家政学雑誌
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鰹節とそのだし汁の揮発性カルボニル化合物について
加熱による食品の香味, 色, テクスチャーの変化に関する研究 (第6報)
本間 伸夫塩崎 啓子渋谷 歌子石原 和夫
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1975 年 26 巻 4 号 p. 263-270

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抄録
鰹節だし汁の香気成分として重要な役割を果している揮発性カルボニル化合物を通気法によって 2, 4-ジニトロフェニルヒドラゾンとして分離し, 薄層クロマトグラフィー, ガスクロマトグラフィー, 紫外部および赤外線吸収スペクトル法により分析した.
その結果 2, 4-ジニトロフェニルヒドラゾンとして鰹節 100g につき, 未加熱で 451.4μg, 加熱 (沸騰水浴中20分, 開放状態) 563.4μg を得た. この量は同一条件で測定した煮干しに較べて著しく微量であった. 構成化合物の種類と割合の加熱による変化は著しくなかったが, アセトアルデヒドおよび枝わかれアルデヒドがかなり増加が認められ, アミノ酸の Strecker 分解がおきていることを示している.また主要化合物群であるジカルボニル, とくに 2, 3-ジケトンが加熱によりかなり減少した.
鰹節およびそのだし汁に含まれる揮発性カルボニルは2-オキソアルデヒド類 (C数2~4) 2, 3-ジケトン類 (C数4~6, 8) のジカルボニル類が約1/2, 次いで脂肪族n-アルデヒドが1/4を占めていることを認めた.その他芳香族ケトンがかなりの量を, 脂肪族枝わかれアルデヒド, 2-ケトン, フランカルボニル, 芳香族アルデヒドなどが微量ずつ存在することが認められた.これらのうち, グリオキザール, 2-オキソプロパナール, 2-オキソブタナール, 2, 3-ペンタンジオン, 2, 3-ヘキサンジオン, フルフラール, メチル-n-プロピルケトン, n-バレルアルデヒド, アセトフェノンは鰹節にはじめてその存在を認めたものである. さらに芳香族ケトンと推定される化合物3種の存在も認められた.
鰹節からだし汁をとる場合, 比較的長い時間加熱すると煮干しの場合とは逆に好ましくない香気となるという事実はアセトアルデヒドや枝わかれアルデヒド類の増加, ジカルボニル類の減少等による構成割合の変化が一因となっているものと考えられる.
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