家政学雑誌
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食品のレオロジーに関する研究 (第1報)
寒天調理について
加藤 寿美子
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1960 年 11 巻 6 号 p. 443-449

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抄録

(1) 寒天の加熱時間は、与えられた寒天濃度の粘弾性を保つためにはできるだけ短い方がよい。
(2) 寒天ゼリーの調理範囲の濃度は粉末寒天においては、粘度、強度、針入度の測定により0.4~0.7%が適当と認められた。
(3) 砂糖濃度が寒天溶液に与える影響は、濃度20%をmax.としてゼリーの粘弾性は濃度と共に低下し口ざわりが良好となる。
(4) 寒天溶液は歪力に対し流動が比例的でなく若干の弾性又は塑性を有する非ニュートン流体であって、調理操作中の流動性の変化については、寒天加熱の際に攪拌回数を少くして液が焦げつかぬ程度の最小限の歪力のみを与えて、溶液の粘性低下並びにゼリーの粘弾性の弱小化を防ぐことが必要である。
(5) 練羊羮は餡の濃度が高く濃厚な澱粉溶液となりその挙動はきわめて複雑で、弾性率・粘性率・緩和時間等の函数として示されるものであろうが、この方面の研究が更に必要である。
(6) 寒天溶液の粘度と濃度の関係は
η=η0enc
粘度と温度の関係は
η=bea/T
で与えられ、粘度とゼリーの粘弾性はおおむね比例するが、砂糖濃度変化の場合においてはこの関係は20%以上ではみられなかった。
(7) 寒天ゼリーは歪の回復する時間が荷重時間の長短により影響を受け遅れる事から、フオークト模型によって示される粘弾性体であると考えられるが、この点についても今後更に詳細に実験を行う予定である。
(8) 寒天調理においては従来感覚に基づく心理的判断による場合が多いが、寒天溶液、ゼリーの諸性質及び種々な条件による変化等の解明のためには、その物理的挙動の中で特に溶液の粘性、ゼリーの粘弾性、ゼリーの荷重に対する変形等を測定することがきわめて有効であると認められた。

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