抄録
1) ヤブツバキ (I), サザンカ (II) の各若葉 (新梢上部, 下部各3葉) および越年葉 (古梢上部3葉) について, そのビタミンC含有量の季節変動ならびに樹葉の伸展成長の比較的旺盛な時期におけるアスコルビン酸オキシダーゼ活性を2, 4-Dinitrophenylhydrazine法により測定した.
2) IおよびIIの若葉上部の還元型 C (RAA), 総 C (TAA) 含有量および還元型 C 相対量 (RAA/TAA) の季節変動の範囲は著しく大きく (RAA : I 0~127 II 42~177mg%, TAA : I 29~211 II 88~274mg %, RAA /TAA : I 0~87 II 31~86%), 変動の傾向としては, Iでは盛夏に, IIでは初夏の成育の初期段階にそれぞれ最も低く, 以後は漸増して冬期および新芽の萠出前の時期に最も高くなった. 酸化型C (DAA) の変動範囲は比較的小さく (DAA : I 8~84 II 21~107 mg%), 変動傾向は把握し難いが, いずれも萌芽前の時期に増大し, IIでは加えて初夏に多かった. 下部葉のC含有量の変動範囲および変動傾向は上部葉と同様であった.
3) 年間を通じて, Iおよび II の若葉の上部および下部間の平均の RAA および TAA 含有量には有意差は認められなかった. また初夏のIの若葉 (開葉数6) では, C含有量は中部葉に多く, 第1葉では RAA 含有量が顕著に少なく, DAA 含有量が多かった. また茎は第1葉を除く他の開葉に比べて著しく少なかった.
4) IおよびIIの越年葉では, 初夏または盛夏に, 若葉に比べてC含有量が大で, RAA/TAA値も比較的高かった. しかし向寒時には, 樹葉の活力の衰退に伴うC含有量の低下の傾向がうかがわれた.
5) Iの若葉では, 初夏に比べ盛夏にそのアスコルビン酸オキシダーゼ活性が著しく高かった.Iの越年葉でも同様の傾向がみられたが, 活性度は, いずれの時期においても, 若葉より低かった. IIの若葉では, 初夏の成育初期に活性度が比較的高く, 盛夏には若干低下した.またIIの越年葉の活性度は, Iの越年葉のそれと同様に若葉より低かった. Iのオキシダーゼ活性は, 総体的にIIの活性より高かった.