家政学雑誌
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家事作業の研究 (第1報)
電機洗濯機について
得田 幹枝
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1961 年 12 巻 3 号 p. 272-276

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抄録
家庭の仕事で一番骨の折れるものの一つとされている洗濯も電気洗濯機の出現によってかなり事情が変って来た。電気洗濯機は特に最近急速に普及し、本調査による川村短大学生181名のうち157名(86.7%)の家庭は(昭和34年4月末調)これを使用している。使用しはじめた時期、使用している洗濯機の種類は異っているが、如何なる種類のものでもこれを使用することによって時間と労力の軽減になっていることは、洗濯が大変楽になったと感じている人が多いことによってもわかる。因みに1週間使用した同質同型のシーツ2枚(1枚の重量560g)を実験的に洗濯してみると、手で立洗いの場合は洗いはじめて濯ぎ終り、搾ってしまうまでに、30分間を要した。これと同じものをS.S式自動反転電気洗濯機を用いてした時には水道の栓を開き、洗剤を入れ、しぼる等人手を要する時間が7分であった。これによれば時間では23分、概算したエネルギー消費では50Cal位の相違があって多くの人が電気洗濯機を使うことによって洗濯が大変楽になったと感じているのもこのような事実に裏付けられているのである。ところでこの電気洗濯機をめぐって考慮に上ることは、第1に電気洗濯機そのものの性能の問題であり、第2は使用の方法の問題第3には使用によって浮かんで来た時間の利用の問題である。
第1の問題については、かなり多くの入が不満の点を指摘しているが、それらは機械の改良によって漸次解決され始めていると思われる。また電気洗濯機の普及に関係ある事項として水の問題があるが、揚水ポンプの使用が水道のない地域への普及を相当助けていることが調査の結果から推定されるように思う。
第2にに電気洗濯機の使用方法の問題であるが、家族の状態によって洗濯物が特に多いとか、あるいは洗濯物をまとめて1-2日おきに洗っている場合などに、洗濯機の使用が1日に2回以上になることがある。かかる場合に第1回の洗いを終って、次回のものを洗濯機に入れて洗っている間に、前のものを手ですすぐ人がある。洗濯を早く終えようとの考えからであることはよくわかるが、こうしたことをしている人の多くは事実洗濯機を使って、少しは楽になった、殆んど変らないと感じているのである。即ち洗濯機の利用による労力と時間節約の効果が半減していることがわかるのであって、可能な限り洗濯機の利用度を高め、それによって浮ぶ時間を他に有効に利用する方が賢明の策であろうと思われる。
ハンカチ、靴下、たび等の小ものの1つ2つを手で洗うこと位は止むを得ないであろうし、また特に不得策というわけでもないであろうが、洗濯機利用上工夫を要する点があり、工夫の如何により利用効率のちがって来る場合のあることを注意しておくべきである。
次に第3の問題であるが、本調査では浮んだ時間を休養にあてている人が最も多いような結果が出て来た。ここの結果をそのまま真実ととるべきか否かは若干問題がないでもないが、何れにしても従来多くの主婦は家事作業負担の重いことを嘆いていた傾向があり、より多くの休息を求めていたことは事実で、その欲求がいくらかでもみたされたとすれば、それは喜ぶべきことであろう。と同時に浮んだ時間を読書にあてるという人が15.2%もあって、これは積極的な利用の事例と考えてよいであろう。反面雑談の時間が増したとする人も僅かあり、また浮んだ時間を雑用にあてるという人も稀にある。こうした簡単な答だけを聞いて批判することは当を得ないであろうが、何れにしても家事作業負担が時間的にも労力的にも軽減するということは、婦人の生活の向上を約束する一つの条件なのであるから、たとえ浮んで来る時間が僅かではあっても、その有効な利用について真面目に考慮しなくてはならぬと思われる。
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