抄録
福岡県全域よりえらんだ中堅農家について, 昭和34年12月と, その12年後にあたる昭和46年12月の2回にわたる調査を行ない46戸より有効回答を得た.
調査農家の経営規模, 家族構成等については, 昭和30年代半ばから現在に至るわが国の農業, 経済等の全国的な変遷の傾向がここでもみられたが, これらを背景として, 農家食生活の様相がどのように変ったかを, 自給食品および自家加工貯蔵食品の利用度について考察した.
以前は, 米麦飯を主食とした農家も, 現在では殆んど白米飯にかわった.
また, しょうゆ, 食用油等は今日では殆んど自家製造されていない.
しかし, 調査農家の約80%が今日でもなお味噌を自家製造している.時代の変遷につれて, その自家製造の様相に変化はみられたが, その利用状況も12年前とあまりかわってはいない.
また, 漬物類も, 相当多くの農家が多種類にわたり自家製造し, 利用している.そして, これらの自家用の味噌や漬物を置くために従来からこの地方で「味噌部屋」とよばれる特定の場所があるが, 今日でもなおこれを必要と考えている農家が大多数である.
以上の調査結果より, 農家食生活にとって, 自家生産物および自家製造食品はなお, 相当重要な部分を占めていると思われた.