2020 年 71 巻 11 号 p. 695-702
本稿では, 保育実践の場における保育者の感覚や身体を伴う子どものわかり方を明らかにする目的の一端として, 子どもの状態を子どもとの間での出来事として中動態的に語る保育者の子どものわかり方と子どもの身体の動きに連動する保育者の身体の関係を考察した. 木村敏の『あいだと生命』と山崎正和の『リズムの哲学ノート』を通して, 中動態と身体の関係および身体ならではの特性を検討した結果, 中動態的な感覚が生じている時には, 身体は感じる対象と一体になっていて, 身体には, 外界と一体になるという特性があることが明らかになった. それを踏まえると, 保育者が子どもの状態を中動態的に語ることとは, 保育者が五感で感じられるその子どもの状態と一体になっている間身体的な器官としての自分の身体を感じたことを語っているのであり, それを感じられるようになることが子どもと通じ合えるようになってきたという状況であることが明らかになった.