日本家政学会誌
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岩手県で行われていたしつけ道場の講義本における三三九度の儀式
髙橋 秀子
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2020 年 71 巻 10 号 p. 666-672

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抄録

 岩手県一関市千厩町奥玉地区では昭和40年代までしつけ道場が開催されていた. その際に用いられた講義本に記載されている三三九度の儀式について調査を行った. 講義本中に, 三三九度の儀式の床飾り, 三三九度の盃の注ぎ方, 三三九度盃の順序と3つに分けられ, それぞれ説明されていた. 座敷の床の間には, 掛図・嶋台・餅・半比・三五肴・男蝶と女蝶・盃を飾ることと, 三三九度の盃の注ぎ方には, 嫁添客, 酌をする男女児, 指揮者がそれぞれ座る位置と注ぐための歩き方が示されていた. 道場の講師の経験者への取材から, 半比とは1対の酒器で, 三三九度の儀式に用いられる重要な道具であることが判明した. その儀式の部分を打板と称し婚礼の中心となる儀式であった. 一関市千厩町奥玉地区ならではのものとして, 半比と打板の儀式であることがこの調査で明らかになった. 三三九度盃の順序は, 当時すでに講義本に記載されている内容より省略されたものになっていた. 道場は, 婚礼に関する儀式での道具類の扱い方や進行の段取りを学び, 他の地域にはない特色ある伝統文化を理解し, 人と家を大事にする考え方を体得する場であった.

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© 2020 一般社団法人 日本家政学会
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