内容は測定結果への言及 (47人), 骨量に関わる食習慣・生活習慣の推定 (30人), 今後の生活の展望 (24人) であった.

     以上, 中学生期は骨量増加に重要な時期と考えられたが, 望ましい食習慣・生活習慣を営む者の割合は学年進行に伴い低下した. また, 2度の骨量測定は, 自身の成長段階を自覚するとともに, エビデンスに基づき生活習慣を考察し, 今後の生活を展望することに役立った. これらのことから, 継続的な食育が必要と考えられた.

シリーズ 研究の動向 83
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