家政学雑誌
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貯蔵細胞の水煮による影響について
豆類の食品組織学的研究 (第1報)
松本 ヱミ子市川 収星野 忠彦
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1966 年 17 巻 6 号 p. 331-336

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抄録

豆類の調理に関する研究は種々報告されているが、食品組織学的立場からの研究は少ない。豆類の調理、加工、保蔵などについて食品組織学的に基礎的知見を得る目的で、豆類について物理・化学的には湿度・圧力・pH・酸・アルカリ・塩類・酵素など、生物学的には微生物調理学的には調味料・油などによる諸条件下のモデル実験を行い、その影響を組織化学的に調べて遂次報告してゆきたい。今回は数種の市販豆類の貯蔵細胞が水煮によっていかなる影響を受けるか組織化学的に検索したので報告する。
市販豆八種の貯蔵細胞の正常構造と組織化学的検索を行い、これらの豆の水煮による構造変化および組織化学的変化を調べた結果を要約すると次のとおりである。
1. 核水煮による豆の核の形態変化はあまり明らかでないが、核のDNAは減少し、低重合化する。
2. 細胞質および蛋白粒水煮により豆の蛋白粒はいずれも膨化し、蛋白粒の大きいだいずのみ粒形を残し、他の豆では融合して粒形を失い細胞質との区別が明らかでないが糖蛋白がやや減少する。
3. 澱粉粒水煮により豆の澱粉粒は膨化・変形するが、澱粉粒の小さいだいずでは数個が融合し、澱粉粒の大きい豆では細胞内を満す。
唾液消化により生豆の澱粉粒はミセル構造にしたがって消失するが、水煮豆の澱粉粒はやや均質に澱粉を減少して消失する。
4. 細胞膜水煮により豆の細胞膜は膨潤し、細胞間に隙を生じ、蛋白質および多糖類の流出物がある。
水溶媒下における加熱の影響による各種豆の細胞の示す所見は、調理における水煮の問題を解く上にいくつかの知見を補い得たものと思われる。

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