家政学雑誌
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魚の調理に関する研究
アジ肉の加熱による変化
下村 道子島田 邦子鈴木 多香枝
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1976 年 27 巻 7 号 p. 484-488

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抄録
魚肉 (マアジ肉) を純水, 2%食塩水その他の溶液中で30℃から100℃の間, 10度間隔の温度で加熱した場合の魚肉の変化を調べた.結果は次のようである.
1) 加熱溶液へのたんぱく質の溶出は, 40℃から50℃にかけて増加し, 50℃から60℃では, あまり変らないか, また減少する場合も見られ, 60℃から70℃では再び増加がみられた 食塩水やしょうゆ水では, たんぽく質の溶出率が高くなり, 清酒を加えると, やや抑えられる傾向がみられた.
2) 加熱溶液が水の場合, そのアミノ酸分析においてエキス分に含まれているアミノ酸とともに, 90℃で加熱した場合にはゼラチンに由来すると思われるアミノ酸が多く含まれていた.
3) 加熱した魚肉の硬さは, 40℃から50℃にかけて著しく減少し, 50℃付近で最低となり, 60℃より100℃まで漸次増加した.調味料の影響はあまりみられなかった.
4) 魚肉の凍結切片を水, 食塩水, 酒水および魚類用塩類溶液に入れ, 加熱し顕微鏡で観察したところ, 水では40~50℃で筋せんいの収縮が始まり, 70℃までさらに凝集がすすむのがみられた. 60℃をすぎると結締組織の溶解がみられた 食塩水に切片を入れると, 筋せんいは溶解したように拡がり, 加熱による変化はあまりみられなかった. 酒水では, 加熱しなくても筋せんいの収縮がみられ, 低湿でも変性が起こると思われた. 魚類用塩類溶液では, 食塩水に似た変化がみられた.
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© 社団法人日本家政学会
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