抄録
以上の実験から、茶わん蒸し・卵豆腐もまたプディングと同様に、温度の影響を受けて、その性状は著しく相違を生ずることがわかる。全卵20%の濃度を持つ茶わん蒸しを、じょうずに作るためには、温度を凝固点以上にしないようにすることが望ましく、その温度に至るに要する時間を、実用範囲内でなるべく長くすることが必要である。そのためには蒸板直上付近温度を90℃に保つように、火力を調節し、15分間加熱すればよい。またこれより濃度の高い卵豆腐の場合は、加熱時間は短くてよいが、堅さを増し、分離液量は減少する。その濃度が40~50%ともなれば、器から取り出して切ったり盛ったりすることが可能である.以上の実験から、どの場合でも卵液ゲルは、加熱によって堅くなると分離液は増し、冷却によって堅くなると分離液は減少する。すなわち過熱はゲルをcardlingさせてsyneresisを起こす傾向があり、冷却はゲルを安定にするから、冷やし茶わん蒸しは、食形態としては有利である。また味覚テストの結果、製品の堅さを表わす重量が11g以下が好まれることに鑑み、冷やし茶わん蒸しの場合、普通の茶わん蒸しより、卵の濃度を小さくする方がおいしいわけである。