家政学雑誌
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本邦各地産銘茶の浸出液のL-アスコルビン酸含有量
緑茶のL-アスコルビン酸について (第1報)
泉 敬子
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1966 年 17 巻 6 号 p. 327-330

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抄録

緑茶には多量のビタミンCが含まれている事はかなり以前に報告されている。即ち2924年及び1933年三浦・辻村両氏は動物試験を行い又星野氏はインドフェノール法によりビタミンCの量を測定し報告している。
今回は本邦各地の銘茶と云われるものについてL-アスコルビン酸含有量の検討を行った。
L-アスコルビン酸の測定方法はインドフェノール法ヒドラジン法、酵素法等が知られているが慶松・山口域星野氏軌藤田氏・郷氏。後藤氏等は茶の中のビタミンC以外の還元物質の妨害について種々検討している。
本実験に於てはインドフェノール法を採用したが、従来のインドフェノール法ではタンニン物質等が還元型Cの価に含まれて表われると考えられるので今回は酢酸エチルでタンニン物質を除去した後インドフェノール法を行い還元型Cの含量を測定した。尚ヒドラジン法も同時に行い比較検討した。
以下実験について報告する。
1) 5月中の各地の平均気温は15.5℃、17℃、17.5℃、19.9℃、降雨量は294mm、168mm、155.2mm、148.5mmとなっているが実験結果では最も平均気温が高く (19.9℃) 降雨量の多い (294mm) 静岡産の川根茶の浸出液が他の各地産の茶葉の浸出液に比しかなりL-アスコルビン酸量が多く、又除タンニンしたものの割合も96%と最高値を示した。
2) L-アスコルビン酸の多いものは比較的タンニン物質が少い。即ち川根・八女・福住・朝宮・徳山・原山の各茶の浸出液はL-アスコルビン酸含有量の多い順に除タンニンしたものの割合も多かった。
3) 上記6種の緑茶の浸出液には第7表及び第2表から推察出来る様にL-アスコルビン酸量が市販のものの浸出液に比しかなり多く、又タンニン物質が少く、殊に川根・福住・八女の茶は浸出液に殆ど苦味を感じられない風味のよいものであった。何れも各産地の銘茶たるにふさわしい品質であると思われた。
4) 銘茶各産地の地質・気候の特徴は第6表から推察できる様に何れも茶樹の栽培に適するがそれぞれによるL-アスコルビン酸の含有量の差異は実験例も少く明らかにされなかった。
5) 緑茶浸出液のビタミンCの測定は今回の実験結果ではインドフェノール法もヒドラジン法も大差はなく、酢酸エチルで除タンニンしたものは、しないものの平均93%の価を示したが、今後酵素法をも併せ検討したいと思っている。

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