本研究では, 母娘関係に焦点を当て, 女子高校生が苦しいと感じる母親の態度への対処方略と, ストレスや自己分化度との関係を明らかにした. まず女子高校生を対象に質問紙調査を行い, 苦しいと感じる母親の態度と対処方略について論じる事の出来る尺度を自己作成した. それらの尺度と自己分化度, ストレス反応についての尺度から母娘関係を分析し, 考察を行った. パス解析により, 母親に意思を伝達し, 直接母親と向き合う対処を取る女子高校生の自己分化度は高いことが確認された. また母親との間の葛藤に対して諦め・過剰反応の対処を取る女子高校生の自己分化度は低く, 不機嫌・怒り, 抑うつ・不安感情は高いことが示された. 母親に意思を伝え, 理解してもらおうと働きかける対処は, 適切な形で母親からの情緒的分離が果たされていると予測された. 一方, 母親との葛藤に対する過剰な反応や諦めの対処は, 母親に理解されたいと強く思うものの受容してもらえないという, 不安定でアンビバレントな母娘関係が示された. また本研究では, 母親に対する葛藤への対処と自己分化度の高低は, 女子高校生の社会的役割に関する自己効力感, すなわち将来の展望を抱くことにも関わることが示された. 葛藤と向き合い, 母親との関係性を見つめ直すことは, 女子高校生にとって自立に向かう重要な課題であることが示唆された.
本研究は住民の普段の生活の中で任意に行われる外出活動に着目し, 外出活動と居住継続意向との関連から地域コミュニティが活性化する要素を探るものである. 研究は地域コミュニティの維持に課題を抱える京都市A学区の住民を対象に無記名自記入式の質問紙調査を用い行った. J. ゲールの分類を参考に住民の外出活動を必要活動, 任意活動, 社会活動に分類し検討を行った. 居住環境評価について, 満足度評価は6因子, 重要度評価は8因子が析出された. 地域活動の参加度と居住環境に対する総合満足度は居住継続意向と有意に, また重要度評価の第4因子の住民活動は居住継続意向と有意な関係であった. 地域活動の参加度は外出活動頻度総数と, 外出種別では任意活動, 社会活動との間に有意な関係がみられた. 居住継続意向は任意活動頻度総数, 社会活動頻度総数との間に有意な関係がみられ, 居住継続意向と外出活動は関連があることが明らかとなった. 70代以上は外出活動頻度総数は顕著に減少し必要活動も減少するが, 任意活動と社会活動は年齢との関連はない. 社会活動の[知人と交流], [習い事], [地域の活動], [ボランティア活動]の活動頻度総数は相互に相関関係にあり, 任意活動の[庭の世話]は社会活動と相関がある. [知人と交流]と地域活動の参加度は有意な関係で, 個人的な付き合いが地域活動につながることが示唆された. また屋外環境に外出を躊躇する要素があると任意活動, 社会活動の活動頻度に影響する.
本研究が定義する高齢期の住居管理のうち, 本報は, 生活財の管理の実態と課題について明らかにすることを目的とする. 成熟した郊外住宅地を対象に質問紙調査を実施, 340の有効サンプルを得た. 調査対象者は本研究が主対象とする50歳以上が9割をしめる.
モノの保有や整理・処分への意識, 態度は「保有が多く念のため置いておく」タイプが6割を占める. 本タイプが半数を下回るのは回答者50歳未満の世帯のみ. モノの保有や収納に関して不都合を抱える世帯は, 年齢, 世帯状況によらず6割を超え, 死蔵品や散らかり, 地震での転倒の危険の問題を指摘している. 一方でさらなる高齢化に向けて, 衣類やアルバム・写真, 本など, 家の中に滞積しているモノの整理, 片付けの必要を認識している. ただし整理, 処分の進捗状況については, 「すでにやっている」「これからやる」「やりたいができそうにない」に三分される.
住宅維持管理や将来の住まいを考える居住の管理ができていない世帯ではモノの不都合の指摘が多く, 片付けも進んでいない. 「地域や学校のバザー」「買い取りサービス」など生活財管理に関する諸制度やサービスの利用への意識は, 50歳未満やプレシニアで高い.
維持管理が十分でない住まいに多くのモノを抱えて暮らす後期高齢者に対し, 子世帯への助力とは別に高齢期の住まいとその維持管理に加え, 生活財の整理に関して総合的に相談, 支援する地域のしくみが求められる.
ハマボウフウ露地栽培品と施設栽培品 (以下露地品および施設品) の違いを明らかにするため, 一般成分含量, ミネラル含量, 総ポリフェノール含量, 2つの抗酸化性, クロロゲン酸含量, ルチン含量, アントシアニン含量および香気成分の測定・分析を行った. 一般成分は, 施設品の灰分が露地品の2倍高い値を示した. ミネラルは, 露地品よりも施設品の方が高く, 特にK, CaおよびMgは施設品が露地品に対して2倍以上の値を示した. 総ポリフェノール含量および抗酸化性は露地品のつぼみが最も高い値を示した. クロロゲン酸含量は露地品のつぼみ, ルチン含量は露地品の葉が最も高い値を示した. アントシアニン含量は施設品の葉柄が最も高かった. 香気成分については, 露地品は複数のアルデヒド系の成分, 施設品は1成分を中心として構成されていた.