抄録
各種飲料が食事の味に及ぼす影響をみるために, 主として飲料を飲む前後に同様のテストを行い, その間の差異を検討した.また飲料が次に摂取する味に及ぼす影響を模式的に捉えることを試み次の結果を得た.
1) 各種飲料を飲む前後に五味識別テストを行い, 両成績を比較したが有意な差は認められなかった.
2) 飲料が甘, 鹹, 酸, 旨の各味に及ぼす影響については, いずれの飲料のあとにおいても旨味が弱められる傾向がみられた.
3) 飲料を飲む前後に清汁0.8%塩分濃度に相当する0.5%塩化ナトリウム溶液を味わい, その鹹味強度の差を検討したが有意な差は認められなかった.
4) 5℃, 20℃の10%ショ溶液を用い, 飲料の温度の影響をみたところ, 5℃のものは20℃のものにくらべ, 後にくる味に及ぼす影響は小さかった.
5) 各飲料の味のパターンが次にくる食物中の味に及ぼす影響を模式的に捉えることを試み, 飲料の各味の刺激強度と, その後にくる各味の強まり方, あるいは弱まり方の関係を検討したところ, 両者の間には高い負の類似率が認められた.
今回の実験では, 試料として液体のみを用い化学的な味について検討したことに止まったが, 実際の料理は化学的な味のほかに必ず物理的な味が伴うものであることを考慮に入れる必要があり, 今後さらに検討したい.